温故知新 猿屋の山チャリズム《ハードテイル》編 Part.7

過去を振り返ることで見えてくる現代の、そして未来のMTB像が見えてくる。今回は小柄な女性に適したモデルをテーマに取り上げつつ、MTB本来の楽しさについてノリさんからお話をうかがいました。

今泉紀夫
ワークショップモンキー店主。MTB 誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。
http://www.monkey-magic.com/

今回は「ハードテイルじゃダメなのか?」という特集が組まれているとのことで、その辺りの話を少しだけ。

うちの息子たちの頃から子ども向けのクロカンレース的なものはあって、またがれさえすれば(体格に対して大きな)26インチのバイクに無理やり乗せてしまう親御さんをよく見かけました。

高級ブランドのバイクにステムで無理やりポジション出したりして。当時はコースも簡単だったので、車輪が大きければそれだけで勝ててしまいます。

勝負に勝つことはわかりやすくて、親御さんも子どもに「勝て!」と叱咤を飛ばし、負けん気の強い子はそれに応えようと頑張る。今はコースも難しくなってきて、バイクコントロールが重視されるようになりました。

親がMTBに乗ってきた世代に移ったこともあり、状況が変わってきたようです。逆にバイクパークが増えたことで、サーキット中心の走り方にも変わり、フルサスに乗るようなお子さんも増えてきているとか。親御さんの中には塾通いをさせるような感覚の人もいるようです。

話は変わりますが、日本は自転車文化がほかのスポーツと比べて育ちにくい環境にあります。漫画の影響もあってロードバイクに乗る人が増えましたが、走る環境のある人はともかく、都内でロードバイクと言うのもちょっと無理があるような。

道具があっても文化がない。そうなると「いいもの(高額なもの)を買えばいい」「フルサスを買っておけば安心」と言う流れになりがちです。自転車屋さんの商売的にも。

大人についても同じこと。電動アシストのように体力を補ってくれる便利な道具を否定するつもりはありませんが「とっ散らかったときになんとかなるから安全のためにフルサスを」という考え方はどうかと。

基本ができていないからとっ散らかるわけで「ジャンプでもフルサスの方が安全」は違う気がします。極論「僕は跳べない男だ」と理解してもらうことも悪くなくて「やらない方がいい」と気づくのもいい。「何がなんでも安全に跳べた方がいい」ということはありません。

「お客さんの安全を考えてフルサスを勧める」ではなく、まず自分の力量を知るためにハードテイルという選択肢があっていいと思うんです。

気持ちがある人に対して、サポートしてくれる道具としてフルサスを勧めることを悪いとは思いません。でも「ゲシったときにサスで誤魔化せるから」は逆に危険。本来、安全率を考えたらフロントサスがあれば十分なわけで。

ハードテイルは「プアだから」的な言い方もされますが、その物足りなさや歯痒さがMTB本来の楽しさだったりもします。悔しくても自分の限界は自ずとわかるもの。そこを誤魔化して速度だけを上げてしまうのはかえって危険です。

そもそも自転車は100パーセント安全な乗りものではないし、安全を最優先するのであればゲームをやっていればいい。怪我もしませんから。

程度の問題はあるかもしれませんが、技術不足の辻褄合わせでフルサスを選ぼうとしているのであれば、選択肢としてもう一度、ハードテイルについて考えてみてはいかがでしょう?

 

MONKEY 98ST7
モンキー 98ST7

トレイル仕様からダートジャンプ用にセッティングを変更された前27.5インチ&後ろ26インチのモンキー。

 

写真:村瀬達矢 文:トライジェット

『MTB日和』vol.57(2024年10月発売)より抜粋

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