ふたり乗りを前提に設計されたタンデム自転車の公道走行は、これまで各自治体によってその可否が異なっていましたが、一昨年前の東京パラリンピック開催の後押しもあってか、近年は各道府県において解禁への機運が一気に高まりました。
2020年に北海道での公道走行が認められて以降、その流れはさらに加速。今年の4月には神奈川県でもタンデム自転車の公道走行が解禁され、東京都を残すのみとなりました。
その東京都でも5月19日、小池百合子知事が都内におけるタンデム自転車の解禁について言及。東京都道路交通規則の改正によって、2023年7月1日から公道での走行が全面的に解禁されたのです。これをもって、1978年に初めて長野県で認められたタンデム自転車の公道走行が、全国47都道府県で認められることとなりました。
東京都でタンデム自転車の公道走行が解禁される7月1日には、東京都庁第二本庁舎2階車寄せにて、東京都内タンデム自転車公道走行解禁記念セレモニーが開催。
セレモニーを主催する一般財団法人日本自転車普及協会の関係者ほか多くのタンデム自転車愛好家が集まり、都庁前の道路を記念走行しました。セレモニーで挨拶をする日本自転車普及協会の小泉昭男会長、東京都議会の白戸太朗議員からは、タンデム自転車に乗る楽しさや可能性、一般の自転車とは異なるタンデム自転車ならではの課題についても伝えられました。
タンデム自転車に乗ったことのある人であれば、その楽しさと扱う難しさはご存知のことでしょう。実は弊誌「自転車日和」でも2016年、タンデム自転車でサイクリングに出かける企画を掲載したことがあります。
ちなみに2016年の時点でタンデム自転車での公道走行が認められていたのはまだ13府県のみでした。タンデム自転車最大の魅力は乗車するふたりが会話のできる(声の届く)距離にいること。一緒に眺める風景やその日のサイクリングの予定など、会話を交わしながら走るサイクリングの楽しさは格別です。ふたりが呼吸を合わせることで初めてスムーズに走れる操作の難しさすら、タンデム自転車の魅力と言えるでしょう。
タンデム自転車に限った話ではありませんが、自転車が公道を走行できる乗りものである以上、扱う人が道徳心や自制心を欠くような運転をすれば、大きな事故を招く可能性は十分にあります。
車体が長く、お世辞にも扱いやすい自転車とは言えないタンデム自転車ですから、一般の自転車を扱う以上に注意深く、慎重に扱う必要はあるでしょう。ただ、ひとつだけご理解頂きたいのは、決して〈タンデム車が危ない〉ではないということ。危険であるか否かはあくまで乗り手の問題です。
もしも「操作が難しい」「怖い」と感じたなら、交通量の多い公道で乗り出す前に、人通りの少ない安全な場所で練習することをおすすめします。機会があれば是非、タンデム自転車ならではの楽しさを体感してみて下さい。サイクリングの可能性が広がること間違いありません!
むしろ課題は保管場所やクルマへの積載……辺りですね。
タンデム自転車で走るための基礎知識とルール
『自転車日和』vol.42より抜粋