さまざまな自転車誌を発行している『自転車日和』編集部ですが、弊社には自転車とは全然違う編集部に在籍していながら、編集部員以上に(!?)、自転車生活にどっぷりのスーパー社員がおりました!
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写真と文:星野哲哉 イラスト:小泉智稔
日本一のヒルクライム 独自の攻略法を伝授⁉
前号のプロフィール欄に記したとおり、今年も乗鞍ヒルクライムに参加してきた。自転車で行くことができる、日本最高地点まで駆け上がるヒルクライムレースだ。そんな場所に日本中から猛者が集まってくる。ヒルクライム日本一決定戦と言える大会を、今回はゆる〜くレポートしようと思う。
乗鞍ヒルクライム2023に行ってきました
8月27日に行われた、長野県乗鞍高原を走るヒルクライムレース。乗鞍観光センターをスタートし、長野・岐阜県境まで、全長20.5km、標高差1,260mを駆け上がる。
ゴール地点の標高が、国内舗装道路最高点の2,720mというのが特徴だ。1時間を切ってゴールするようなトップクラスの選手で競うチャンピオンクラスをはじめ、8つの年代別カテゴリと女子クラスとジュニアクラス、合計3000人以上が駆け上がった。
コロナ禍の影響で前日受付をなくした大会もある中、乗鞍は前日受付が必須だ。そのため、前日の受付時間内に会場に行く必要がある。しかも、会場への道は一本道で渋滞しやすいので、時間に余裕を持って行った方が良い。
また受付会場には、物販などのテントがあり、欲しかったものがお得な値段で売っていたり、新たな商品に出会えたりする。その点でも、なるべく早く行った方が良い。
参加者特典として、会場近くの入浴施設の割引券がある。それを利用して風呂に入った。ヒルクライムレースで風呂に入るたびに思うのが、「みんな身体薄すぎ」。細いんじゃなくて薄い。
特に若い子なんて、内臓入っているのか!?ってぐらい薄い。そしてここは乗鞍。日本一の場所。他の大会以上に、そんな人だらけ。少しゆるんだ身体の方を見ると、ほっとしてしまう(笑)。
風呂に入って夕食を食べたら、あとは寝るだけ。今回の寝床はクルマの中。前日受付で前泊必須にもかかわらず、ここ乗鞍は、大会参加人数に対して、宿泊所の数が足りない。そのため、車中泊をする人が少なくない。私もここ最近は、車中泊で大会に臨んでいる。
では、車中泊以外はどうするのか。山を下りた先、松本周辺のビジネスホテルで宿泊する。そんな人たちがやってくるクルマの音が、まだ夜が明けない午前4時ごろに大きくなる。松本からだとクルマで一時間以上かかる。ということは、2時ごろには起きているということ。それが嫌で、車中泊を選んでいるということもある。
朝起きてコンタクトをはめるために会場のトイレへ行くと、早くも列が出来ていた。この先スタートが近づくにつれ、さらに列が長くなるのは、ヒルクライムレースあるあるだ。
スタートは、グループごとに時刻が決められている。最初がチャンピオンクラスで、あとは年代別のカテゴリでグループが分けられている。大会によっては、グループ分けが事前の申告タイム順のところもある。
両者の違いは、周囲とのスピード差だ。申告タイム順の場合、スピード差はそれほどないが、カテゴリ別の場合、スピードがばらばらの人たちが周りにたくさんいる。
私なんかは遅い方の部類なので、スタート直後に多くの人にあっという間に抜かれ、しばらくすると、後続グループの速い集団にものすごい速さで抜かれる。個人的には、タイム順のスタートの方が走りやすい気がする。
コースは、序盤は緩斜面で第2CPからきつくなると、一般的に言われているが、正直言って、序盤から十分きつい。それどころか、スタート直後の坂からきつい。
確かに最初の坂を抜けると、しばらく急な坂はない。しかし、ここで周りに影響されて飛ばしてしまうと、最後まで持たないことがある。そのため今回は、なるべく序盤に飛ばさないようにした。そのおかげか、最後まで力を出せたような気がする。ゴールしたら、今度は下山だ。
スタート会場まで、登ってきた道を下りる。正直言って、私は下りが苦手だ。スピードが出ると、怖くなってしまう。急坂の急カーブは特に怖い。だから、なるべく慎重に下っていく。
今回の下山時に、血だらけになって倒れている人がいた。下山中に転んだのだろう。何人かに介抱されていたが、ここまで救急車が来るのはとても時間がかかる。あの方は大丈夫だったのだろうか。
レースの結果よりも大切なものとは?
このようなレースイベントがあったら、本番のレースで好結果を出すために準備するのが普通だろう。しかし自分の場合、どうやら力を入れている点がちょっと違うらしい。
段取りというものに、重きを置いていることに気がついた。今回の一番のポイントは、車中泊。家からクルマで行くのは疲れるので、松本駅まで輪行することがマストだ。そうすると、松本駅でレンタカーを借りる必要がある。しかも車中泊しやすいクルマを。
そこで選んだのは、ボックスタイプの軽自動車。大会にエントリーした直後に、予約をした。
次は、車中泊するための道具。寝るために、下に敷くものと上に掛けるものが必要だ。だが輪行するので、あまり多くの荷物は持てない。そこで選んだのが、エアーマットとエマージェンシーシート。
空気を入れるとマットになるエアーマットは、空気を抜くとコンパクトになるのでかさばらない。またエマージェンシーシートは、100均で調達した。一度広げるとたたみづらいのが難点だが、値段の割に十分に防寒を果たしてくれた。
レースタイムはいまいち(2時間オーバー)だったが、このように段取りがうまくいったので、自分の中で今回の大会は大満足。何事も準備が大切です(笑)。
星野哲哉
同じ社内の別の編集部に所属する、50 歳オーバーの自転車好き。久しぶりに、ジャパンカップとさいたまクリテリウムを見に行き、目の前を走る世界のトップライダーに興奮してしまいました。アラフィリップ、サガン、フルーム、ポガチャル、などなど。テレビでは伝わらないオーラのようなものを感じましたね。一方で、新城幸也に続きそうな日本人がいないのが寂しくもあり…
『自転車日和』vol.64(2023年11月発売)より抜粋