「のんびり」「ゆっくり」走るイメージの強い小径車ですが、ロードバイクのように走りを重視した「小径ロード」もあります。本特集では、ドロップハンドルを装備した「走り系」の小径ロードを8台ピックアップし、その走りを検証します。
小径車だって速く走れる!走りを追求した小径ロード
小径車というと、ポタリングやゆるめのサイクリングなど「のんびり」「ゆっくり」走るイメージが強いかもしれません。しかし、走りを追求したガチ系の小径車もあるのです。その名も「小径ロード」。
ロードバイク同様、ドロップハンドルにロードバイク用コンポーネントを搭載し、フラッグシップモデルでは最新のロードバイク用コンポーネントを搭載するモデルもあったりします。
車輪が小さい以外はほぼロードバイクなので、ロングライドもヒルクライムも余裕で楽しめます。中には小径ロードでエンデューロレースに参加して入賞する猛者もいたりします。
小径ロードは、ロードバイクではハードルが高いと感じている人や、小径車でロードバイクに勝ちたいというマニアまで、さまざまなユーザーに選ばれています。この特集では、最新の小径ロード8台を乗り比べ、走りや乗り味を検証します。
小径ロード8台インプレッション
今回ピックアップした8台の小径ロードについて、メーカー担当者に「推しポイント」をうかがいました。それぞれ、自社製品という視点からの思い入れのあるコメント。インプレッションと合わせて参考にしてみてください。
インプレ担当:浅野真則
(身長175cm)
自転車専門誌やWEB などで活動する自転車ライター。ヒルクライムを中心にレースに参戦し、日々トレーニングに励むガチ勢だが、近所を自転車で走るゆるめのライドも好き。青好きでもみあげの長い風貌から一部で青ゴルゴと呼ばれる。
CARACLE
CARACLE-COZ DB rev.0 ULTEGRADi2(カラクル・カラクルコージー ディスクブレーキ リビジョン0 アルテグラDi2)
メーカー担当者の推しポイント
テック・ワン
第二創業事業部 営業担当
久行武志さん
私自身がヒルクライムやブルベ、ロゲイニングなどで使用し、700C ロードよりタイムが向上したり、表彰台に登ったりしています。最新のシマノコンポを搭載すると、12 速Di2 や油圧ディスクブレーキで「思うがまま」に操れることを実感しています。競技で結果を出せるCOZ ですが、輪行でも大活躍。片手で持ち上げて空中で素早く輪行袋に納め、階段をダッシュで上れる軽さで発車3 分前に駅に到着しても間に合いました。
並のロードバイクを食う〝武闘派〞
カーボンフレームにシマノ・アルテグラR8100 シリーズの油圧式ディスクブレーキを搭載し、7.3kg という圧倒的な軽さと優れた走行性能を両立するカラクル・コージーのフラッグシップモデル。
メーカーによると、フラットマウント規格のディスクブレーキキャリパーに対応し、前後スルーアクスル仕様の世界初の折りたたみ小径車。スルーアクスルを採用することでホイールの回転性能を最大限に引き出すほか、車輪装着時にホイールが斜めに入ってローターと擦れるトラブルからも解放される。
451規格の20 インチリムにストレートプルタイプのスポークに対応する軽量ハブを組み合わせたホイールや、随所にチタンボルトを採用するなど、軽量化にも余念がない。
価格:57万2000円(税込)
フレーム素材:カーボン
サイズ:M、L
主要コンポーネント:SHIMANO ULTEGRA R8100 Di2
タイヤ:20×1-1/8(451)
変速:2 ×12 speed
重量:7.3kg
カラー:マットブラック ※不定期に限定カラー発売
問:テック・ワン
☎ 072-339-1120
https://www.caracle.co.jp/
コンポーネントはシマノ・アルテグラR8100 シリーズ。電動変速Di2 に油圧式ディスクブレーキの組み合わせだ。
シートステイにクイック・イットというエラストマーのサスペンションとジョイントを兼ねた機構を搭載。
インプレッション
カーボンフレームに最新のシマノ・アルテグラDi2 を搭載していて、見た目からしていかにも武闘派。実際に走ってみると、期待値を大きく上回ってきました。加速性能、高速巡航性能、登坂性能とあらゆる走行性能を高い次元で兼ね備えています。トリプルトライアングルフレームの剛性の高さは、ヘッドまわりの安定感とハンドリングの素直さに現れていると感じました。
コーナーではひらひらと軽快ですが、軽量バイクにありがちな腰高感、小径車特有のハンドリングがクイックすぎるとか直進安定性に欠けるというネガは感じません。レーシーな乗り味ですが、シートステイにエラストマーが内蔵されていて、後輪の快適性や路面追従性は高いので、路面に段差があるようなところでも安心して走れるのもいいですね。
折りたたみ機構もフレーム剛性に影響しにくいシートステイのシートチューブ側に持ってきて、サスペンションも兼ねて重量増を最低限に抑えるなど、実によく考えられています。コンポーネントのグレードが他のバイクより圧倒的に高いことを割引いて考えても、このバイクはスゴイ! 並のロードバイクをカモにできるポテンシャルを秘めた“スーパー小径ロード”です。
※試乗サイズはM
Pacific Cycles
REACH(パシフィックサイクルズ・リーチ)
メーカー担当者の推しポイント
ファビタ
パシフィックサイクルズジャパン事業部
鈴木 潤さん
451ホイールでよく走り、前後に搭載されたサスペンションの影響も相まって長距離走行も快適です。フル・イージーと用途に合わせて2 種類の折りたたみが方がありますが、フレームを折りたたまないので剛性面での不安はありません。フレーム販売のため、オンロード風・オフロード風など自分の理想の方向へ組み上げる楽しみが味わえ、見た目もかっこいい! スタンドやリヤキャリア、輪行袋などの専用アクセも充実しています。
重厚で上質な乗り味が魅力
フロントとリアにエラストマーのサスペンション機構を持たせ、快適性とスムーズな走りを実現した折りたたみ小径車。旧モデルと比べ、エラストマーがより硬くなって走りのダイレクト感が増し、対応ディスクローターの径が前後とも140mm に拡大されて制動力が増すなど、走行性能に関わる部分をブラッシュアップ。
フロントフォークのドロップアウトがオープンタイプに変更されてホイールの着脱がしやすくなり、輪行などの際の利便性も増した。溶接がフラットウェルディングになり、見た目も美しくなっている。フレームセット販売で、アッセンブルするパーツによってロードバイク的にもグラベルバイク的にもアレンジ可能。1 台でサイクルライフの楽しみを広げてくれる。
価格:19万5800円(税込)
フレーム素材:アルミ
サイズ:─
主要コンポーネント:─
タイヤ:20インチ(451)対応
変速:─
重量:4kg(フレーム+フォーク)
カラー:マットアクアブルー、マットオレンジ、マットブラック、ホワイト
問:パシフィックサイクルズジャパン
☎ 045-580-1650
https://pacific-cycles-japan.com/
フロントフォークにエラストマーのサスペンション機構を搭載。ディスクブレーキローターは140mm 径に対応し、制動力アップ。
シートチューブとシートステイの接合部にエラストマーを搭載。ここが折りたたみ時のジョイントにもなる。
折りたたみサイズ:W740 × H560 × D400mm
インプレッション
このバイクの乗り味を一言で表すなら「重厚」。クルマでいうドイツ車のようないい意味での重厚さです。フレームとフォークのトータル重量が4kg とかなり重いからか、走行中は重心の低さを強く感じます。
乗り味は安定志向。横風にあおられることもあまりなく、小径車に乗り慣れていない僕でも、このバイクは特に安心して乗れました。ハンドリングも安定志向なので、あくまでライダーが意識的に重心移動して曲がるイメージ。バイクに走らされるのではなく、ライダーが常にイニシアチブをとれるので操る楽しさが感じられます。
ロードバイクというよりはグラベルバイクに近い乗り味だと感じましたが、フロントフォークとシートチューブ&シートステイの交点にエラストマーが入っていた影響もあるかもしれません。
エラストマーのおかげで路面からの突き上げが緩和され、比較的路面の振動を感じやすい細身のタイヤ× 451 ホイールの小径車でも思っていた以上に快適でした。荒れた路面にさしかかった時の安定感や快適性は今回乗ったバイクの中で1、2 を争います。個人的には、なるべく太めのタイヤを履かせて軽めのグラベルも行けるオールロード的なバイクに仕立てると面白いと思います。
PATTOBIKE
RO451(パットバイク・RO451)
メーカー担当者の推しポイント
平和技術研究所
代表
越川悦雄さん
どんな旅行にも手軽に携行でき、国内外の好きな場所でスポーティーな走りを堪能することができる、女性にも大人気の折りたたみ自転車です。特色は、ミニベロ最大の20 インチ(451)ホイールを採用していながら2まわり小さい18 インチ並みのサイズを可能にした世界初の3D(三次元)折りたたみ機構です。輪行に便利で走行時にも邪魔にならない格納式の輪行キャスターを標準装備しています。
走りも運びやすさも追求した1台
ロードバイク並みの走行性能を備えながら、折りたたんだときはスーツケースに収まるほどコンパクトになる折りたたみ小径車という開発者の思いを形にしたパットバイク451 シリーズ。
折りたたんだときに運びやすいようキャスター付きで、パーツに汎用品を多用することで修理やカスタムが手軽にでき、誰でも気軽に乗れる優しいデザインを採用するなど、随所にこだわりが詰まっている。
このモデルは、ドロップハンドル仕様でシマノのロードバイク用10 スピードコンポーネントを搭載した同シリーズのフラッグシップ。ロングライドを余裕を持ってこなせる必要十分なスペックを有しながら、折りたたんで輪行もしやすく、行動範囲を広げてくれる。
価格:26万4000円(税込)
フレーム素材:アルミ
サイズ:─
主要コンポーネント:SHIMANO 105(5700シリーズ)
タイヤ: 20×1-1/8(451)
変速:2×10speed
重量:10.8kg(ペダルを除く)
カラー:ガンメタリック
問:平和技術研究所
☎ 0476-93-7403
http://pattobike.com/
シマノの10 スピードコンポーネント(5700 シリーズ105)を搭載。ロングライドも余裕でこなせる。
リムブレーキ仕様でキャリパーはシマノ・105。必要十分な制動力が期待できるうえ、アップグレードも容易だ。
折りたたみサイズ:W580 × H720 × D370 mm
インプレッション
ロードバイク並みの走行性能と折りたたみ時のコンパクトさを追求したというパットバイク451シリーズ。ドライブトレインはロードバイクのエントリーモデルでも多く採用されるシマノの10 スピードコンポーネントを中心に構成され、チェーンリングは56/44T、カセットスプロケットは11-28T が搭載されているので、平地の巡航も上りも十分こなせます。
451 ホイールを履いていますが、他のバイクと比べて推奨低気圧が低めのためかサスペンションなしの小径車としては快適性もなかなか。ハンドリングはややクイックな印象で、特に上りなどの低速時にはその印象が強く感じられました。自分にはハンドルが近くて上半身が起きたアップライトなポジションだったこともあり、速さを追求するというよりは長距離を気持ちいいスピードで巡航することを目指しているバイクだと感じました。
ハンドルやステムなどのコックピットまわりは汎用品が使え、ハンドルの高さもかなり低くも高くもできるので、ポジション調整の自由度は高そうです。コンポーネントもロードバイク向けの一般的なものが使われていて、メンテナンスや部品交換も簡単。カスタムしながら長く乗り続けられそうです。
Tyrell
FSX(タイレル・FSX)
メーカー担当者の推しポイント
アイヴエモーション
プロダクトマネージャー
渋谷和久さん
他の折りたたみ自転車に類を見ない高いスポーツ性がイチオシです。折りたたみ部分の剛性を高める設計とフルカーボンフォークの採用等により、スポーツバイク経験が豊富な方も納得の「ほんまもん」のスポーツ性を実現。様々なロケーションで妥協のない走りを楽しみたい方に是非! フレームはSHIMANO Di2コンポにも対応、カドワキコーティング社のカラーオーダーも可能で自分好みに仕上げられるのも嬉しいポイントです。
瀬戸内生まれの国産小径ロードバイク
香川県のスポーツ自転車メーカー・タイレルの人気モデル・FX をベースにした20 インチ折りたたみ自転車のフラッグシップ。完成車重量9.5kg(ペダルなし)と同ブランドの折りたたみ自転車では最軽量を誇る。
フレームには、ヘッドチューブからBB シェルに伸びる2本の細いパイプがトップチューブをはさむ独自のスラントデザインを採用。低重心とロングホイールベースでスポーティーな走りを実現している。
エレガントなデザインから想像できないが、いざとなれば折り紙のようにコンパクトにたためるのも特徴だ。さらなる剛性アップと軽量化を実現し、ケーブル類のフレーム内装やDi2 コンポにも対応するなど、フラッグシップにふさわしい1 台に仕上がっている。
価格:42万906円(税込)
※SHIMANO 105ドロップハンドル仕様の場合
フレーム素材:アルミ
サイズ:̶
主要コンポーネント:SHIMANO 105(R7000)
タイヤ:20×1.1(406)
変速:2×11speed
重量:9.5kg(ペダルを除くSHIMANO ULTEGRA 2×11 ドロッ
プハンドル仕様参考値)
カラー:せとしるべルビーレッド、ムーンリットナイトブラック、カスタムカラー
問:アイヴエモーション
☎ 0879-49-1613
https://www.tyrellbike.com/
フルカーボンモノコック仕様のフロントフォーク。ショルダーのところから折りたたむことができる。
コンポーネントはシマノ・105 フルセット。フレームがケーブル内装に対応するのでDi2 へのアップグレードも可能。
折りたたみサイズ:W870 × H790 × D350mm ※フラットハンドルの場合
インプレッション
ロングホイールベースでトップチューブも長めなので、乗車姿勢がロードバイクに近く、直進時の安定感やコーナーでの挙動もロードバイクに近いです。折りたたみ可能ながら、メインフレームにジョイントがないので、フレーム剛性は高め。トップチューブとダウンチューブのほかにトップチューブをはさむように細身のチューブが2 本設けられているスラントデザインのおかげでしょう。
フレームが細めのチューブで構成されているからか、快適性は高めです。重量が小径車としては軽量で、加速性能や巡航性能も高く、乗り味はかなりスポーティーです。特に一度スピードに乗せてしまうと、小径車とは思えないほど巡航は楽に感じられましたが、これはロードバイクに近い前傾姿勢が容易に取れることが効いているように思います。
一方で20インチでも径の小さな406ホイールを採用しているからか、低速域でのハンドリングは若干クイックに感じられました。個人的にうれしいポイントは、フレームのカラーカスタムに対応している点です。デザインや塗り分けに凝らなければ、アップチャージなしで好きなカラーを選べる点は高く評価したいです。もちろん僕が買うなら青くします!
Chalet Sports
Chalet-COZ DROP(シャレースポーツ・シャレーコージードロップ)
メーカー担当者の推しポイント
テック・ワン
第二創業事業部 営業担当
久行武志さん
アルミ素材でモディファイしたCARACLE-COZ の弟分。とは言え、非折りたたみで剛性の高いフレームのお陰で、ペダルを踏み込むとぐいぐい加速します。加減速やターンの多い街中は、反応の良いChalet-COZ が向いています。前三角の剛性低下を解決する「3TRYANGLE」構造に、カーボンフォーク、2x10変速、フラットマウント規格ディスクブレーキを搭載した本格ロード仕様で、充分に700C ロードバイクを喰えます。
街乗りバイクの皮を被った韋駄天
都会をスポーティーに駆ける「街ロード」というコンセプトで作られた小径ロードバイク。大人用小径車の弱点であるフレーム剛性を強化しつつ、軽さも両立するために考案された3 トライアングルフレームを採用するなど、カラクル・コージーのフ
レームデザインを踏襲。その上でフレーム素材をアルミに変更し、折りたたみ機構を省くことで、フレーム剛性と強度、軽さを兼ね備え、メンテナンスが容易で故障が起きにくくなり、低価格化にも成功。ディスクブレーキロードの最新の規格であるフラットマウント式ディスクブレーキに対応し、軽量で振動吸収性に優れるフルカーボンフォークを採用するなど、隅から隅までこだわりを持って作られている。
価格:19万2500円(税込)
フレーム素材:アルミ
サイズ:─
主要コンポーネント:SHIMANO TIAGRA(4700)
タイヤ:20×1-1/8(451)
変速:2×10speed
重量:9.0kg
カラー:スカイ、スノー、ローズ
問:テック・ワン
☎ 072-339-1120
https://www.caracle.co.jp/
軽量で振動吸収性に優れるフルカーボンフォークを採用。ホイールの固定方式はクイックリリースだ。
クランクセットはオリジナル。さりげなくシャレースポーツのロゴが入っているのがニクい。
メインコンポーネントはシマノのティアグラ。2×10 スピードで平坦から上りまでしっかりカバーする。
インプレッション
「街ロード」というネーミングや、シャレースポーツのポップなロゴから感じ取れるキャラクターは、武闘派とは真逆の印象。実際にバイクにまたがっても、兄貴分のカラクル・コージーと比べるとポジションもアップライトだし、ビギナーでも乗りやすそうな印象を受けます。
ところが、実際に走り出すと、それは仮の姿で、実はなかなかの武闘派であると分かります。アルミフレームで折りたたみ機構を廃している分、乗り味はカッチリとしていて、ペダルの踏力をしっかりと推進力に変換してくれるので気持ちよく加速します。
巡航性能もなかなかのものです。ただ、カラクル・コージーと乗り比べた印象では、低速時の直進安定性はやや劣る印象。それでもスピードに乗ってしまえばあまり気になりませんでした。試乗車は自分にはかなりハンドルが高かったですが、ハンドルを下げようと思えば大幅に下げられますし、ステムやハンドル、さらにシートポストも市販品が使えるので、ポジション出しはあまり苦労しないはず。ポジションを調整し、コンポーネントやホイールをアップグレードしたら、カラクル・コージーのように並のロードバイクを食うほどの小径ロードに変貌するかもしれません。
DAHON
Mako(ダホン・マコ)
メーカー担当者の推しポイント
アキボウ
国内営業部 ブランドチーフ
中村修造さん
ミニベロロードのルーツとも言える2008 年にリリースされていた名作Mako を現代の仕様に生まれ変わらせたモデルです。小径車では珍しい フラットマウント仕様のデュアルピストン式のメカニカルディスクブレーキを採用。安心感ある減速力・制御力をもたらしてくれるため信頼して身体を預けられます。実際に1 年間乗ってきましたが、戦闘機のように思いのままに操れる乗り心地は、他にはない秀逸さ。
気持ちよく走れる脱力系小径ロード
2008 年に初代モデルがリリースされたマコは、ダホンの小径ロードバイクのルーツとされる名作。ダホンといえば折りたたみバイクのイメージが強いが、このモデルは歴代モデルの中でも珍しい非折りたたみ仕様だ。
最新のマコは、曲線を描くトップチューブやダウンチューブが特徴的な往年のモデルをベースにしつつ、トレンドを反映してディスクブレーキ仕様にアップデート。
重量面では不利なディスクブレーキ仕様でありながら、折りたたみ機構を省略することで完成車重量10.0kg という軽さを実現している。ドライブトレインはシマノのロードバイクコンポーネント・ティアグラで統一し、確実で安定した変速を実現。上質なライドフィールが味わえる。
価格:21万2300円(税込)
フレーム素材:アルミ
サイズ:470
主要コンポーネント:SHIMANO TIAGRA(4700)
タイヤ:20×1.25(406)
変速:2×10speed
重量:10.0kg
カラー:アイスブルー
問:アキボウ
https://www.dahon.jp/
正面から見るとハの字でドロップ部の幅が広いフレアハンドルを採用。ドロップ部を持ったときの安定感が高い。
TRP のメカニカルディスクブレーキを搭載。ホイールの固定方式はクイックリリースを採用する。
メインコンポーネントはシマノ・ティアグラ。2 × 10 スピードと必要十分な変速段数を備える。
インプレッション
トップチューブとダウンチューブが曲線を描くショートホイールベースのフレームと、20 インチホイールでも径の小さな406 ホイールの組み合わせは、寸詰まりな感じがしてなんともかわいらしい! フレームカラーのアイスブルーと、随所に使われているシルバーのパーツの組み合わせは、優しい雰囲気で脱力系な印象を受けます。
折りたたみではないので車重もまあまあ軽く、コンポーネントもシマノ・ティアグラが搭載されていて、スペックからは走りを意識しているようにも見えますが、乗ってみた印象も脱力系だと感じました。ヘッドチューブが長めでフレーム剛性があまり高くないことや、ライド時のポジションがかなりアップライトになるため、高速巡航が得意ではないことが理由です。
ただ、車輪が406 規格の20 インチホイールなので、ゼロ発進や低速域からの加速は気持ちいいですね。ハンドル位置が高く、ホイールベースが短く、ホイール径が小さいこともあって、ちょこまかと小回りがきく一方、ハンドリングがクイック過ぎる印象も受けました。かなりクセの強い乗り味ですが、慣れてしまえば問題ないでしょう。個人的には自転車散歩の足にふさわしい1台だと思います。
GIANT
IDIOM 1(ジャイアント・イディオム1)
メーカー担当者の推しポイント
ジャイアント
商品部企画課
大友 淳さん
直進安定性が高い長めのホイールベースとエアロ形状が特徴のフレームに、ETRTO 451 のホイール、ドロップバーやロードコンポーネントを採用することで、小径車ならではのこぎ出しの軽さや取り回しのしやすさはそのままに、ロードバイクに迫る走行性能を実現しています。また、ステムを折りたたみ、前輪を外すだけで素早くコンパクトに持ち運びが可能なため、輪行をしたり、クルマに載せたりと幅広い楽しみ方が可能です。
軽量アルミフレーム採用の俊足バイク
20インチ小径車の常識を覆した高い走行性能で「小径ロードバイク」というジャンルを確立したイディオムシリーズの第2 世代。ロードバイクにも使われるアラックスSL グレードのアルミフレームを採用し、剛性と軽さを両立。ジオメトリーもロングホイールベースとすることで直進安定性を確保しつつ、小径タイヤのメリットである優れた加速性能も実現している。
シマノのエントリーグレードのロードバイクコンポーネント・ソラを標準装備し、街乗りからサイクリングまであらゆるシーンで機動力を発揮。フレームの折りたたみ機構はないが、ステムを折りたたむことができ、ロードバイクよりコンパクトになるので、輪行時の携行性も高い。
価格:14万3000円(税込)
フレーム素材:アルミ
サイズ:420mm(M)
主要コンポーネント:SHIMANO SORA
タイヤ:20×1(451)
変速:2×9speed
重量:9.9kg
カラー:ブラックダイヤモンド、セルリアンブルー
ステムは折りたたんで、コンパクトに収納することが可能。ハンドルの高さは上部のクランプを緩めて変更する。
軽さとスポーツバイクらしい操作感を両立するアルミフォークを採用。ホイールはジャイアントオリジナル。
メインコンポーネントはシマノのロードバイクコンポーネント・ソラ。2 × 9 スピードのエントリーグレードだ。
インプレッション
ロードバイクでも使われているアラックスSL アルミフレームを採用し、ダウンチューブもエアロ形状。ケーブルのフレーム内装化に対応していて、ロードバイクのトレンドを反映した本気のバイクです。
エアロ形状のフレームやハイトの高いリム、細身のタイヤを履いていることもあって、高速巡航性能に優れ、直進安定性も高め。それでいてタイトターンでも苦にならないキビキビとしたハンドリングも兼ね備えています。
一方で、エアロフレームとアルミフォークは路面からの突き上げを伝えやすく、エアロロードを思わせる硬めの乗り味です。走りはいいのに、残念なのがハンドルまわり。ステムの折りたたみ機構の影響でハンドルの下げ幅に限界があり、アグレッシブに乗りたい人や、身長が低めな人だとポジション出しに苦労すると思われるからです。
突き出し量を調整するステムやハンドルは一般的なものが使えますが、ポジション調整の自由度は低め。ハンドルを折りたたんでタイヤを外せばそれなりにコンパクトになるので、輪行時の機動性は高そうですが、フレームを折りたためないだけにこの機能は好みが分かれそうです。ハンドルまわりの調整しやすさは犠牲にしないでほかったですね。
tern
Surge PRO(ターン・サージュプロ)
メーカー担当者の推しポイント
アキボウ
国内営業部 グループリーダー
岩橋勇太さん
2016年のSURGE シリーズ発表から今日までSNS でも頻繁に話題に上がり、ミニベロロードという言葉を定着させた代表的モデルと言えます。専用開発されたホイールはディープリムにエアロスポークのペアード組みで軽量かつ存在感を引き立てます。また専用設計のカーボンフォークはTORAY 製カーボンファイバーを使用。軽量かつエアリーなデザインによってしっかりとステアリングを支え、軽快に風を切る走りを見せます。
圧倒的な存在感を放つ小径エアロロード
ダウンチューブとシートチューブをエアロシェイプとしたアルミ製のホリゾンタルフレームに、エアロ形状のフルカーボンフォークを組み合わせた小径エアロロード。
デザインチーム・Kitt design とのコラボレーションでカルチャー、ファッション、ライフスタイルのエッセンスを取り入れた新しいアーバンバイク「ROJI BIKES」シリーズの一翼を担い、クールで個性的なグラフィックも特徴だ。
シンプルでシャープなフレームデザインを象徴するホリゾンタルトップチューブは、乗降がスムーズになるよう計算されたもので、デザイン性と機能性を両立。ケーブル内装に対応し、フレームの溶接部をスマートウェルドとすることで、クリーンなルックスを実現している。
価格:23万7600円(税込)
フレーム素材:アルミ
サイズ:470、520mm
主要コンポーネント:SHIMANO TIAGRA(4700)
タイヤ:20×1-1/8(451)
変速:2×10speed
重量:8.9 kg
カラー:ブラック×イエロー、ブラック×レッド、デルタレッド、デルタグリーン、デルタブルー
問:アキボウ
http://ternbicycles.jp/
エアロ形状のダウンチューブを採用。ダウンチューブにはボトルケージ台座がなく、シートチューブに設けられる。
専用のカーボンフォークもエアロ形状のブレードを採用。リムハイト40mm のホイールが標準装備される。
メインコンポーネントはシマノの2 × 10 スピードコンポ・ティアグラ。上位機種へのアップグレードも容易だ。
インプレッション
見た目の第一印象では、アーバン系でアクの強いバイクのように感じられ、正直ちょっととっつきにくい印象を持っていました。実際に乗ってみると、挙動も素直でかなり乗りやすいバイクだったので驚きました。おそらくホイールベースが長めで直進安定志向が強めなのと、トップチューブが長めなうえにハンドルもかなり低くできるので、ロードバイクに近い前傾の強いアグレッシブなフォームで乗ることができるのが大きいでしょう。
フレームのダウンチューブやシートチューブにエアロ形状を採用していて、リムハイト40mmのホイールを装備しているからか、高速巡航は今回のバイクの中でトップクラスでした。折りたたみ機構がないため、フレーム剛性が高くて軽量なこともあり、加速時や上りでもキビキビと走って気持ちいいです。
操舵性もニュートラルで、小径車特有のクセはあまり感じられません。快適性は高くありませんが、走り重視なら気にならないレベルです。パーツをアップグレードしたら相当戦闘力が上がるのでは。気になる点はボトルケージ台座の位置ぐらい。小径車に乗っていることを感じさせないがゆえに、多用するダウンチューブのボトルケージがないと少し戸惑うかも。
※試乗サイズは520mm
文:浅野真則 写真:村瀬達矢
text by Asano Masanori
photos by Murase Tatsuya
※『自転車日和』vol.62(2022年10月発売)より抜粋