編集部の新型E-MTB試乗記│SPECIALIZED・YAMAHA・TREK

SPECIALIZED TURBO LEVO SL COMP CARBON

スペシャライズド ターボリーヴォSLコンプカーボン
価格:99万円(税込)
問:スペシャライズド・ジャパン
https://www.specialized.com

SPECIFICATION
サイズ:S1、S2、S3、S4、S5(サテンドッピオ×サンド×シルバーダスト)
カラー:グロスブレイズ×ブラック×シルバーダスト、サテンドッピオ×サンド×シルバーダスト、サテンミスティックブルー×ミスティックブルーメタリック×シルバーダスト
重量:NAフレーム:カーボン
フォーク:FOX 36 RHYTHM(160mmトラベル)※S1のみ150mmトラベル
リアユニット:FOX FLOAT X PERFORMANCE ※S1のみFOX FLOAT DPS PERFORMANCE
変速:1×12speed
コンポーネント:SRAM GX EAGLEほか
ブレーキ:SRAM CODE RS
タイヤ:SPECIALIZED BUTCHER GRID/SPECIALIZED ELIMINATOR GRID(29×2.3/27.5× 2.3)
アシストモード:3モード
バッテリー容量:320Wh(レンジエクステンダーに使用により最大480Wh)

スペックを全面的に刷新した第二世代のリーヴォSLが登場

小型化されたモーターでさらなるパワーアップを

E-MTBの常識を塗り替えたペダルバイクに迫る軽量な車体により、日本のトレイルシーンにおいて圧倒的な優位性を誇ってきたスペシャライズドのターボリーヴォSL。その第二世代となるモデルが、新型モーターおよび全面的に見直された車体を引き下げて、早くも日本上陸を果たした。

今回のモデルチェンジに見られる最大のポイントは、ターボSL1・2へアップグレードされた心臓部とも言えるモーター。筐体を小型化しつつも最大出力は320Wと、前モデル比でパワーが33パーセント、トルクに至っては43パーセントもの強化が図られている。モーター音がより静かになった点も特徴のひとつに挙げられる。

車体については、スタンプジャンパーエヴォのジオメトリーを踏襲しながらも、ホイールべース& リアセンターをショート化。フロント29インチ&リア27・5インチのマレット仕様とした、トレイライドでより機敏性に優れる設定にアップデートされてる。これにより、ターンにも余裕で対応する抜けがいい走りを実現。

また、ケニーヴォSLと同じくヘッドアングルをプラスマイナス1度まで変更可能なヘッドセット、走行モードや速度もひと目で確認できる液晶のインジケーターは新型ターボリーヴォSLにも搭載。29インチリアホイールへの入れ替えが可能となるリアエンドやBBハイトを5ミリ変更できるリアユニット取り付け部のフリップチップなど、ユーザーの好みに合わせて乗り味をカスタムできる懐の深さまで身につけた。

ヘッドアングルを寝かせ、前モデルよりもサスペンションフォークのトラベル量を160ミリに増加させることで、さらなる下りでの安定性を手に入れたこの新型ターボリーヴォSL。E-MTBカテゴリーにおけるスペシャライズドの独走状態に拍車が掛かりそうだ。

自社開発のSL 1.2モーターは前モデルよりもトルクが43%(50Nm)、パワーが33%(320W)アップ。超軽量な車体にして、フルパワー仕様のE-MTBに迫るアシスト力を手に入れた。E-MTBであることを忘れさせる静粛性の高さも見事。

ケニーヴォSLに続いて採用された液晶タイプのインジケーター。バッテリー残量ほか、さまざまなデータの表示が可能となった。アシストレベルの3段階切り替えのみならず、車両単体でアシスト比率&マックスパワーをカスタムセッティングできる。

ケニーヴォSLと同じく採用されたアジャスタブルヘッドセット。ヘッドアングルを63.6、64.6、65.6度の3ポジションに調整可能だ。

デフォルトではマレット仕様だが、ユーザーが望めばリンクボルトの位置を変更することで、リアも29インチホイールに入れ替えることができる。

リアユニット取り付け部にあるフリップチップを入れ替えることでBBハイトを5ミリ上げることも可能。

サスペンションフォークのトラベル量は前モデルから10ミリ増量。ヘッドアングルの変更を含め、下りでの安定性をより高めている。

IMPRESSION

編集トライジェット
身長173センチで手長の当方、前モデルはコクピットスペースがコンパクトであったため、試乗会等ではLサイズ(現行モデルのS4に該当)を好んで選んでおりましたが、新型ではリーチにゆとりができたため、S3でも楽しく走らせることができました。

個人的には、マレット仕様を活かしてタイトターンをアグレッシブに攻めるならS3、高速の下りで安定感を求めるならS4を選びたいところ。身長によるサイズ縛りがない点にスペシャライズドならではのユーザー目線に立ったフレンドリーさを感じます。

正直、前モデルではハードな登坂でフルパワー仕様の他社E-MTBから引き離されることもありましたが、新型であれば車体の扱いやすさとモーターの特性を活かせば(つまり上手にバイクコントロールとペダリングができれば)、遅れをとることはないと思います。もちろん、下りでのアドバンテージが圧倒的であることは言うまでもありません。現況、日本のトレイルシーンでは無敵のE-MTBと言断できます。

メディア向け発表会にはあのマット・ハンターも来場

日本にも多くのファンを持つMTBのプロライダー、マット・ハンターも新型ターボリーヴォSLの発表会に登場。E-MTBに乗っているとは思えないビッグエアをメイクすることで、新型ターボリーヴォSLが持つMTBとしてのポテンシャルの高さを証明してくれた。

 

YAMAHA YPJ-MT Pro

ヤマハ YPJ-MTプロ
価格:74万8000円(税込)
問:ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/

SPECIFICATION
サイズ:S、M、L
カラー:デュアルブルー
重量:23.3~23.7kg
フレーム:アルミ
フォーク:ROCKSHOX LYRIK SELECT(160mmトラベル)
リアユニット:ROCKSHOX SUPER DELUXE SELECT+
変速:1×12speed
コンポーネント:SHIMANO DEORE XTほか
ブレーキ:MAGRA MT-5
タイヤ:MAXXIS MINION DHF/MAXXIS RECON(27.5×2.6)
アシストモード:5モード+オートマチックアシストモード
バッテリー容量:13.1Ah

モーターのコンパクト化&軽量化を図ったファインチューン

最新スペックを見にまといアップデートされて新登場

デュアルツインフレームを採用して2020年秋、鮮烈なデビューを果たしたヤマハのフルサスE-MTB、YPJ-MTプロが新型モーターを搭載してモデルチェンジを果たした。今回、発表された2023モデルは、見た目こそ従来モデルと大きく変わらないように思われるが、モーターやコンポーネントの変更に伴い、フレーム各部のディテールにも多数、手が加えられている。

骨格を成すフレームは引き続き、モーターサイクルで実績のあるダブルクレードルフレームにインスパイアされた、2本のトップチューブと2本のダウンチューブにより構成されるもので、低重心化や優れた足着き性にも寄与。モーターサイクルメーカーならではの技術力と経験を活かし、適正なフレーム剛性を確保することで、優れた走行安定性と旋回性能を発揮する。

今回、新たに搭載されたドライブユニットは、ヤマハのフラッグシップモーターとなるPW-X3。前モデルのPW-X2から大幅な約20パーセントの小型化および約10パーセントの軽量化を図ったユニットで、さらなる高トルク化を実現するなど、大幅な進化を果たしている。コントロールスイッチとディスプレイは小型化されるとともに、より直感的に操作できる仕様へとアップデート。ブルートゥースおよびアントプラスとの接続機能も備えているため、すでに所有しているサイクルコンピューター等を同期させて使用することも可能だ。

ドライブトレインのアップデートに関しては、前モデルの11速からシマノのMTB用上級コンポーネント、デオーレXTへ変更。12速化されている。PW-X3との連携により、よりシームレスでストレスを感じさせないシフティングを提供している。サスペンションフォークは、ロックショックスの現行アイテムとなるエアサスタイプのリリックに変更され、凹凸の激しいタフな路面での走行にも対応した。

ヤマハ史上最小サイズ、最軽量となるフラッグシップドライブユニット、PW-X3。従来モデルを超える高トルク化を実現し、よりハードな路面でのアシスト性能を向上させた。幅広いケイデンス範囲でのパワーアシストとハイパフォーマンスを実現する。

直感的に走行モードとバッテリー残量が確認できる新採用のLEDインジケーター。スイッチはより扱いやすいコンパクトサイズにアップデートされ、走行中でもスムーズに走行モードの切り替えできる。サイクルコンピューターとの接続も可能。

モーターサイクルで実績のあるダブルクレードルフレームにインスパイアされたヤマハ独自開発のデュアルツインフレーム。

ブレーキは前モデルと同様、MTBマニアの間でもコントロール性の高さに定評のあるマグラ製だが、MT-30からMT-5へとアップグレードされた。

ドライブトレインは最新のシマノのデオーレXTへ変更。11速から12速へアップデートされ、 ロー側の最大ギアは46Tから51Tへワイドレンジ化。

IMPRESSION

編集トライジェット
モデルチェンジによってさらにブラッシュアップされたYPJ-MTプロですが、前モデルに搭載されていたPW-X2がE-MTB用のドライブユニットとして完成の域に達していたため、どう進化を遂げたのか興味津々でした。

自分の知る限り、反応性の高さでライバル各社のモーターから確実にリードしているヤマハのドライブユニット。PW-X2の段階で登坂途中からの再発進にも対応、足を止めた後に残るアシストの押し出し感も皆無とほぼ完璧。

試乗した結果、正直なところモーター単体の違いを感じることはできませんでした。しかし、ポイントはそこにあります。PW-X3ではPW-X2から大幅なコンパクト化および軽量化がなされているにも関わらず、PW-X2の高性能がそのまま継承されているのです。

構成部品を小型化しながら、耐久性を含むスペックを維持することがどれほどの難題か。開発陣の血の滲むような努力が目に浮かびます。数値上はトルクも向上しているので、感覚の鋭い乗り手であればさらなる感動が味わえるはずです。車体面でリアセンターが5ミリ短縮されている点も、操作性の向上に寄与していることは確実です。

30台限定の特別仕様車もラインアップ

YAMAHA YPJ-MT Pro 30th ANNIVERSARY
価格:75万9000円(税込)

ヤマハが電動アシスト自転車を発売してから今年で30周年。YPJ-MT Proにアニバーサリーモデルが用意され、7月31日に限定30台のみが発売される。限定カラーとなるファクトリーシルバーは、ハイポリッシュ化されたフレームにオフロードモーターサイクルの力強さを表現したブルーのアクセントが配色されたもので、メインフレームの前部は専用のエンブレムにて装飾。特別感に満ちた唯一無二のモデルだ。

 

TREK Powerfly FS 4

トレック パワーフライFS 4
価格:67万1990円(税込)
問:トレック・ジャパン
https://www.trekbikes.com/

SPECIFICATION
サイズ:XS、S、M、L、XL
カラー:ラヴァ×トレックブラック
重量:24.64kg(M)
フレーム:アルミ
フォーク:SR SUNTOUR XCR 34(120mmトラベル)※XSおよびSは100mmトラベル
リアユニット:SR SUNTOUR EDGE R
変速:1×10speed
コンポーネント:SHIMANO DEOREほか
ブレーキ:TEKTRO HD-M275
タイヤ:BONTRAGER XR3 COMP(29×2.3)※XSおよびSは27.5×2.35
アシストモード:6モード
バッテリー容量:500Wh

 

TREK Rail 9.7

トレック レイル9.7
価格:99万8690円(税込)

SPECIFICATION
サイズ:S、M、L、XL
カラー:カーボンレッドスモーク
重量:24.65kg(M)
フレーム:カーボン
フォーク:ROCKSHOX DOMANI RC(160mmトラベル)
リアユニット:ROCKSHOX DELUXE SELECT+
変速:1×12speed
コンポーネント:SHIMANO DEORE XTほか
ブレーキ:SHIMANO DEORE
タイヤ:BONTRAGER XR5 Team Issue(29×2.5)
アシストモード:6モード
バッテリー容量:750Wh

搭載されるボッシュのドライブユニット、パフォーマンスラインCXは、より人間の感覚に近い立ち上がりへとファインチューン。新たに電源のON/OFFとアシストレベルの調整が容易におこなえるLEDコントローラーがセットされた新型レイル。

シンプルな操作性とひと目でアシストモードとバッテリー残量を確認できる扱いやすさと優れた視認性を手に入れた。上位グレードのレイル9.7には750Whの大容量バッテリーが新たに採用されている。

トレイルを滑らかに駆け抜ける卓越したペダリング性能

ダウンカントリーバイクのテイストをまとったE-MTB

これまで日本国内のラインアップにおいて主力とされてきたトレックのフルサスE-MTB、レイルシリーズ。2023モデルとして追加されたパワーフライFSは、レイルを含む下り性能を重視してきたフルサスE-MTBとは一線を画す、クロスカントリーテイストが与えられた異色の存在だ。

本格的なアドベンチャーライドに挑める走行性能を持ち合わせながら、身近なトレイルライドでもオーバースペックになりすぎず、気軽なファンライドを楽しむことのできる、いわばダウンカントリーバイクのようなキャラクターを持ち合わせている。

より人間の感性とリンクするようにファインチューンが施されたボッシュのドライブユニットが搭載されたことで、その素性のよさを引き出すことが可能となったパワーフライFS。耐久性に優れたアルミフレームには、長く続く上り坂でも軽やかに力強く走り切れる独自のジオメトリーを採用し、トラベル量120ミリのサスペンションフォーク、トラベル量100ミリのリア側システムと相まって、路面の凹凸に対してフラットなフィーリングを保ちながら走り続けることが可能だ。

また、物価高が続く昨今の状況下において、フスサスE-MTBとしては異例とも言えるハイコストパフォーマンスを実現してきた点も見逃せない。ドライブトレインは必要最低限のアッセンブルながら、ドロッパーポストほかトレイルライドに求められるスペックはもれなく搭載。

トップチューブに大きな傾斜を持たせることでスタンドオーバーハイトを抑えた、小柄な乗り手に対するフレンドリーな設計も特徴のひとつとして挙げられる。XS&Sサイズを27・5インチ、Mサイズ以上には29インチホイールを装備することで、体格に対して適切なライディングポジションを提供してくれる。

ドライブユニットにはボッシュの最高峰モーター、パフォーマンスラインC X。従来モデルと比較して、より人間の感覚に近いパワーの立ち上がりへとチューンアップされている。地形に合わせてアシストレベルを自動で調整するeMTBモードを搭載。

リアユニットの搭載位置を計算しつつ、マスの集中化を狙って構成されたリアサスペンションのリンク構造も本モデルの特徴。路面の起伏に対して、頂点を舐めながら進むかのような、フラット感に満ちた走りをサポートする。

IMPRESSION

編集トライジェット
これまで乗ったことのない新しいE-MTBのカテゴリーだと感じました。従来はハードテイルのE-MTBはクロスカントリー系のジオメトリーで、フルサスのE-MTBはやや下り系のジオメトリーが一般的であったところ、本モデルはパワーフライの名を受け継ぐように、クロスカントリーバイクが持つ、ペダリングの気持ちよさを兼ね備えた車体設計とされています。

近年はトレイルバイクのカテゴリーでもサスペンションのトラベル量は150~160ミリへ増加傾向にありますが、コンパクトな山が多い日本のトレイルにおいては、いわばダウンカントリーのカテゴリーに属するこのパワーフライFSこそ、もっとも相性のいいE-MTBと言えそうです。

各部のパーツアッセンブルについてはコストパフォーマンスを高めるためか、それなりのグレードといった感じですが、オフロードにおいてフラット感をキープしたままペダリングで進んでいけるパワーフライFSは好印象で、ハイスピードの下り性能を求めない人であれば、試してみる価値はあると思います。ナチュラルなアシストの立ち上がり方を含め、モーター自体の進化も体感できました。

試乗会で体験したボッシュの〈eBIKE ABS〉とは?

こちらの試乗会では、自転車用にボッシュが開発した最新ABSを搭載するプロトタイプE-MTBの試乗も体験。車体には前後輪の回転数をリアルタイムで計測するセンサーが取り付けられており、その前後輪の回転差をキャッチすることで、アンチロックブレーキシステムが作動する仕組みだ。

実際に前輪をロックさせるべく、そこそこの速度から一気にブレーキレバーを握ったところ、前転するような挙動は見せずに、感触としては「ギョッ、ギョッ、ギョッ、ギョギョー」といった印象で前輪がロックすることなく停車。パニックブレーキの回避に貢献してくれるであろう、より安全に自転車を楽しむことができる未来を垣間見る瞬間だった。

『MTB日和』vol.53(2023年7月発売)より抜粋

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