はじめまして。
昨年日本でMTBと出会い、今はカナダのMTB天国スコーミッシュにて日々トレイルに繰り出している寺井杏雛(あんじゅ)です。
ご縁があって、私のスコーミッシュでのライドや暮らしをこちらに定期的に書かせていただくことになりましたので、まずは私の自己紹介をさせてください。
平地育ちの私と山。
生まれ育ちは、限りなく東京寄りの埼玉、平地です。幼稚園児の頃に登った山形県の月山の記憶がずっと心に残っていて、高校生になると本格的に山登りに熱中するように。
南アルプスの縦走、北アルプスの冬山登山など楽しく山を歩いていましたが、よりハードな登山に憧れ、大学では山岳部に。訳あって部活自体は1年経たずに辞めてしまいましたが、社会人の山岳会に入り直し、そこでロッククライミングと出会い、大学2年から4年までの3年間はクライミング中心の生活を送っていました。
瑞牆山と北米、バムな友達。
3年間ロッククライミングに魅了されて、毎週毎週、岩場に通いました。多くの時間を、山梨県北杜市にある瑞牆山という山で過ごしました。
力強く、雄大で、優しく、時に厳しい。そんな瑞牆山に魅了されながら、岩を登ることの楽しさを知りました。
アルバイトで貯めたお金で、2、3週間の北米クライミングトリップにも何度か行きました。初めて訪れたのはアメリカ、ワイオミング州に位置するビデブーという岩場。
ロープを使って岩と岩の間に挟まる「ワイドクラック」というクライミングを楽しみました。
マウンテンバイクがどんなものか、全く知らなかったこの時。きっとダート道をサイクリングするんだろうくらいに思っていましたが、
「今日は、朝バイクに乗って、午後から登るよ!」なんて言う、二人のアクティブさにワクワクし、自由なアウトドアライフスタイルに心から憧れました。
ビデブーのあとは、アメリカのカリフォルニア州にあるヨセミテに行きました。そこでは、岩の上に寝泊まりしながら1000m弱の大岩壁の頂上を目指す挑戦をしました。結果は敗退、ど敗退。それでもこの夢みたいな時間は、かけがえのない経験と、新しいクライミングの目標をくれました。
カナダ、スコーミッシュへ。そしてMTBとの出会い。
大学最後の年には、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州にあるスコーミッシュという岩場に、ロープクライミングではなくボルダリングをしに行きました。
街と岩場の距離が限りなく近いこの場所で、老若男女レベルを問わず岩に親しむ光景に心惹かれ、「この街に住んでみたい」と強く思いました。
帰国後、すぐにワーキングホリデーを申請。
ビザも無事に取得でき、「自分がこれから身を置くカナダ、ブリティッシュコロンビアはどんなところなのか」、クライミング以外の興味が湧いた時に偶然、ベティという女性MTBライダーの映像に出会いました。
同じ女性としてベティに対してものすごい尊敬の気持ちが湧くと同時に、「私もマウンテンバイクに乗ってみたい」そう思わずにはいられませんでした。「自分がこれから身を置く環境に、こんなにも心踊る遊びがあるなんて!」異国の地で、両腕を折って、肩も脱臼して、自分のお尻も拭けない状態になるかもしれないけれど、これをやらない選択肢なんてない! そう思えるほどの衝撃でした。
初ライド、トレイルライドの楽しさ
幸運なことに、当時の職場にMTBに乗る先輩がいたので、すぐに連れて行ってくださいとお願いし、「ふじてん」へ。それが去年の10月、営業終了日の5日前のこと。ママチャリにしか乗ってこなかった私にとって、試乗の時点で、舗装されていない芝生の上を慣れないバイクで走るというだけのことが思いの外怖く、コースを走れるのか不安になったのを覚えています。
いざコースに入ってからも何もかもがはじめてで怖い! けど、同じくらい楽しい! そんな怖さと楽しさ半々の初回でした。風を感じ、大地を踏み締め、木の根を乗り越えていく。映像でしか知らなかったMTBの世界をついに自分の体で体感できた日。すべてが新鮮で心が躍りました。
でもやっぱり、大きな買い物の前に、トレイルライドを体験してみたく、AST FOREST(秩父の自転車店)のゆうじろうさんにバイクを借りてトレイルを案内してもらいました。
下るために、自分の足で登る。意外にも泥臭さを感じて、「これ、好きかも」。
そしていざ下り。
私は転ばないようについていくのに必死。でもゆうじろうさんはまるで自転車と一体になって、地形の流れに身を任せながら、遊ぶように風を切っていく。その姿があまりに気持ちよさそうで、思わず「いいなぁ」と心の中でつぶやきました。
私ももっと、恐れずに、自然とひとつになって走れるようになりたい。そう思わせてくれる体験でした。
バイク購入、そしてスコーミッシュへ。
帰宅後、すぐに冬季アルパインクライミングの道具を売りに出しました。もともとこれがやりたくて大学山岳部に入って、社会人山岳会にも入った。でも、憧れとは裏腹に自分には向いていなかった世界。過去の自分の魂を売るような気持ちになりながら、でもそんなことに執着している場合じゃない、今この瞬間の興奮を逃しちゃいけない、と。
そうして手に入れた資金と、カナダ用に貯めていたお金でKONA BIG HONZO DLを購入。その後は、日本で半年弱乗り込み、少しずつ恐怖心よりも楽しいが上回るようになってから、バイクとともに本場カナダへ渡りました。
この続きは、また次回。
では、また。
寺井杏雛(てらいあんじゅ)
山で遊び育ち、その想いのまま学生時代を過ごす。22歳でマウンテンバイクと出会い、山との新しい遊び方を知る。現在はカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州、スコーミッシュにて、マウンテンバイクとクライミングを楽しみながら生活を送っている。