
マウンテンバイクで “下りのスピード” を競うダウンヒルレース。そのシリーズ戦を行う「DOWNHILL SERIES」の最終戦が11月29・30日にトレイルアドベンチャー・吉野ヶ里大会(佐賀県)で開催されました。
以下、DOWNHILL SERIESによるレポートをお届けします。
昨年に続き、2回目の開催となった吉野ヶ里大会。今大会もコース造成はMTBトレイルの設計施工・ツーリズムを推進するアレグラ所属のプロトレイルビルダーであり、国内トップダウンヒラーとしても知られる浦上太郎氏が担当した。

©️Noriyasu KATO
スタート地点までは10分ほどの押し上げ。秋の光に照らされる道をみんな登っていく。

©️Noriyasu KATO
スタート地点は景色が一望できる絶景スポットでもある。
通常営業で使用されているロングコースをベースにしながら、新設区間と既存区間を組み合わせたレイアウトを採用。地元勢が過度に有利とならないよう配慮しつつ、昨年よりも全体をブラッシュアップした。
普段はテクニカルなバームが特徴のコースだが、レースコースは「ダウンヒルバイクがより活きる」という狙いのもと、新たにロックセクションが加わり、コース全体の流れも縦へ縦へと落としていく構成となった。
全長510m・標高差67mという短い区間に多くの要素を凝縮した結果、攻略性の高いコースに仕上がり、選手からの評価も上々。優勝タイムは昨年から大きく短縮されたものの、レース内容はむしろ濃さを増した。

©️Noriyasu KATO
昨年は雨でツルツルになり、ドラマを呼んだ橋セクションは今年も健在。
土日ともに抜けるような秋晴れに恵まれた。
昨年より約20日遅い開催となったことで、コース脇の紅葉はちょうど見頃を迎え、鮮やかに色づいた木々が選手を迎え入れる。吉野ヶ里らしい穏やかな景観が広がった。

©️Noriyasu KATO
朝日で木々が輝き出す会場。多くのブースや観客で賑わった。
この大会は、トレイルアドベンチャーと地域との繋がりの深さゆえに、地元からの協力が非常に厚い。吉野ヶ里町は、DOWNHILL SERIESの12年の歴史で初めて年間スポンサーとなった自治体でもある。表彰式のバックボードやリザルトシートには「吉野ヶ里町」のロゴが掲げられ、1年間にわたり全国各地でその名を広くアピールしてきた。大会当日は伊東町長も会場を訪れ、バックボードのロゴを感慨深く見つめる姿が印象的だった。

©️DOWNHILL SERIES
朝のライダーズミーティングでは吉野ヶ里町の伊東町長からも一言ご挨拶をいただいた。
会場にはトレイルアドベンチャーとフォレストアドベンチャーが併設されており、その賑わいも大会の大きな魅力。
フォレストアドベンチャーを訪れた一般来場者や、選手の家族たちは森の上を滑走するジップラインを楽しみ、子どもたちは今年新設された樹上の「ネットコース」で跳ねたり転がったりと元気いっぱい。頭上からは笑い声が絶えず、レースとはまた違う活気にあふれていた。

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昼間はポカポカ陽気となり、選手たちは木々の下で思い思いに時間を過ごした。
レースに参加しない同伴者もそれぞれの時間を楽しむことができ、たまたま訪れた一般来場者も自然と観戦に足を運ぶこの環境は、DOWNHILL SERIESにとっても非常に貴重である。飲食エリアには地元のキッチンカーが並び、地域との連携の深さを感じさせる風景が広がった。

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スタート直後、難しいドロップをクリアしていくキッズHiクラスの大伴玄汰郎選手。

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ニコニコ笑顔で試走を繰り返す泉田詩音選手。

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ロックセクションを越えていく名小路丈太郎選手。

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フォレストアドベンチャーのスタッフもレースにチャレンジ! 池上諒選手。
最終戦となる今大会では、来季のゼッケン番号にも影響する年間ポイントランキングが決まる。
現在トップに立つのは田中航太選手(myX/trailadventure)。しかし、幾田悠雅選手(輪娯館/ vittoria / FOX)がシーディングランと決勝の両方で1位を獲れば逆転できるという、緊張感に満ちた展開だった。
JCF登録クラスではポイントによる昇降格もかかっており、「エリートに残りたい」「昇格を自らの勝利で決めたい」という思いを胸に、全国から95名がエントリー。北海道からも10名が参加するなど、シリーズらしい多彩な顔ぶれが揃った。
土曜のシーディングランを制したのは幾田選手。44秒885というタイムで、2位の田中選手のタイム46秒656を大きくリードし、勝負の行方はさらに緊迫した。ここではまだ田中選手が年間ランキング1位のまま。
決勝が行われる日曜も朝から晴れ渡った。
幾田選手は攻めの姿勢を維持しながらもミスを抑え、44秒725という圧巻の走りでフィニッシュ。田中選手は46秒100で届かず、逆転で年間チャンピオンの座は幾田選手の手に渡った。

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エリート男子クラス優勝の幾田悠雅選手。
「最終戦で勝てて、シリーズチャンピオンも獲れて嬉しいです。今回のコースはアップダウンが激しくて好きなタイプのコースでしたが、スピードを出しにくいセクションも多く、昨日は木に当たるクラッシュもあってなかなかリズムが掴めませんでした。今シーズンは、予選は良いのに決勝で転ぶことが多かったんですが、克服するためにトレーニング方法を変えてみたり、メンタルの部分でも考え方を変えたりして、力まず軽い気持ちで走るようにしたのが良かったかなと思います。今日は自分のなかではパーフェクトランでした。」と幾田選手。

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エリート女子クラス優勝の藤森美空選手。
エリート女子クラスは藤森美空選手KAMIHAGI cycle/Muc-off)が今季出場した7戦全勝で完全優勝。
「嬉しいです。今回のコースは楽しかったのですが、一発でバシッと決める走りができなかったのが悔しいところ。でもシリーズチャンピオンを獲れて良かったです。来年も全勝を目指します! 来年は、女子選手がもっと増えてほしいですね。」と笑顔で振り返った。
DHSでの毎戦恒例となったエリート男子の優勝者予想投票だが、最終戦だけはさらにグレードアップし、スポーツ男子・エキスパート男子・エリート女子・エリート男子の4クラスすべての優勝者を当てた参加者に、来シーズンのエントリー無料シーズン券が贈られる。
今年は、混戦となったスポーツ男子・エキスパート男子クラスともに九州の若手が勝利。シーズン券の当選者5名もすべて九州勢という、“九州勢が九州勢を応援する”、温かくもドラマのある結果となった。
年間チャンピオンにあと一歩届かなかった田中航太選手は「コースもすごく好きで、今日は勝てると思っていたんですが、気持ちが少し空回りしてしまいました。来シーズンこそ勝てるように頑張ります」と語った。
昨年から続く吉野ヶ里大会が、今年もたくさんの挑戦と歓声に包まれて幕を閉じた。シリーズ最終戦にふさわしい、熱量の高い二日間となった。
これで2025シーズンのDOWNHILL SERIESは全戦が終了。
来年は3月28-29日 高知県 宿毛市日平公園大会で開幕予定。

©️Noriyasu KATO
表彰式は暖かい拍手に包まれる。
DOWNHILL SERIES 2025 #9トレイルアドベンチャー・吉ヶ里
エリート男子リザルト

©️DOWNHILL SERIES
1. 幾田悠雅(輪娯館/vittoria/FOX) 44.725
2. 田中航太(myX/trailadventure) 46.100
3. 阿藤 寛(CIVREL Homies) 48.410
エリート女子リザルト

©️DOWNHILL SERIES
1.藤森美空(KAMIHAGI cycle/Muc-off) 54.926
2025 シリーズチャンピオン

©️DOWNHILL SERIES
各クラスのシリーズチャンピオンには年間スポンサーであるBOAからチャンピオンジャージが贈られた。
エリート男子 幾田悠雅選手(輪娯館/vittoria/FOX)
エリート女子 藤森美空選手(KAMIHAGI cycle/Muc-off)
エキスパート男子 名小路丈太郎選手(Lads with 伊那マウンテンバイククラブ)
スポーツ男子 木下雄介選手
マスターズ男子 望月克彦選手(MARSH/BodyArchitect)

©️DOWNHILL SERIES
今年はエリート男女クラスのシリーズチャンピオンに盾が贈られた。
◉サガテレビ
https://youtu.be/-kSTU_b1vy0?si=i2qG38wFMx3vwS-A
◉中学生ライダー密着
前半:https://youtu.be/Vr1VqTGwleU?si=gu2CrBQ2lm7s-dBn
後半:https://youtu.be/Lgj0XWLWDrA?si=mH8D_Avf58LGgmOA
◉佐賀新聞
https://youtu.be/mdCM_dpjOMY
問:DOWNHILL SERIES
https://dhseries.jp/



