弊誌スタッフのやってみたこと、試したことの実録レポート。「MTB日和」ならではの、バラエティに富んだトピックでお届けします。お茶のおともにでもしていただければ幸いでございます。
コスパ最高の足まわりチューニング
販売価格が10万円を超えるような完成車には、最近、チューブレスレディ対応のホイール&タイヤが当たり前のように装着されています。それだけでもありがたいことですが、結局のところチューブレス化するための作業は後からやらなくてはならないワケでして……。
ライドフィールが激変するタイヤのチューブレス化
人生最大の敵、それは〈めんどくさい〉。読者のみなさまの中には当方のお仲間もいらっしゃるかもしれません。
実のところ下駄にしているMTBはいまだにチューブデス仕様。たぶん、この先もずっと。
しかし、編集部号は取材であちこちに持ち出されることが多いため、恥ずかしくない最低限のスペックに仕上げておくべき。というわけで遅ればせながら、今回はザスカーをチューブレス化しちゃいます。
近年、比較的身近になってきたチューブレス化ですが、ひと昔前は多額の投資が必要でした。専用のリムもタイヤも相応の価格。
ビードは硬いし、タイヤの着脱もひと苦労。しかし、シーラントを使用するチューブレスレディなる規格が登場してからは、万人がその多大な恩恵を受けられるようになったのです。
シーラントを入れる前提ゆえ、異物刺さりによる小さな穴であれば現場で修理することなく、そのまま自走で帰りつくことだって可能になります。
なにより乗り味が格段に向上するのですから、真面目に乗るならチューブレス化しない理由はありません。
後に定期的な〈めんどくさい〉作業は待っていますが、それはまたそのときにでも考えましょう(←メンドクサラーのルーティン)。
事前作業として、完成車なりに貼られているリムテープをはがし、パーツクリーナーで貼り付け面をきれいに脱脂する。
リムテープの長さを決める。バルブホールを中心として15cm程度重なる長さでカットする。
まず保護フィルムを30cm 程度剥がし、重なりの中心がバルブホール位置となるようにテープの端をセット。センター部を親指でしっかり押し付けて、テープを引っ張りながていねいにを貼っていく。
前の行程を繰り返して1周(+15cm)分を貼り終えたら、センター部を指でこすりながら押しつけ、センターからサイド部に向けてエアを抜くように押し付ける。
バルブホールの中心に千枚通しで小さな穴を開けて、チューブレスバルブを挿入。ナットを締めて固定する。このアイテムは4mm アーレンキーでバルブの根元を固定できるで◎。
本来であればここでタイヤにシーラントを入れ、コンプレッサー等で勢いよくビードを上げるところですが、試しにシーラントを入れずにフロアポンプでシュコシュコ……まるでチューブが入っているかのようにパンパンとビードが上がりました(汗)。携帯ポンプでもイケそうな雰囲気です。
ここがポイント!
こちらのリムの内幅は21mm。近年のMTB としてはやや細めのリムです。そして、使用したリムテープのサイズは25mm。そう、やや幅広のテープをサイドに巻き込み気味で貼り付けたところがポイントなんです。通常のフロアポンプ(+シーラントレス)で簡単にビードが上がったのはそのおかげかもしれません。
GL components
チューブレスリムテープ
価格:2000円(税別)
サイズ:21、25、28、90、30、32、35mm
レースの現場で培ったノウハウを活かして、従来品の不満点を解消した重力技研のオリジナルアイテム。
GL components
チューブレスバルブ
価格:2200円(税別)
サイズ:36、44mm
レース使用も見込んだ軽量なアルミ製チューブレスバルブ。底部に4mm の6 角穴を設け、バルブの共回りを回避。
問:重力技研
http://www.gravity-lab.com/
ひと晩、放置してからのシーラント挿入作業へ
せっかくなのでリムの精度とタイヤの気密性でもチェックするべと、そのままの状態でひと晩放置してみました。ちなみにザスカーのリムはWTB製、タイヤはヴィットリア製です。
結果はどうだったかというと、エアはそれなりに抜けていましたが、タイヤの体は成している状態。数時間のライドであればシーラントなんてしーらんと、な雰囲気です。
とはいえ、少量でもエアが抜けていることは確かですし、パンク対策を考えてもそのままでいいという道理はありません。よって、引き続きシーラントの注入作業に入ります。
チューブレスレディが登場したての頃は、計量カップで適量のシーラントをタイヤに放り込み、こぼさないようにビビりながらタイヤをリムにはめる作業をしていましたが、最近はバルブから注射器で入れるのが一般的なようで。
さらには、バルブを容器にぶっ刺して、そのままシーラントを入れることができる商品まであるのだとか。
粘度も高すぎず、低すぎず、いい具合でタイヤの内部を覆ってくれるんですと。しかもブラックライトが付属? おもしろそうなので早速、試してみることに。
サラサラ系とベタベタ系のちょうど中間くらいの粘度でしょうか。スクラブっぽい流行のつぶつぶ入り。いい匂いがするし期待できそう。
バルブが12 時の位置になるようにホイールを回転。付属のツールを使ってバルブコアを抜きとる。
パウチをよく振って内容物をしっかりと混ぜる。キャップを外し、バルブをグサッと差し込む。思いのほかユルめでちょっとドキドキ。
ホイールをぐるっと180°回転。バルブ周辺からシーラントが漏れて……いませんでした。
パウチを指で押したり、丸めたりしてシーラントを流し込んでいきます。背面にメモリがついているので、使用量の目安に使えそうです。ちなみにザスカーは29インチなので1本あたり1パックをまるっと流し込みます。
バルブを3時の位置まで戻し、外したときと逆の手順でバルブコアを取り付け。空気を入れたらホイールを回転させたり、水平に振ったりしてシーラントを馴染ませます。ちなみにマックオフの動画ではバンバンと地面に叩きつけていましたが真似しません。山の手育ちなので。
リムの精度がよいのかタイヤの気密性が高いのか、目視できる範囲にシーラントのプツプツを見つけることができません。本来ならよろこぶところでしょうけど、ちょっとだけ残念。かといって、雑誌だから千枚通しでタイヤに穴を開けてテスト……とかってどうなの? 山の手育ち的に(つづく)。
ちょっとクラブっぽい感じ?
漏れは見つかりませんでしたが、せっかくなので外からシーラントを数滴垂らして、ブラックライト効果だけでも味わってみます。なるほど、本来であれば青白く光って、シーラントが漏れている箇所を教えてくれたワケですね!
Muc-Off
ノーパンクチャーハッスル
チューブレスシーラントキット
マックオフがトップダウンヒラーやプロロードチームと共同開発したラテックスベースの高性能タイヤシーラント。最先端のマイクロファイバー分子がタイヤの穴や裂け目を高密度で埋め、瞬間的に強力なシールを形成。非腐食性で、水でカンタンに洗い流せる。
価格:1790円(税別)
内容量:140ml
付属品:15ml 軽量スプーン、フレンチ/ アメリカンバルブ用バルブコア抜きツール、ツール固定用Oリング、エア漏れチェック用UV ライト
問:ダイアテック
http://www.diatechproducts.com/
編集 トライジェット
MTBや小径車などを複数台所有する『MTB日和』&『自転車日和』編集スタッフ。「自転車はスポーツの道具ではなく移動道具」と割り切り、都内の路地や暗渠(あんきょ)散策を楽しむ自称ロジラー。
文:トライジェット 写真:村瀬達矢
使用車両:GT ZASKER CARBON ELITE
『MTB日和』vol.41(2020年2月末発売)より抜粋