ご近所探検に出かけたくなる!「自転車お宝ラーメン紀行」


ある日、編集部に届いた新刊案内に心が奪われました。
「自転車お宝ラーメン紀行」

ラーメンマニアというほどではないものの、気づくとラーメンのことを考えている程度には「ラーメン好き」な編集部ヨコキ。
「東京の中華そば屋を自転車でめぐった旅紀行」という見出しを見て、即座にページをめくりました。

著者は国内外で出版されたあのベストセラー「行かずに死ねるか!」でおなじみの石田ゆうすけさん。
現在『自転車日和』にて「わたしが自転車で旅する理由」を連載しているかみとゆきさんも「行かずに死ねるか!」を読んだことがきっかけで自転車旅をはじめたそうです。(連載第1回はこちら
しかし……恥ずかしながらわたくしは未読。

それはひとまず置いておいて、「自転車お宝ラーメン紀行」に戻ります。

まず念のため、こちらラーメンガイドブックではありません。
とはいえ、著者の自宅が阿佐ヶ谷(編集部のある新宿から西へ7〜8km、わたしの自宅はさらにその先)とあり、行動範囲に馴染みがありすぎて、登場するラーメン店が気になって仕方ありません。

ラーメン店だけでなく、知っている場所や見覚えのある写真がちらほら現れるところもなんだかワクワクしてきます。
(本のなかに登場する看板建築の写真を見て、「うわー見たことある! ……けど、どこだっけ?」と気になって仕方なかった場所を、後日、以前の通勤路で見つけてテンションがあがりました。あ、看板建築というものも、この本で知りました。)

著者の石田さんは時間を大切にしたいからという理由でスマホを持っていないらしく、紙の地図をフロントバッグのマップケースに入れて走っています。しかも、目的地に近づくまではコンパスを頼りに走るという……なんとも古典的なスタイル。
驚いたのは石田さんが極度の方向音痴だということ。
「東を目指したのに、思いっきり南に来ているがな。」
というほどなのに、コンパスに頼る。そりゃあ、ただの移動も旅になるわけです。

わたしはといえば、最近でこそ住宅街や路地を走るようになりましたが、以前はとにかく幹線道路を使って直線移動をしていました。
知らない場所へ行く際はナビが導くルートをたどりがちで、ちょっと走っては立ち止まってスマホで位置確認してしまうという、アドベンチャー要素の足りないタイプ。
そんなわたしが、本書を読み進めるうちになんだか居ても立っても居られない気分になるのです。

「自分の住む町に、異世界が広がっている……。」

新型コロナの影響でこの春から日々自転車通勤するようになり、本書にたびたび登場するこの言葉の意味を実感するようになりました。
行動範囲だと思っていたエリアでも、ちょっとルートを変えるだけで発見だらけ。

石田さんのラーメン紀行とともに、
通勤途中の気になっている路地に明日は突入してみようか、気になっているお店に寄ってみようか……という気分が高まってきます。

肝心(?)のラーメンの話ですが、こちらはもう、なんというか人情ロマン?
人気店を調べてスタンプラリー的に楽しんでいるミーハー路線のわたしとは真逆で、石田さんは自転車でのんびりと散策しながら、ふと目についた「昔ながらの中華そば屋」へふらりと入る。
ラーメン店に限らず、旅先で出会うさまざまな方々とのふれあいに心があたたまります。

どんどん閉店していく昭和のラーメン店にしんみりしたりするものの、読んでいると楽しい気分になってくるから不思議です。
(取材交渉時の心情は『自転車日和』のアポなし取材時も同様なので、うんうんうなずきながら読みました)
ラーメン&自転車散策好きな方には鉄板ですが、普段幹線道路ばかり走っている方にも読んでほしい……ちょっと気分が変わるかもしれません。
気負わずのほほんと読めるので、なんとなく殺伐とした日々に疲れている方にもおすすめしたい1冊です。

実は本書を読み終えた瞬間に「行かずに死ねるか!」をポチりました。
世界9万5000kmの自転車ひとり旅という内容は、都内の自転車散歩とはスケールが違いすぎて読む前は想像ができませんでしたが、こちらも人との出会いが生き生きと描かれていて、一気に引き込まれました。
さまざまな感情が入り乱れて読み終えてからは少しぐったりしましたが……。

そのうえで振り返ると驚く「自転車お宝ラーメン紀行」でのこの言葉。
「都内のラーメン旅も世界一周も大きな違いはないのだ」
まじですか!?

いや、でも本当、身近な自転車旅に出かけたくなるのは間違いなしの冒険記です。
 
【書籍情報】
書名:〈わたしの旅ブックス27〉自転車お宝ラーメン紀行
著者:石田ゆうすけ
仕様:B6変型版
ページ数:288ページ
定価:本体1100円+税
発売日:2020年12月15日
発行:産業編集センター
 

Profile

  

編集部ヨコキ
小径車(ブルーノ&ブロンプトン)で街乗り、MTB(M-10)で里山散歩を楽しむ『自転車日和』『MTB日和』編集部員。好みの速度域は時速15〜20キロ。身長が低いうえに手足が短いため、乗れる自転車が限定されるのが最大の悩み。

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