写真と文:星野哲哉
自転車を折りたたんで専用の袋に入れ、電車に乗ってしまえば、どんな遠いところにでも行ける。そんな便利な輪行。
今では当たり前のように利用しているけど、かつてはJCA(日本サイクリング協会)の会員にしか許されていなかったって知っていますか?
これが、誰でも利用できるようになったのは、1984年10月1日。さらに、無料になったのは1999年1月1日と、ほんの16年ぐらい前のこと。
あくまでも鉄道会社のご厚意で利用させてもらっているということを肝に銘じて、各地へ自転車を走りに行ってきました。
自転車で100kmなんて
普通の人には理解できない?
私が所属する編集部には、スタッフやライターで構成される野球チームがあるのだが、先日その試合が、普段私が自転車で走るコースの近くで行われるというので見に行ってみた。
野球場に到着すると、私の自転車姿に好奇の目が集まる。お約束?の、自転車を持ち上げての「軽っ!」というリアクションや、ここに来るまで「60kmくらい走ってきた」という言葉に驚かれたり、「その辺を走っている人に聞いたら、100kmくらい普通に走っていると答えるよ」と付け加えたら、ポカーンという顔をされたり。
いわゆる〝自転車あるある〟でしょうか? 一般人からしたら、自転車で100km走るなんて、正気の沙汰とは思えないでしょうし。
ところで皆さんは、自転車で長距離を走りに行くとき、現地までどうやって移動しますか?
(1)家から自走
(2)クルマに自転車を積んで行く
(3)電車で輪行
ざっくり分けて、この3通りではないかと思いますが、どのパターンが多いですか?
私の場合は、
(1)の自走だと、走る範囲が限られ、似たようなコースばかりで飽きてくる。
(2)の車載は、目的地に行くのは便利だけど、自転車で走ったあとに、クルマを運転して帰らなきゃならないので疲れる。
(3)の輪行なら、疲れることなく遠くへ行けて、走り疲れたあとも寝て帰れる。
そんな理由で、輪行が多いかな? 帰りに酒も呑めるしね!
サイクリングシーズン到来
週末は西に北に輪行三昧!
そんなわけでの輪行ライド。暑い夏が終わり、凍える冬まではまだ早いこの季節。週末のたびに楽しんできました。
【2015年9月某日】
目的地は新潟だったが、ただ行ってもつまらないので、上越新幹線で新潟駅のひとつ手前、燕三条駅で下車して、弥彦山経由で新潟まで行くことにした。
弥彦といったら、越後国一宮の弥彦神社。旅の安全を祈願して、参拝をしてから弥彦山を登った。
約9km、標高差500m。平均勾配5.5%。思っていたよりキツいコースだったが、上まで行くと日本海が広がる絶景。遠くには佐渡島の姿も。
ところで、今回走った弥彦スカイラインという道。自動二輪車は通行禁止だけど、なぜか自転車は通行可能な道。
そのため、何台かの自転車とすれ違った。交通量もそれほど多くなく走りやすい。近くにこんな道があるって、ちょっとうらやましい。
ヒルクライムのあとは、まっ平らな越後平野を走り新潟まで。走行距離、約70km。
【9月某日】
東海道新幹線で静岡駅まで輪行。太平洋自転車道なるものを基本ルートとして、静岡駅から焼津へ行き、海岸沿いを御前崎まで。
そこから北上して掛川方面へ向かう、約100kmのライド。途中の焼津では港でマグロ丼を補給した。
台風中継でお馴染みの御前崎は、静岡県最南端の地。300度の視界は海ばかり。端っこまで来たんだなぁと、妙な感慨に浸る。
【2015年9月某日】
掛川のビジネスホテルで泊まった翌日は、大井川鐵道で乗り鉄の旅。日本で唯一の、アプト式鉄道に乗ってきた。この鉄道、さすがアプト式を採用するだけあって、秘境といった感じの中を走る。
乗車前に買った弁当を食べながら、車窓からの景色を堪能した。約2時間半の乗車で、終点の接岨峡温泉駅(※1)に到着。
これで終わったら【鉄道日和】になってしまうので、ここで自転車に乗り換える。ひとつ峠を登ったら、あとは静岡駅まで下るだけのコースだ。
ヒンヤリとした山の中から一転、下るにしたがって汗ばむほどの暑さに変わり、街が近づくのを実感する。
静岡駅までの約65kmライドを終えて、輪行袋に自転車を入れて帰路についた。
(※1)1年前の崩土により、 接岨峡温泉~井川間が運休のため
【2015年9月某日】
赤城山ヒルクライムに出場するため、群馬県前橋まで輪行。このようなイベントは何かと荷物がかさばるので、本来はクルマで行った方が便利なのだが、ここはアクセスが良いので、輪行でも楽に行くことができる。
そのため行きも帰りも電車内には、同じように輪行する人が何人もいた。ちなみにレースの方は、昨年より速いタイムで走ることができて、一応満足。前の週まで各地に走りに行った効果が少しはあったのかな?
こんな感じで輪行をしまくっているので、普通の人よりは十分手慣れていると思う。袋に入れるのはもちろん、どの電車にどの駅から乗ればいいか、車両はどこがいいか、的確な計画を立てられる自信はある。
しかし、今年のシルバーウィークだけは読めなかった。実は静岡駅まで輪行した日は、シルバーウィークの初日。
混むことは予想していたけど、予想をはるかに超える混雑だった。座席だけでなくデッキまで乗客でいっぱいになり、通路にまであふれる始末。
自転車は、混む前に車両最後部のスペースに入れることはできたものの、静岡駅で降りる際、そんな人混みの中をかきわけて降りなければならなかった。シルバーウィークを舐めていました。あの時の乗客の皆さん、ゴメンナサイ。
Profile 星野哲哉
『自転車日和』vol.38より抜粋