写真と文:星野哲哉
今回行ってきたのはココ!!
The PEAKSラウンド5蓼科
2018年7月8日
7月8日に長野県の蓼科・霧ヶ峰エリアで行われた、立科町女神湖畔をスター ト・ゴール地点とする、走行距離193km、獲得標高5154m(ド変態増しの 場合は226㎞)を走ろうというイベント。普通のロングライドイベントとは異なり、 サポートはほぼなく基本的にすべて自己責任。自転車のあらゆる能力が試される。
良い子は走っちゃいけない
変態坂バカが集まる大会
「走行距離200km弱。獲得標高5000m超。」
まともに考えたら、とてもとても走れるとは思えない。そんな恐ろしいイベント「The PEAKS」に、今年のはじめに思わずエントリーしてしまった。
「The PEAKS」とは、完走するのもままならないような過酷な登り下りを繰り返すコースを走るイベントで、5回目となる今回は、7月に長野県の蓼科で行われた。
「『頑張りましょう』とは言いません。どんどん心折れてリタイアしてください。」
大会主催者がこんなことを言うイベントである。どう考えても尋常じゃない。
大会HPには「初挑戦者のためのステージ」なんて謳っているが、別に過去のステージより楽なコースという意味ではなく、“リタイアがしやすいから”だそうだ。
この時点で十分普通じゃない。それなのに、“参加者の声”というページで、まさに今ゴールをして興奮しているであろう方々があおってくるわけですよ。
「充実した達成感が味わえます」だとか「記憶に残るライドになるよ」だとか。まんまと乗せられて、エントリーしちゃいました。
さあ、出ると決めてしまったら、 今度は本番に向けての準備。こんな尋常じゃないイベントを走りぬくためには、並大抵の努力では足りないはず。
日夜血反吐を吐くようなトレーニングをしなければ……とは思ったものの、気づけばこれといったことをすることもなく時が経っていく。
峠をガンガン登ることもせず、せいぜい体幹トレーニングをしたぐらい。
せめて自分の現状を知ろうと、5月の佐渡ロングライドでは200kmという距離をどのくらいのペースで走れるのかを、6月の富士ヒルクライムでは、登りで最後までばてないペースはどれくらいかを、計ってみた。
そのペースをもとに今回のシミュレーションをしてみると、ギリギリ完走できるかどうかといったところ。休憩をどれだけ減らせるかがカギになりそうだ。
今さら走るスピードが速くなることはないので、“最後までばてない体づくり”ということを考えて、本番までの数週間は、食事に注意して過ごすことにした。
効果があるのかわからないが、脂物を少なめにしてたんぱく質を積極的に摂ったりしてみた。
開催日が近づいてくると、当日の天気が気になってくる。雨なら雨具が必要になるし、気温が低いようなら防寒具も必要になるからだ。
10日前から発表される天気予報を見ると、どうも天気がよろしくない。それもそのはず、7月に西日本を襲った、とてつもない水害の原因となった前線が停滞していたのだから。
開催地のあたりは大きな被害はなさそうだが、隣の岐阜県では大きな被害も出ている。
こうなってくると“雨具の準備をしなきゃ”とか“防寒具も必要だな”どころではなく、そもそも開催できるのか?っていうレベルになってくる。
そうして迎えた当日。クルマで会場まで向かう途中、外は土砂降りの雨。
朝の5時前に会場の駐車場に着き、大会のフェイスブックページを見ると、「スタート時間を5時半から6時半に 1 時間遅らせる」とのお知らせが。さらに「5時半の時点で開催を中止するかどうか決定する」とも書いてある。
で、5時半になり発表されたのは、「開催中止」。スタート地点は雨が弱まってきたけれど、コースには山もあるわけで、そのあたりの路上に、連日の雨で川のように水が流れている箇所があるという。
そのため、安全な状態で開催するのが困難だということで中止を決定したそうだ。
しかも、そう遠くない地域では土砂災害もおきているわけで、いくら“自己責任”ということを謳っている大会とはいえ所詮遊び、こんな状況で何かあったら不謹慎極まりないでしょうしね。
中止が決まり次にアナウンスされたのは、8時半からの残念会。
会場近くの宿舎で、この日のために用意していた、補給食やけんちん汁、カレーなどを振舞ってくれることになった。
会場は、用意していたフィニッシュボードでの撮影会や大会グッズの即売会など、皆、持て余したエネルギーを発散しているかのように盛り上がっていた。
極めつけは、参加者の中に前日入籍したカップルがいて、急遽行われた即席結婚披露宴。ブルーベリーを乗せたおにぎりで、ケーキ入刀をしていました。
そんなこんなで何とも言えない暖かい空気に包まれて残念会も終わったのですが、全体を通しての感想は、「また走ってみたいな」と。
そもそも走っていないでしょと、ツッコミが入りそうだけど、“また”と言いたくなる雰囲気がそこにはありました。
何人かの人と話をしてみたけど、不思議なものでなんとも言えない仲間意識が芽生えてくるんですね。
最後に「来年、同じコースでリベンジをする」との発表が!
正直、こんな形で終わり気が抜けていたところだったので、来年またやるというのなら、それを目標にしていこうかなと。
そのためにも、もっと走りこんで、完走できそうな状態で臨みたいものです。
Profile 星野哲哉
『自転車日和』vol.48より抜粋