さまざまな余韻を残して終わった東京オリンピック。緊急事態宣言により、首都圏4都県をはじめ大多数の競技が無観客となったのに対し、マウンテンバイクXCOは観客を入れての開催となり、日本のレースファンは、世界最高峰のレースを観ることができた。今回は、伊豆MTBコースでみかけた「最新XCOバイク事情」にスポットを当ててみたい。
TREND1
フルサスバイク=勝利の方程式?
大会の3週間前に行われたワールドカップの熱気を、さらに凝縮したハイレベルのレース展開が見られた2日間。
各国、各選手それぞれ、プレ大会で得た感触を元に、コース攻略法を練ってきたはずだが、ベースとなるバイク選びについては、短いタームでアップダウンを繰り返すレイアウトということもあり、参加76選手中73名がフルサスバイクで出走。
特にウイメンズカテゴリーは、プレ大会にハードテイルバイクで臨んだヤナ・ベロモイナ(UKR)が、フルサスバイクをチョイスしてきたように、テクニカルな下りとルーズな登り路面にアドバンテージを求めてきた。
ハードテイルで走ったマヤ・ヴウォシュチョヴスカ(POL)、ターニャ・ザケリ(SLO)、ワールドカップで優勝経験のあるベテラン2名が20位、21位という結果に終わったことから、軽さよりもサスペンションを使いこなすことが、より重要になってくるのは間違いない。
エンデューロやトレイルライドでは、必須アイテムとなりつつあるドロッパーシートポスト。今までは重量面やシートチューブ径などからXCレースでの装着率は低かったが、下りでの操縦性を向上させるため、BMCが専用設計のモデルを開発。FOXも軽量化を図ったモデルを発表するなど、一気にドロッパーシートポストが普及し始めた。
今回、マチュー・ファン・デル・プールは装着していなかったものの、シュルターやピドコックだけでなく、比較的長身のライダーも装着率は高め。ウイメンも装着したネフが優勝するなど、テクニカルなコースにマッチした機材選びがポイントとなった。
TREND2
ドロッパーポストはマストアイテム?
FOX
TRANSFER SL
2021年モデルで全長の短縮と軽量化を果たしたトランスファー。さらに内部構造をメカニカルスプリングに変更。高さ調整を2段階として25%もの軽量化を実現。27.2mm径シートチューブにも対応。31.6x100mmのみ、全長430mmのXLが用意される。
■サイズ:27.2×50、27.2×70、30.9/31.6×75、30.9/31.6×100、31.6×100(XL)mm
■重量:327~399g
■ケーブル:内装式のみ
価格:4万7960円(ファクトリー)、
4万370円(パフォーマンス・エリート)
※リモートレバー別売(8690円)
マムアンドポップス https://mamapapa.at.webry.info/
DT SWISS
D232 ONE
クロスカントリーレーサーのために開発された60mmストロークのドロッパー。 倒立式構造により軽く、またダンパーのないシンプルな内部構造のため、信頼性とメンテナンス性に優れる。ヤグラやパイプにカーボンを採用するD232ワンに加え、アルミ製のD232もラインアップ。
■サイズ:27.2、30.9mm
■トラベル:60mm
■重量:369g(232ワン)、416g(232)
■ケーブル:内装式
価格:8万2500円(232ワン)、5万6100円(232)
マルイ https://www.dtswiss.com/ja
BMC
RAD-RACE
APPLICATION
DROPPER
BMCフォーストロークのためにデザインされた80mmトラベルドロッパーポスト。シートチューブに合わせた楕円形状のスライドパイプは、前後2.3mm厚、左右1.0mm厚とすることで、軽さと強度を両立させている。
■重量:345g
■ケーブル:内装式
※BMCフォーストローク専用設計
フタバ商店 https://e-ftb.co.jp/item/brand/bmc/
ゴーストチームが採用するコンプレッション・ホイール
スポークとリムを一体成形したカーボンコンポジットホイールと言えば、2018年に発表されたシンクロスのシルバートンSLカーボンが有名だが、アン・テルプストラ(NED)とカロリーネ・ボーエ(DEN)が使用したのは、所属するゴースト・ファクトリーチームが採用するバイク・アヘッド・コンポジットの6本スポーク・コンプレッションホイール。コンプレッション構造のホイールは軽量で高剛性、エネルギー伝達性に優れる反面、振動吸収性では従来のスポークホイールに利があったわけだが、前後サスペンションによって解決できたということだろう。
BIKE AHEAD COMPOSITES
BITURBO RS SL
ドイツのカーボンコンストラクターが手がけるカーボン・モノコックホイール。ハブには、軽さとメンテナンス性に優れるDTスイスのEXPラチェットシステムを採用。クロスカントリーレースから、ダウンカントリー、トレイルまで対応。
■重量:1249g
■リム内幅:27mm
■リム高:25mm
ポディウム
https://www.podium.co.jp/
スイスチームの伊豆MTBコース攻略
メン銀メダル&4位、ウイメン表彰台独占という快挙を成し遂げたスイスチーム。特にウイメンは、同一国が1~3位を占めるというオリンピック史上初の快挙について、通信社のインタビューに対しネフは「台風によってコース状況が一変したので、とても厳しいレースになると思いました。ロックセクションにも泥が被り、どこも滑りやすいコンディションになっていたのですが、午前中に設けられたトレーニングセッションをチーム全員で走って戦略を立てることができたのが、素晴らしい結果につながったと思います」と語っている。
また3位に入ったリンダ・インデルガントも「私たちはテクニカルコースに対するアドバンテージがあり、直前に走ることでベストなラインを見つけることができました」と、チーム全体で刻々と変化する状況を見極めることが、好結果につながったとコメントしている。
注:価格、仕様については変更されることがあります。
文:鈴木英之
『MTB日和』vol.47(2021年8月発売)より抜粋