温故知新 徒然MTB談話室 第9回

今回は今泉さんのホームトレイルに中沢さんが訪れ、ライドを楽しみながらいつもの感じで会話が……おっと、ここは「トレイル」でいいんでしたっけ? 詳しくは最後まで読んでみてください。

Profile

中沢 清(写真左)
CSナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB 日和』ではインプレッションライダーも担当。
今泉 紀夫(写真右)
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。

 

中沢:自分がPTAの会長になってから、小学3~4年生の子たちが店に遊びに来るようになりました。みんなMTBルックみたいな自転車に乗っているんですけど、彼らにとってはそれがMTB。

今泉:CTB(笑)。

中沢:スタンドもカゴもついています。でも、土の上に連れていくと、「カゴがあると走りにくい」とか「スタンドがあると重い」とか、いろいろとわかってくるみたい。で、「外そうかな」と言い出す子もいて。

今泉:自分たちにとってのランドナーと同じです。(山道を走るために)部品を外して、いわゆるパスハンターというネイキッドにしたり。

中沢:ノリさんが前にも話していたじゃないですか、必要に応じてそうなったんだと。自分は校内のペンキ塗りとか芝刈りとか、学校のいろいろなイベントを企画します。

そこで親とも交流が生まれるんですけど、ボランティアで整備しているコースや近所の公園に子どもたちを連れていくうちに、親までMTBに乗り出して。

最初は買い物や通勤の足として使いはじめますが、いまは低価格帯の完成車にもフロントシングル(ギア)のモデルがあるじゃないですか。すると「(舗装路で)足がまわり切っちゃう」とか「ギア付きの通学車に負ける」とか、いろいろなご意見が(笑)。

今泉:当然ですよ。だって(一般車はタイヤサイズが)ニーロクハチサン(26×1-3/8)、ニーナナハチサン(27×1-3/8)なんだから。

中沢:そういうことって、MTBのおもしろさを伝えていく上で大事な部分なんじゃないかな。

今泉:自転車の原義みたいな話になるけど、昔はちょっと外に出ればオフロードがあったわけで、うちの裏路地もまだ舗装されていなかったし。自転車は人間のエネルギーを効率よく活かして速く移動するためのもの、というのが考え方の基本。

当時は舗装されていない道も普通に走っていたので、それがMTBの原点というか、逆に自転車の楽しさの原点はMTBにはあるのかもしれませんね。

道具が単一的な目的に向かってどんどん進化して、自転車も利便性に応じて進化していった。それが極端になりすぎて、元がわからなくなっちゃった。

中沢さんがおっしゃるように子どもたちは純粋だから、自分の世界を広げるためにチャリに乗るし、それが楽しい。

中沢:そうそう、遠くにいけるし、風も感じるし。

今泉:自分も高田馬場から石神井までザリガニ採りにいきました。そういうことは思い出の中に刷り込まれています。

お父さんやお母さんにとって一番走りやすい車輪の直径を考えとき、ニーロクハチサンはETRTOでいえば26インチのMTBよりちょっと大きい590°なので、すごく走りやすい直径。

中沢:がんばりすぎないでも、そこそこ走れるサイズですね。

今泉:人それぞれのギア比みたいなものがあって、自分なんかだと48-16Tが丁度いい。わかるんですよ、1時間こいでいたらどのくらい移動できるとか、時速はどれくらいだとか。

そういうことを自然と体験してきましたけど、いまはメーターを取り付ける人も多いから、押しつけられるようにデータ化されすぎて。自分でサンプリングしないとわからないことは案外、多いんです。

中沢:いまは買った時点でフロントギアが1枚しかないMTBも多いですからね。専用コースでは遊びやすいし、わかりやすさがテーマなのかもしれないけど、そこばかり追求していくと生涯かかわるものにはなりにくい気がするんです。毎日乗れる人ばかりじゃないし、コースに持っていって楽しさを追求するためには仕方がない部分もあるけど。

今泉:道具ができ上がってきて、フィールドにしても遊び方にしても、世界的にみても一番やりやすいところにきたということなのでしょう。頂点といわないけど。

中沢:ひとまわりした感じ? 入口を広げた? ハードルを下げた?

今泉:そんな感じがします。自分の場合、いわゆるランドナーというフランス流のツーリズムをコピーして、泥よけをとってパスハンターにしてみたり、荷物を積んで出かけたりもしましたけど、ちゃんとツーリングをするのなら4サイド(バッグ)がいい。

いま風のバイクパッキングはチャレンジしやすい分、ゆったりとした移動の世界はありません。ひとつの自転車に工夫していけば、本当はなんだってできるんです。

中沢:モンキーのバイクっていろいろなことができますよね、オーナーのイメージに合わせて。自由度が大きいというか。

今泉:98シリーズは山の中で乗ることに特化させてあのシルエットにしていますけど、自分は競技を前提には考えていないので。

だから、マラソンレースに使っておもしろくないといわれてもちょっと……(笑)。いまはサーキットレーサーの話題ばっかりですからねぇ。

~~~~~~~中略~~~~~~~

中沢:ノリさんはトレイルという言葉がわかりにくくなっている気がしませんか? 最近は富士見パノラマのコースでもトレイルという言葉を使うようになったりして。

今泉:あれはトレイルじゃないですよ。みんな勘違いをしている。

中沢:トレイルって道じゃないですか。

今泉:踏み跡ですから。

中沢:ということは、いろんな人が使うものですよね?

今泉:逆に万人のためのものじゃないのかも。だって、普通の人はわざわざそんなところに入っていかない。普通の人は道を歩く。それはトレイルではなくてロード。

中沢:ジャンルとして歩く人、走る人、そして自転車に乗る人がいて。だからトレイルは道なんだと自分は思うんです。でも、BMXのフィールドは「ジャンプトレイル」。

今泉:っていうけど、あれは完全にサーキット。

中沢:別に明確にする必要はないんだけど、これからMTBに乗りはじめる人にはわかりにくい感じがします。

今泉:自分は明確にした方がいいと思う、理屈っぽいから(笑)。英語圏の人がどういっているかはわからないけど、日本人がバイクといえばオー
トバイのこと。

だから最近、自転車を「チャリ」っていうようにしているんです。前はすごく嫌いな言葉だったんですけどね、ばかにされている感じがして。だけど、万人にわかる言葉ってすごいと思うし。

中沢:子どもたちは愛情を持ってチャリンコと呼んでいますよ。

今泉:アリンコみたいでかわいい。

中沢:多分、スポーツバイクに乗っている人は自分たちがマイノリティだということを理解しているんです。だから、チャリっていわれると戦いたくなる。

今泉:その通り! 自分も齢60過ぎにして、やっと脱しました(笑)。

中沢:もし「MTBを広めたい」という思いがあって、そのための活動をするのであれば、トレイルだったりサーキット的なコースだったりを含め、きちんとわかりやすくしておかないと、これからはじめる人にとってはなにがなんだか。

サーキットみないなコースもトレイルという言葉を使うとそれっぽくて響きがいいじゃないですか。でも、自分が活動している丘陵地帯は地元の人たちや地域との関わりの上に成り立っている場所なので、そういったコース的な場所ではないんです。

だから、里にある道として「サトミチ」と呼ぶようにしています。ノリさんは自分が走っているところ場所を××ルートと呼んでいますよね?

今泉:そこはニュアンスが違う。「今日はどのルートで走ろうか?」という相対的なものであって、道を表現しているつもりはないんです。走りを表現したい。

ミチについては「道」と書くか「路」と書くかの差じゃないかと。ちなみに「小径(こみち)」と書く、あのいい方は好きです。

中沢:地元で関わっているイベント、〈自転車でまち探検〉で一般の人を案内するとき、「トレイル」では誰にも伝わらないけど、道なら伝わります。「山道いきますよ」とか「林道いきますよ」とか。

今泉:日本語のすごさって、英語をカタカナにできちゃうところ。

中沢:やっぱり海外の人にもわかりやすくしないといけない?

今泉:そこはドメスティックでいいと思いますよ。入口をどうするかという意味でも言葉は大切ですから。

中沢:入口を大切にしないと長く続ける人が増えないですよね。

今泉:生涯スポーツという言葉があります、80~90代も普通に楽しめるような。そういう流れにチャリは絶対にならない、いまのままでは。

中沢:ビッグビジネス云々じゃなくて、スポーツやレクリエーションとして定着させるためには考えるべきことがあるはず。子どもはもちろん、大人になってからはじめる人のためにも、もっとわかりやすくしなくては。

今泉:うちのかみさんが永遠に卓球を続けるように。

十数年の時を経て、新たなモンキーバイクとして製作されたB4。流行のグラベルロードとはひと味違う、今泉さんの半生が凝縮されたモンキー的ランドナー。

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.39(2019年8月発売)より抜粋

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