知っているようで実は知らない いまさら聞けないMTB基礎講座 第5回 〜MTB コンポーネント編〜

ベテランにとっては当たり前のことでも、MTB初心者にとってはわからないことだらけ。同じように見える自転車の価格がなぜこんなに違うのか……その理由に直結する、コンポーネントについて取り上げます。
 

コンポーネントの違いでMTBの走りはどう変わる?

スポーツバイク入門者の前に立ちはだかる最初の壁、カタカナで羅列された難解な専門用語。その筆頭として挙げられるワードに〈コンポーネント〉があります。〈ブレーキ〉や〈チェーン〉であれば、それなりに想像もつきますが、日常的に聞き慣れない言葉となると……ですよね。では、〈コンポーネント〉とはどのパーツを指す言葉なのでしょうか?

自転車業界では、フレームを除く主要な構成パーツのことを総じて〈コンポーネント〉と呼んでいます。コンポーネントメーカーの代表格であるシマノの場合、ペダルやホイールまでコンポーネントの一部としていますが、一般のユーザーは変速&駆動系(クランク、ディレイラー、シフターなど)&制動系パーツの集合体を〈コンポーネント〉と捉えているようです。MTBの場合、このコンポーネントにいくつかのグレードがあり、同一フレームの場合、そのグレードの差によって車両価格に差が生じてくるのです。

 

MTBの価格、なんでこんなに違うの?

一見同じような形のMTBなのに、その価格差に驚くことはありませんか?メリダのビッグナインシリーズを例に、価格以外の違いを比べてみます。

価格の違いはだいたいここでわかる!?

1.フレーム素材
MTBに使われる主なフレーム素材 はアルミとカーボン。比較的軽量で 安価なアルミ素材はエントリーグ レードからミドルグレードを中心に幅 広く採用され、MTBフレームの主流 となっている。カーボンは軽量で強 度が高く、フレーム成形の自由度の 高さも魅力。ハイエンドモデルに採 用される高価な素材だ。ほかに、クロ モリやチタンもあるが、どちらかとい うとツウ好みの素材でアルミよりは 高価となる。

2.重量
MTBの完成車重量は、ダウンヒルバイクを除き、だいたい8kg〜15kg。トレイルバイク、XCバイク、エンデューロバイクなどカテゴリーごとに平均重 量は違うが、軽ければ軽いほど価格は 高くなる。登りは軽い車体が有利にな るが、下りは軽すぎると不安を感じることも。重量差と価格差を見極めなが ら選びたい。

3.コンポーネント
カタログスペック内で「クランク」 「ディレイラー」「シフター」「ブレーキ」などと表記される、自転車を構成するパーツ類(主に駆動系パーツや制動系パーツ)。これらにもグレードが あり、軽ければ軽いほど高価になる。また、高価なパーツは操作性や耐久 性が高く、デザイン面でも手の込んだ 処理が施される。

MERIDA BIG.NINEシリーズによる比較

BIG.NINE 9000
価格:110万円(税込)
フレーム素材:カーボン(CF5)
フォーク:ROCKSHOX SID SL ULTIMATE(100mmトラベル)
クランク:RACE FACE NEXT SL
Rディレイラー:SHIMANO XTR
シフター:SHIMANO XTR
ブレーキ:SHIMANO XTR
重量:8.3kg
 

BIG.NINE XT
価格:45万1000円(税込)
フレーム素材:カーボン(CF3)
フォーク:ROCKSHOX REBA RL(100mmトラベル)
クランク:SHIMANO DEORE XT
Rディレイラー:SHIMANO DEORE XT
シフター:SHIMANO DEORE XT
ブレーキ:SHIMANO DEORE XT
重量:10.3kg
 

BIG.NINE 500
価格:17万500円(税込)
フレーム素材:アルミ
フォーク:MANITOU MARKHOR COMP
クランク:SHIMANO DEORE
Fディレイラー:SHIMANO DEORE
Rディレイラー:SHIMANO DEORE XT
シフター:SHIMANO DEORE
ブレーキ:SHIMANO DEORE
重量:12.8kg

 

パッと見は同じようでも実は異なるパーツの構成

自転車はパーツの集合体であるため、フレームや構成部品のグレードが異なれば価格に差が生じるのは当然。設計上の寸法が同じであれば、シルエットも同一に仕上がりますが、フレームを含む各パーツに使用されている素材、構造、精度が異なれば、車体の重量や乗り味は大きく異なってきます。車両価格が100万円を超えるような競技向けのフラッグシップモデルの場合、構成するひとつひとつのパーツが最高峰。乗り手のフィジカル次第では、表彰台の最高位を獲得することも夢ではないでしょう。

同一カテゴリーから愛車を選ぶ場合、予算に余裕があるのであればグレードの高いモデルを選択するのは◎。スポーツバイクの世界で、軽さが仇となることはまずありませんから。しかし、気軽な山道のサイクリングを楽しんだり、通勤&通学など日常生活でも使用するのであれば、普及グレードのMTBでも必要にして十分。幸せへの近道は〈目的に応じた愛車選び〉にあるんです!

 

コンポーネントのグレードと違い

自転車を構成するパーツ類のグレードにはどんなものがあってどんな違いがあるのか。ここではシマノのMTBコンポーネントを例にあげて比べます。

MTBに欠かせないパーツ群
コンポーネントとは、自転車を構成する駆動系(変速関連)や制動系(ブレーキ関連)パーツのこと。 略して〈コンポ〉と呼ばれる。クランク、シフター、ディレイラー、カセット、ブレーキなど。

シマノのMTBコンポーネント

XTR

シマノMTBコンポーネントの最高峰。より速く軽い力で操作できるシフトレバーや高い制動力とコントロール性を発揮するブレーキは、クロスカントリーをはじめとする世界のレースで活躍する。

DEORE XT

世界初のMTBコンポーネントとして登場以来、マウンテンバイカーの信頼を獲得し続ける。XTRに次ぐ上位グレードとして、登りや下りはもちろん、あらゆる状況で高いパフォーマンスを発揮する。

SLX

アドベンチャーライドやファンライドレース、トレイルライドなど、幅広いライディングシーンで期待に応えるパフォーマンスを提供。多くのライダーの支持を得る質実剛健なミドルグレード。

DEORE

上位グレードのテクノロジーを受け継ぐ、シマノMTBコンポのベーシックグレード。スムーズで安定性の高いドライブトレインと確実な変速性能により、さまざまな地形に対応する。

その他のMTBコンポーネント

トレッキング系
ALIVIO
ALTUS
ACERA
TOURNEY
街乗りからオフロードサイクリングまで軽快な走りを提供。 冒険心をかきたてるコンポーネント。

グラビティ系
SAINT
ZEE
ダウンヒルシーンで活躍する コンポーネント。強度と耐久性に優れ、強力で安定した制動力を発揮する。

 

コンポの違いとMTB選びのポイント

フレーム素材やコンポーネントの違いが価格に現れるMTBですが、乗ってみてその違いは体感できるのか。グレードの違う2台を乗り比べました。

MERIDA BIG.NINE XT

価格:45万1000円(税込)
フレーム素材:カーボン
おもなコンポーネント:SHIMANO DEORE XT

カーボンフレームは車体が軽いため、フロントを上げたり障害物を乗り越えたり、さまざまなアクションのコントロールがしやすくスムーズに 走れます。乗り心地の良さや出だしの軽さも特徴。少ない力で制動力が 得られるというメリットもあります。コンポーネントはデオーレXT。 変速の速さとタッチの軽さが抜群です。「ここ!」というタイミングで 反応してくれるので、地形の変化にも素早く対応できます。

ブレーキレバーが人差し指1本で操作でき、位置の調整もしやすい。軽い力でスムーズにしっかり利く。

スパスパ動く変速の速さと軽やかなタッチの操作感が特徴。滑り止め加工が施されるなど作り込みも細かい。

フロントダブルの2×11段変速により、細なギア選択が可能。舗装路から未舗装路 まで無理なく走行できる。 スパスパ動く変速の速さと軽やかなタッチ の操作感が特徴。滑り止め加工が施される など作り込みも細かい。 このグレードは指2本で握るブレーキ。乗 り慣れると1本の方が操作しやすくなるの でアップグレードするのもよい。 通勤やツーリング、グラベルライドなどマルチに遊べる1台を求め ている人に最適です。速さよりも楽しさを重視して、遊びの道具としてMTBを選ぶ。激しく乗るというより、山遊びをラクに楽しみたい、そんな使い方にマッチします。ベースグレードなのでパーツを アップグレードするという楽しみもあります。

こんな人におすすめ

高価ではありますが、「もっと上達したい・速く走りたい」という上 昇志向の強い人におすすめです。軽量で操作性やブレーキ性能 が良いので、自転車がライディングをフォローしてくれます。いい 機材が体力の消耗を抑えることで長い時間乗れるようになり、上 達に結びつく……予算があれば選んで間違いなしです。

 

MERIDA BIG.NINE 500
価格:17万500円(税込)
フレーム素材:アルミ
おもなコンポーネント:SHIMANO DEORE

アルミフレームはカーボンほど軽量ではないものの、一点集中の衝撃に弱いカーボンと比べて強度が高いため、安心感があり気軽に使えます。フレームの硬さはありますがそれがダイレクト感にもつながります。デオーレのコンポーネントは、操作性の機敏さや軽さなどは上位グレードに劣るものの、基本的なテクノロジーは受け継いでいるので、はじめての1台として不満なく使えるはずです。

このグレードは指2本で握るブレーキ。乗り慣れると1本の方が操作しやすくなるのでアップグレードするのもよい。

フロントダブルの2×11段変速により、細かなギア選択が可能。舗装路から未舗装路まで無理なく走行できる。

こんな人におすすめ

通勤やツーリング、グラベルライドなどマルチに遊べる1台を求めている人に最適です。速さよりも楽しさを重視して、遊びの道具としてMTBを選ぶ。激しく乗るというより、山遊びをラクに楽しみたい、そんな使い方にマッチします。ベースグレードなのでパーツをアップグレードするという楽しみもあります。

取材協力

タスサイクル
店長:福田さん

遊び方やテクニックのレクチャーからバイク選び&メンテナンス、カスタムについてのノウハウまで、MTBのことならなんでもおまかせ。マウンテンバイカーにとっての頼もしいサポーターです。

TAS CYCLE

茨城県つくば市東新井38-6
tel 029-896-8253
営業時間:
13:00~20:00(月〜土)
13:00〜19:00(日・祝)
定休日:不定休(ホームページカレンダーにて確認)
https://cycle.taspark.com/
 
問(SHIMANOコンポーネント):シマノ自転車お客様相談窓口 tel 0570-031961 https://bike.shimano.com/
問(MERIDA BIG.NINEシリーズ):メリダジャパン https://www.merida.jp/

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