自転車を趣味にしたら、いずれは辿り着くカスタムへの道。カラーコーディネイトや機能の向上など、その手法は無限大。前回に引き続き、今回もカスタムの話をちょっとばかり……。
カスタムの基礎知識 PART2 ハンドルのはなし
自転車に対するハンドルの役割はとても重要。機能面からみれば、前輪を操舵するための単なる棒っきれでしかありませんが、このハンドルの形状やサイズによって乗車ポジションが大きく左右されるのですから、見た目の好みだけで交換できるような代物ではありません。
そもそもロードバイクやMTB、シティサイクルなど、自転車の方向性によって異なった形状のハンドルがセットされているのも、それぞれ適した乗車ポジションを作ることで初めてその自転車本来の性能が発揮できるから。
では、元々装着されている形状と異なるハンドルに交換するのは間違いなのか?ここがカスタムの奥深いところ。あえてタブーに挑戦するのもカスタムの醍醐味のひとつです。
ただし、走行性に支障をきたすようなカスタムはNGなので、相応のノウハウは必要になってきます。まずはハンドルにどんな形状のものがあるのか、簡単におさらいしておきましょう。
◎フラットバー
上下方向に曲がりのないストレートな形状のハンドルバー。クロスバイクやMTB(マウンテンバイク)に多くセットされる。
◎ブルホーンバー
握る部分が前に突き出た牛の角のような形状。タイムトライアル競技やトライアスロン競技などに使用するケースもある。
◎ドロップバー
ハンドルの両端が下方向にラウンドした形状。主にロードバイクに使用され、複数の場所を握ることができるタイプ。
◎プロムナードバー
シティサイクルなどに多く見られるタイプで、両端の握る部分が後方に大きく曲がり、なおかつ上方にオフセットした形状。
◎ライザーバー
両端の握る部分が上方にオフセットした形状。多くはクロスバイクやMTBに装着されるが、街乗りピストでも人気。
ハンドル形状によるポジションの違い
自転車の乗車ポジションはハンドルの形状によって異なります。ゆえにカスタムを前提に考えるのであれば、各々のハンドルが作るポジションのイメージをきちんと把握しておくことが必要。
高速走行を重視した前傾姿勢、ゆったりとリラックスできる姿勢など、目的に見合ったポジションを作るハンドルを選ばなければ、そのカスタムは破綻します。
またドロップハンドルひとつをとっても、その幅や曲げ方の大きさを含めて、形状やサイズは多種多様。大まかなイメージがつかめたら、あとはショップのスタッフに相談を!
◎ドロップバーの場合
大きく分けると3つのポジションを作れるドロップハンドル。いわゆる「上ハン」と呼ばれる、ステムにクランプされる左右の部分。ここを握ればリラックスできるポジションが作れます。
次に握ったままブレーキ操作(マルチコントロールレバーの場合は変速操作も)が行える「ブラケット」部分。ここがポジションの基準となるオールマイティな姿勢を作る場所です。
そして「下ハン」と呼ばれる、ハンドルが曲がった先を使う部分。ここは最も力が入る場所である上、空気抵抗が少ない前傾姿勢が作れるため、競技では多用されます。
◎プロムナードバーの場合
シティサイクル(いわゆるママチャリ系)に多く見られるプロムナードハンドルは、体が前傾しないアップライトなポジションが前提。買い物などのデイリーユースをはじめ、低速でゆったりとクルージングを楽しむのに最適です。
必ずしもシティサイクルのためだけのハンドルではなく、ミキスト車をはじめとするスチールフレームのクラシカルなロードバイクに使用するのも、カスタムメニュー的には大アリ。ただし、お尻にかかる体重の割合が増加するため、クッション性に優れたサドルに交換するなど、連鎖的な工夫が必要になる場面も。
◎フラットバー/ライザーバーの場合
ドロップハンドルと比べて幅が広めのフラットハンドルやライザーハンドルは操舵角も大きく、中低速域での操作性にアドバンテージがあります。またライズ(握る部分が立ち上がった量の大きさ)やスイープ(握る部分が体側に絞り込まれる角度)の違いで好みのポジションに近づけることも可能。MTBのようなオフロード走行を前提とした乗り方や、市街地走行がメインの人に適しています。
カスタムに欠かせないハンドルのクランプ径
ハンドルを好みのアイテムに交換することは比較的容易です。
しかし、いま乗っている自転車にすべてのハンドルが取り付けられるワケではありません。ハンドルは自転車のステムに取り付けられているため、このステムに固定する部分の径が合致していなくては、そもそも装着ができません。
では、自転車のハンドルにはどれだけクランプ径の種類が存在するのでしょうか?
現在、一般に流通しているのは「25.4mm」とオーバーサイズと呼ばれる「31.8mm」の2種類。一部、BMX用ハンドルに使用する「22.2mm」やイタリアン規格のドロップハンドルに見られる「26.0mm」、MTB用ハンドルの最新規格である「35.0mm」なども存在しますが、それらを含めても5種類程度で、それほど複雑ではありません。
ハンドルを購入&交換する際には、元々装着されていたハンドルのクランプ径をノギスなどであらかじめ計測しておくことをオススメします。
◎ハンドルのクランプ径
・22.2mm 主にBMX用のスチール製ハンドルに採用されるサイズ
・25.4mm ロードバイク、MTBを問わずかつて主流だったサイズ
・26.0mm 一部、イタリアン規格のドロップハンドル用のサイズ
・31.8mm 「オーバーサイズ」と呼ばれるスポーツ車の主流サイズ
・35.0mm MTB用のハンドルに採用される最新規格の極太サイズ
公道はハンドル幅60cm以下の自転車しか走れない?
みなさんは道路交通法により自転車のハンドル幅が60cm以下に定められていることをご存じですか?ですがこれ、厳密にはちょっと違います。
記載されている内容は「歩道を走ることのできる普通自転車は長さ190cm以下、幅60cm以下とする」であり、公道すべての話ではありません。あくまで自転車で走行できる歩道内でのはなし。
また、細かいことをいえば「幅60cm以下」であって「ハンドルが60cm以下」ではないため、エンドキャップ分などを考慮するならば当然、ハンドル自体の幅はそれ以下になります。
ともあれ、自転車は車道を走るのが前提ですから、その車道であればMTB用に見られる80cm幅を超えたハンドルでもOKということ。
もちろん、極端に幅の広いハンドルや、逆に短いハンドルで、安全かつスムーズな操作は行えません。カスタムするにしても“常識の範囲内”という意識を忘れずに。
ハンドル交換に付随するポジション調整
長さや形状の異なるハンドルに交換すれば当然、乗車ポジションはそれまでと変わります。座面位置からハンドルを握る部分までの距離と高さが変化することによって、上体の傾き方に影響が出るからです。
ただし、人の体の大きさは千差万別。身長、手の長さ、足の長さがすべて合致するような人は滅多にいません。
それなのに、自転車のサイズやハンドルの形状は、1モデルに対して多くても数種類程度。これではベストなポジションにセットアップすることは到底できません。
つまり、ハンドルまわりのカスタムを行う場合、ハンドルの交換だけでは不十分、ということになります。
では、具体的になにをすればよいのか?まずはハンドルの取り付け角度を調整します。
ただし、これはあくまで微調整の範囲なので、大きな変化は望めません。コラムスペーサーの枚数を変えたり、ステムを交換したりして距離や高さを調整していきましょう。
◎ハンドルの取り付け角度を調整する
特にドロップハンドルでは「送り」「しゃくり」などの表現が使われますが、ハンドルの取り付け角度を変えることで、身体とハンドルの握る部分までの距離を調整できます。
ただし、これはあくまで微調整の範囲で。一部のハンドルには、上下を入れ替えて装着できるようなアイテムも存在しますが、基本的には基準となる取り付け角度から数度程度に抑えるようにします。
◎コラムスペーサーの入れ換えでハンドルの高さを調整する
近年、スポーツ車で標準的となっているアヘッドタイプのステムの場合、コラムスペーサーの位置や枚数を変えることによって、ハンドルの高さを調整することが可能です。
スレッドタイプの場合、ステム上部にあるボルトを緩めることで、ステム自体を上下に動かすことができます。いずれもコラムの長さ、ステムの長さによって調整範囲に限りがあります。
◎ステムの交換でハンドルまでの距離を調整する
角度調整、コラムスペーサーでまかなえない場合はステム自体の交換が必要です。
ステムはさまざまな長さ、角度のアイテムがラインアップされています。
交換自体も比較的容易であるため「ポタリングのときは短めで上向きのステムを」「がっつり走るときは長めでやや下向きのステムを」といった具合に、その日のシチュエーションに合わせて使い分けるのも◎。
イラスト:田中 斉 文:トライジェット
『自転車日和』vol.32(2014年4月発売)より抜粋