温故知新 徒然MTB談話室 第8回

前回ではヤマハのEバイクで実際に里山を走り、なにやら面倒くさいこじらせ方をしていたご両名。今回はリリースされて間もないスラムのXX1 AXS(アクセス)をチェック、テストバイクの試乗を終えるといつもの調子でトークタイムに突入しました。果たしてどんなこじらせ方をしていくのか、乞うご期待!

Profile

中沢 清(写真右)
CSナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB 日和』ではインプレッションライダーも担当。
今泉 紀夫(写真左)
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。

 
今泉: 自分たちは道具を使ってフィールドで遊んでいますよね。そういう意味ではAXSも道具なわけで。

たまたま今回、無線のシステムということで話題になっていますけど、電動変速としてはシマノのDi2もありまして。

先日、イベントレースでDi2を取り付けたバイクで走ったんですけど、抑揚のあるコースだったこともあってか、意外にも楽しめました。
 
中沢:これまではDi2があって、今度はAXSが登場。どこがどれだけ違うのか、興味はありましたね。

でも、自分的には乗っちゃうと無線、有線はあまり関係ないんですよ、すごく乱暴な言い方しちゃうと。
 
今泉:そう、関係ないですよ。
 
中沢:そこは動きがいいかどうかだけの問題で。
 
今泉:つまりシステムなんですよ。うちのみたいにケーブルを内蔵できないフレームだと有線の場合、ルーティングが乱雑になったり、引っ掛けたらどうするとかいう話になるかもしれないし、そういう意味では無線の方がいいんだけど。
 
中沢:確かにメリットは多いですよね。取り付けに手間が掛からないという点では無線がいいんだけど、最終的にライダーが乗ってみてどう感じるか。そこじゃないかと。
 
今泉:それはメカニカルでも変わりませんよ。

管理面でDi2だとPCと繋いで情報のやりとりをしますけど、従来の機械式をワイヤーコントロールと言わせて頂くなら、そのワイヤーの微調整を上手くできるかどうか、そういうことと同じ。

結局は機械部の性能。ライダーにとっての使い勝手のよさが踏襲されていれば電動であれなんであれ、ねぇ。
 
中沢:今回、AXS搭載車に乗ってみて思ったのは、頭で思ったときのタイミングで動くところは本当にすごいな、と。これ、機械式でできないですかね?
 
今泉:どうなんだろ。ワイヤーコントロールだとレバーを押したときの機械の連携にロスがあるように感じちゃうじゃないですか、入力から変速機が反応するまでの間に。

電動はその加減が曖昧になっているから、反応がいいように感じるのかも。レバーを押す指の力に対して従来のような感覚がないので、スムーズに動いているような気がする?
 
中沢:例えば、調子が悪くなってくるとワイヤーだとその加減がわかりますよね。それで微調整したり、指先の押し込みや足の踏み込み具合なんかでごまかしたりして走り切ったりする。

山の中ではそういうことの必要性ってある気がするんです。だからAXSはサーキットで使う機材なのかな、とか。

変速のコントロールにケーブルを介さないXX1AXSのシステムに興味津々のご両人。50代&60代のマウンテンバイカーはこの最新機材をどう捉える?
photo by Suzuki Hideyuki

今泉:管理されたもの、クルマでいえばF1とかでしょうか。レースの世界は一定の管理の中にあって、一般のマウンテンバイカーがこれで山に入っていったときどうなるのか、その疑問はありますね。
 
中沢:ワイヤーコントロールだと現地である程度調整することもできるけど、バッテリーが切れたらさすがにきびしい。
 
今泉:機械部、つまりディレイラーは最終形としてすでにまとまっていて、その上でコントロールをどうするかというだけのことです。バッテリーを気にせず乗れていたのはワイヤーコントロールのいいところ。
 
中沢:昔、ラピッドが出たとき、山サイの人は意地でもサムシフターを使い続けるって感じだったじゃないですか(笑)、 カチカチと決まるはずのインデックスがいまいちのときだってフリーに調整できるし。新しい道具って、山に入る上では不安要素がありますからね。
 
今泉:そのフリクションのレバーもネジが弛んでばらけて飛んじゃったり(笑)。

そんなときにどうやって無事に帰ってくるかなんていう話もあったけど、その要領自体は時代時代で変わってきますから。

だから充電を忘れないようにするとか、そういうことなんでしょうね。携帯電話なんかと同じで。
 
中沢:自分はシングルスピードにも乗るんですけど、それって構造がすごくシンプルで機械を余計に動かす必要がないからなんです。

変な話に聞こえるかもしれませんけど、AXSに乗ってみてそれと同じような感じがしたんです。ギアが頭で思った通りにバンバン動いて。

これまでみたいに登りの変速時に踏み込む足の力を少し抜いて、そのタイミングに合わせてギアを変えようとかあまり考えず、こぐことに対してシンプルに向き合える感じがシングルスピードに通じるんです。
 
今泉:コンプリートバイクとしていまいちばん正しいMTBの形はリアサス付きで、フロントシングル&ワイドカセット、そして気持ちのいい変速システムがあること。

でも、それってすごく力を使うものなんですよ。サスペンションでトラクションが掛かるし、シンプルなギアって登れるし、登らされちゃう。

道具を使いこなせるだけの体力をつけなさいっていわちゃうかもしれないけど。だけど、使いこなす感じは楽しい。
 
中沢:そう、乗ってみて楽しい。テンションが上がります。操作が複雑なようで意外にもシンプルだから。
 
今泉:その分、MTB任せで走っちゃう感じもあって。
 
中沢:機材のおもしろがり方が変わってきているのかもしれません。かつては使う人の加減で使いこなせる云々があったけど、いまは余計なことを考えずに走ることに集中できるように作られているみたいで。
 
今泉:自転車という道具を使いながら山に対してどういう関わり方をするか。道具に選べる幅が広がって、道具の使いこなし方自体が変わってきているのかもしれません。Eバイクもそのひとつでしょうか。自分は山、山と言い過ぎていたのかも。
 
中沢:お、硬い人からやわらかい人になった(笑)。
 
今泉:基準は変わりませんけどね(笑)。
 
中沢:メーカーはよりシンプルに、だれもが一定の基準で楽しめるものを作らなくてはなりませんからね。
 
今泉:あまりメカトロに頼りすぎるのは個人的に、古い人間としては抵抗がありますけど。
 
中沢:自分もそう。心配性なのでひとりで山を走るときはなるべく不安の少ないバイクで出かけちゃうんです。シングルスピードとか鉄フレームでフロントダブルギアのバイクとか。歯数だってそんなに細かくなくていい、トラブルが少ないから。

で、人と一緒に走るときはカーボンフレームのこってりしたやつとかで。なにかあってもまわりが助けてくれるから(笑)。
 
今泉:山の深さにもよりますよね。それだけ山の遊び方に合わせて道具が変えられる、いい時代です。自分はそんなミーハーな男なんですよ、本当は。

photo by Suzuki Hideyuki

中沢:どのバイクに乗るかは個人の自由だし、それぞれの諸事情はあるんだろうけど、ハードテイルだけにしか乗らないとか、シングルスピードでOKとかではなく、最新のバイクに乗る機会があれば是非、触れてみてもらいたいですね。

そこからアナログチックなものに戻ってきたとき、そのよさを再確認できますし。そういうところも自転車のおもしろさだし、最終的に最新のものであろうがアナログなものであろうが、使いこなし方が重要なので。
 
今泉:最新技術を駆使したバイクにはそれまでサンプリングしてきたものが詰まっている、そんな気がします。だから乗る人の感性に訴えかける、まとまりのいいものが生まれてくるんです。
 
中沢:ストレスフリーを目指してつくられた最新機材なのに、なぜかアナログチックなことを考えさせられる今回の試乗。
 
今泉:いい意味で(笑)。
 
中沢:レースで勝つために効率性を高める必要はあるのかもしれないけど、山で使う道具としてみるならいろいろと考える必要はありますね。
 
今泉:守られた環境の中でおこなわれるレースではなく山で使うのならば、機材まかせで走りに集中するわけにはいかないですから。その違いを我々を含めたサプライヤーがきちんとユーザーに説明していかなくてはなりません!
 
中沢:機材の恩恵を受けるのはいいけれど、受けっぱなしではなく、どう活かすかが大事。

なぜなら我々は自然の山に入っていくのだから。最後は自分の身を自分で守らなくてはならない。シングルシピードでもチェーンが切れたらダメだけど(笑)。
 
今泉:山に入るのなら、チェーンをつなぐスキルは身につけろよ、と。
 

photo by Suzuki Hideyuki

※ 1 ラピッド ラピッドファイヤーの略。シマノがMTB向けに開発したサムシフターに代わる2本レバーのシフター(現在、我々が使用しているものは大半がこのタイプ)。シマノの商標だが、他メーカーのものを含め、「ラピッド」と呼ばれることが多い。

※ 2 サムシフター 80 年代まで主流だったフラットハンドル向けの変速レバー。1本のレバーを左右に回転させることにより変速する。

※ 3 インデックス 変速機の位置決め機構。ちなみに「SIS」はシマノ・インデックス・システムの略で、50代のお兄さんたちに馴染みの深いポジトロンシステムの進化形。

※4 フリクション 位置決め機構がなく無段階に動く変速システム。レバーの引き具合によってディレイラーの位置決めを乗り手が任意におこなう。

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.38(2019年5月発売)より抜粋

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