世界遺産をぎゅぎゅっと満喫!和歌山県新宮市 ぶらり自転車散歩

鉄道などの公共交通機関を利用すれば、自転車旅の可能性は一気に広がります。折りたたみ自転車ならその旅はもっと気軽なものに。まだ見ぬ風景を求めて、ちょっと遠くまで出かけてみませんか?

写真:村瀬達矢
イラスト:田中斉
モデル:柴田彩花

ヘルメット:CROSS SECTION SCIP URBAN HELMET(5940円)

問:ダートフリーク
https://cross-section.jp/

旅の相棒

Pacific Cycles CarryMe
折りたためば床面積A4サイズに収まる縦長形態にチェンジ。わずか8インチの極小径車とは思えない安定した走行性能を披露する輪行旅のベストパートナー。

日本の魅力を再発見する熊野新宮を巡る自転車散歩

インバウンド需要が最高潮に達している昨今の日本。海外から訪れる観光客の急増ぶりが示すように、彼らが日本の文化に興味を抱いていることは明らかです。日本で暮らす私たちが訪れたことのないような場所でも、外国人観光客の姿がみられることも少なくないのだとか。

海外旅行に出かけるのもいいけれど、もう一度この国の魅力について思いを馳せてみませんか?

そんな日本の魅力を再発見するために有効なツールといえば自転車。クルマ移動のように渋滞などで無駄に時間を費やす心配はありませんし、ルートもフレキシブルに組み立てることができます。

公共の交通機関を利用した「輪行」という技を駆使すれば、体力や距離の問題もすべて解決できてしまうのですから。この輪行に適した折りたたみ自転車やコンパクトにまとめられる小径車を所有しているのなら、旅行に活用しない手はありません。

そこで今回、やってきたのは和歌山県新宮市。複数の世界遺産が点在するこのエリアで自転車散歩を満喫しちゃいます。

JR 新宮駅を起点として、サイクルトレインにてJR 紀伊佐野駅まで車窓を眺めながら南下。熊野古道を経由しつつ、太平洋岸自転車道を北上して市内の世界遺産ほか、新宮の名所を巡る十数キロを走るルート。

新宮市観光協会 熊野新宮観光案内センター

今回の旅の出発点、JR新宮駅の目の前にある「新宮市観光協会 熊野新宮観光案内センター」。周辺の観光案内や、モデルコースを紹介するパンフレットを入手できる。BESVをはじめとするレンタサイクルが充実しているので、自転車を所有していない友人との旅行も安心です!

新宮市徐福2-1-11
☎0735-22-2840
営業時間:
レンタサイクル:普通自転車1日1000円、
Eバイク1日3000円・3時間1500円ほか

サイクルトレインを利用して楽チン&楽しい自転車散歩を

今回の自転車散歩、起点となったのはJR紀勢本線の新宮駅ですが、いきなり走り始めるわけではありません。実はこちらの路線では、自転車を輪行袋に包むことなく、そのまま列車の車内に持ち込めるサイクルトレインが運行されています。であれば、これを使用しない手はありませんよね?

JR紀伊佐野駅までの往路は太平洋を眺めながらサイクルトレインに揺られて移動。復路のみペダルを回しながら観光名所を周遊し、サイクリングを楽しむ……そんなプランだって立てられてしまうのです。絶景が広がる車窓を満喫すること約10分、到着したのはJR紀伊佐野駅。こちらで下車したら、いよいよ自転車散歩のスタートです。

JR紀勢本線(きのくに線)の新宮駅からスタート

出発点はJR紀勢本線(きのくに線)の新宮駅。サイクルトレインを利用して2駅先の紀伊佐野駅までワープします。

サイクルトレインの詳細はこちら

サイクルトレインの車内では、ゴムや紐を使い自転車を柱に固定するべし。海沿いの車窓を堪能しながら列車に揺られると、旅の気分は一気に上昇。

 

車窓からの絶景を堪能したらJR 紀伊佐野駅で降車。ここから自転車散歩がスタートします!

雄大な景色に出会い、高まる旅へのワクワク感

走り出すこと数分、やってきたのは孔島・鈴島(くしま・すずしま)。

長い年月をかけた海の浸食によって作られる奇岩怪石の造形美を眺めながら、太平洋の眺望を堪能します。たっぷりと潮風を浴びた後は国道42号線を北上。しばらくすると「世界遺産 熊野古道」の標識が目に飛び込んできます。ここが今回のプランに組み込まれたひとつめの世界遺産。多くの参詣者が歩いたとされる熊野参詣道へ向かいます。

孔島・鈴島 (くしま・すずしま)

奇岩怪石が連なる海岸線で、ひときわ大きくそびえる孔島と鈴島。南紀熊野ジオパークを構成するジオサイトに認定され、孔島には新宮市の花であるハマユウほか、さまざまな植物群生が観察できます。

 

一歩一歩、踏みしめながら高野坂の石畳で古道を感じる

和歌山県の観光名所といえば、熊野三山を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?

熊野三山とは、熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)、熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)、熊野那智大社(くまのなちたいしゃ)の3つの神社の総称で、和歌山県の南東部にそれぞれ20〜40キロ離れた距離に位置しています。

それらを互いに結ぶ道が熊野古道(熊野参詣道)中辺路であり、平安時代から鎌倉時代に繰り返された熊野御幸では、中辺路が公式参詣道(御幸道)だったとのこと。

高野坂登り口(広角)に自転車をデポして徒歩にて向かったのは、熊野速玉大社から熊野那智大社へ巡拝する人たちも通った中辺路ルートの一部で、苔むした石畳が連なる美しい空間はまるで異世界に迷い込んだかのよう。

今回は王子ヶ浜を一望できるポイントまで登り、自転車散歩を再開することにしました。

熊野古道高野坂 (こうやざか)

国道からちょっと外れて、どこか懐かしさを感じさせる町並みを抜けてたら、そこは世界遺産として知られる熊野古道。高野坂登り口で自転車を休憩させて、徒歩にて紀伊山地の参詣道を目指します。

熊野古道へ向かう途中で王子ヶ浜にちょっと寄り道。目の前には海が埋め尽くす広大な景色が広がっていました。せっかくなので自転車にも拝ませてあげてみたり(笑)

歩き始めてすぐに遭遇したちょっとうれしいハプニング。ひとつめの橋の上、パンダくろしお号が目の前を走り抜けていきました。

熊野古道の中辺路を象徴する苔むした石畳。今回は王子ヶ浜を一望できるポイントまで登ったところでUターン。自転車を迎えに戻ります。

旅に欠かせないご当地グルメのエネルギー補給

お待たせしていた自転車と合流したら、右手にどこまでも青い海が広がる太平洋岸自転車道を進みます。美しい景色に後ろ髪を引かれつつランチタイムにGO!

ナショナルサイクルルートに指定されている太平洋岸自転車道(千葉県銚子市から和歌山県和歌山市までを結ぶ1487kmに渡る自転車道)を走りながら、市街地方面へ。

 

熊野ラーメン 楽

新宮には、なれずしやめはりずしなどのソウルフードも多数ありますが、この日のランチはこちらのラーメンに決定。熊野牛の骨と各種乾物で炊いたオリジナルのスープには、コラーゲンとカルシウムがたっぷり。クリーミーなのにくどさを感じさせない、要チェックのご当地グルメです。

熊野ラーメン 楽
新宮市五新7-26
☎0735-29-7867
営業時間:11:00 ~ 14:00、17:00 ~ 21:00
定休日:火曜日

市街地に点在するスポットも自転車だったら余裕で周遊

ランチタイムを終えた午後の部は、新宮の市街地に点在する観光名所を散策することに。熊野速玉大社、阿須賀神社をはじめとする世界遺産、新宮の歴史的繁栄を伝える城跡、旧西村家住宅などの文化的価値が認められた建築物……、新宮にはまだまだ自転車散歩で巡っておきたいスポットが目白押しなのです。

ちなみに今回、訪れた場所の中で最も印象的だったのが神倉神社。天ノ磐盾(あまのいわたて)という険しい崖の上にある神倉神社にはご神体のゴトビキ岩が祀られていますが、お参りするためには五百数十段におよぶ急峻な石段を登り切らなければなりません。

この石段、見た目のみならず体力的にもかなりのインパクト。一度、登り始めたら後ろを振り向くことなかれ。もちろん、ご神体まで辿り着いたときの達成感はひとしおです。

 

神倉神社

熊野三山の元宮。天ノ磐盾(あまのいわたて)という崖の上にご神体のゴトビキ岩があり、新宮市街地を見渡せるスポットも。538段といわれる自然石の石段に圧倒されること間違いなし。往復に30 ~ 40分要します。

神倉神社
新宮市神倉1-13-8
☎0735-22-2533(熊野速玉大社)

 

香梅堂

新宮市の老舗和菓子店へ立ち寄っておやつをゲット。名物の鈴焼はふんわり食感と優しい甘さで、ひとくち食べたら止まりません。撮影時も鈴焼目当てに多くの方が訪れていました。

香梅堂
新宮市大橋通3-3-4
☎0735-22-3121
http://www.suzuyaki.jp/

 

熊野速玉大社

世界遺産に登録される熊野三山のひとつ。熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)を主祭神とする。参道には樹齢千年というナギの大樹がそびえ立ち、その姿を拝むだけでも神聖な気分が味わえます。

熊野速玉大社
新宮市新宮1
☎0735-22-2533
https://kumanohayatama.jp/

 

川原家横丁

江戸時代から昭和にかけて熊野川の河川敷に並んでいた簡易商店を再現したエリア。地元の特産品をお土産として購入してみては?

川原家横丁
新宮市船町1-2-1
☎0735-23-3333
(新宮市役所商工観光課)
営業時間・定休日:店舗により異なる

昭和レトロな雰囲気に包まれた仲之町商店街も立ち寄りたいスポットのひとつ。約370メートル続くアーケードをぶらり押し歩く。

 

新宮城跡

熊野川河口の南岸に位置する小高い丹鶴山に築かれた新宮城。その本丸跡まで登り切ると熊野川を眼下に臨む絶景がお出迎え。

新宮城跡(丹鶴城跡)は新宮の歴史的繁栄を伝える城址公園で、城郭には船着場が設けられていました。二ノ丸の算木積みほか技術の粋を結集した石垣からも、当時の国力をうかがい知ることができます。

新宮城跡
新宮市丹鶴3丁目7688-2
☎0735-22-2840(新宮市観光協会)

 

旧西村家住宅

文化学院の創設者である西村伊作氏が設計した自宅。建物は記念館として公開され、油絵や陶器など氏の作品が展示されています。

旧西村家住宅
新宮市丹鶴1-2-14
☎0735-22-6570
営業時間:9:00 〜17:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)
入館料:大人220円

 

旧チャップマン邸

旧西村家住宅と並び重要文化財となる旧チャップマン邸も西村伊作氏が設計した貴重な建築物。施設内の見学、ワーケーション施設としての利用も可能。

旧チャップマン邸
新宮市丹鶴1-3-2
☎0735-23-2311
営業時間:9:00 〜17:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)

 

阿須賀神社

熊野川河口ちかくの蓬莱山に鎮座する阿須賀神社は2016年、世界遺産に追加登録された新宮の観光名所のひとつ。熊野信仰の重要な王子社とされています。

阿須賀神社
新宮市阿須賀1-2-25
☎0735-22-3986

 

徐福公園

不老の池にある石柱には、徐福の重臣七人が有した七つの徳「和」「仁」「慈」「勇」「財」「調」「壮」が刻まれ、七匹の鯉が泳ぐ。

徐福公園は「サイクルステーション」に登録されているため、園内にはバイクラックが設置され、空気入れや修理工具の貸し出しサービスも利用できます。写真は和歌山県のPRキャラクター「きいちゃん」

秦の始皇帝の命により不老不死の霊薬を求めて渡来した徐福。その墓を中心として、売店や色鮮やかな楼門を設置するなど、中国風に整備されたJR新宮駅からほど近い公園。

徐福公園
新宮市徐福1-4-24
☎0735-21-7672
開園時間:8:30 ~ 17:00
http://www.jofuku.or.jp/

自転車を活用すれば、サイクリングを兼ねて効率よく周遊できる熊野新宮の観光名所。宿泊プランを立てて、足の向くまま気の向くまま、のんびりと巡ってみるのもまた一興。愛車と一緒にでかけてみませんか?

 

『折りたたみ自転車&スモールバイクカタログ2024) (2024年2月発売)より抜粋

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