写真と文:星野哲哉
今回行ってきたのはココ!!
フェリーで行ってきました
今回の目的地は、静岡県の清水。東海道を通らず、わざわざ遠回りをして、伊豆半島からフェリーで向かうというコースを設定。フェリー乗り場がある土肥港までは、伊豆急行の河津駅から、天城峠を越えて国道414号と国道136号を約50km走った。清水に着いてからは、日本平を登ってサッカー観戦。終わった後は静岡駅まで走って、新幹線で帰ってきました。
天城越えからフェリーまで
静岡サイクリングを満喫!
自転車の行動範囲を広げてくれる「輪行」。自分でも電車での輪行はかなりの数をこなしていると思うが、船となるとあまり機会がない。
そもそも船で行くということは、船でなければ行けない「島」に行くということがほとんどだろう。
島生活をしていない者としては、それだけで“旅”っていう感じがしてきて、自転車+船(フェリー)という組み合わせはテンションが上がるのだ。
これまで、自転車+船で行ったことがあるのは、「佐渡島」「淡路島」といった島々。島を自転車で走ることが目的だった。
しかし、地図を広げてよーく見てみると、船の航路は島だけでなく、湾にもあることがわかる。近いところでは、三浦半島と房総半島を結ぶ東京湾フェリーというものがある。
陸地だとぐるーっと回らなければならないところを、海を渡ってショートカットするのだ。
8月の半ばに、静岡県の清水へサッカーを観に行ってきた。応援する浦和レッズが、前の試合で4―0と大勝したので、清水でのアウェイ戦にも行きたくなってしまったのだ。
当然、いつものように自転車で行った。その行程に、伊豆半島の土肥と清水を結ぶ「駿河湾フェリー」を組み込むという計画を立てた。
土肥港へ行くには、もっとも近い駅は修善寺駅だが、そこからではあっという間に着いてしまうので面白くない。では、「三島から走ろうか。」と思うが、それもなんとなくパンチに欠ける(どこが?)。
色々と思案した結果、伊豆半島の南部から、天城峠を越えて行くコースに決まった。
下田から西に海岸線沿いを走るコースも候補にあったが、少し前にテレビで天城越えをやっていたのを思い出し、そこで取り上げられていた、旧天城隧道に行ってみたいというのが決め手になった。
当日、家の最寄り駅から上野東京ラインで熱海まで行き、伊豆急行に乗り換えて河津駅で降りる。
駅前には、伊豆の踊子の像がある。恥ずかしながら、作品を読んだことがないので、この地がどのように描かれているのかはわからないが、この周辺が舞台であったことだけはわかる。
自転車を組み立てて、天城越えへ出発。踊り子には会えないだろうが、峠を越えた先の海を目指すことにする。
国道414号、別名下田街道を登っていくと、河津七滝ループ橋にさしかかる。見た目で圧倒されるこのループ橋。
高低差45mのところを、2回転させて登っているのだ。渦を巻いているため、緩めの勾配で登ることができるが、この橋ができる前、それこそ伊豆の踊子が書かれた頃はどのようにして登っていたのだろうと考えると、この地が難所と言われていたことを実感する。
ループ橋を渡り終えると、これから本番だと言わんばかりに、勾配がきつくなってきた。
一週間後にヒルクライムレースを控えていたので、良い練習になるはずだが、きついものはきついので、途中にあった「旅の駅 吉丸」で休憩がてら早めの昼食を摂ることにした。
注文したのは「ワサビとろろ丼」。天城といったらワサビでしょ! ということで頼んでみた。シンプルだけどなかなか旨い。とろろで精をつけて、残りの登りも頑張ることにする。
ところどころ10%を超えるような勾配の中なんとか登り、旧道への分岐にさしかかると、「落石のため通行止め」の看板が!
トンネル(天城隧道)までは行けるみたいだが、その先を通り抜けられないようだ。
トンネルまで行って引き返すこともできるけど、フェリーの時間がギリギリになっても困るので、泣く泣く新道のトンネルを通ることにした。
トンネルを越えたら、国道136号の交差点まで下りの連続。登りがつらかった分気持ちが良い。国道136号に入ったら、また登りだ。
今度は舩原峠(舩原トンネル)を目指す。天城峠に比べればきつくない。
トンネルを抜けたら一気に下って、あっという間に土肥港に到着した。
フェリーの出航時間まで時間があったので、海の幸を堪能することにした。注文したのは「刺身定食」。ありきたりだけど、新鮮で美味しい。
いよいよフェリーに乗船。乗船券を購入して、自転車を載せる列に並ぶ。たったこれだけでも、非日常感があってたまらない。
さらに、自転車を運び入れ、手すりに立てかけ、乗員の方がロープで固定してくれたところで、テンションは最高潮だ(変?)。旅っていう感じがしてきません?
ちなみにこの航路は、県道223号という、法律上は道路なのだ。しかも、223=ふじさん。
フェリーからは、富士山がきれいに見える。海から見る富士山っていうのも良いもんですね。
約1時間で清水港に到着。いわゆる輪行ではないので、そのまま自転車で走り出せる。
固定していたロープをはずしてもらい、自動車の後からフェリーを降りる。
試合まではあと2時間。少々時間がある。スタジアムを越えて、日本平を登ってみることにした。
日本平から、さっき渡ってきた駿河湾と富士山を一望できる。しばし景色を堪能し、来た道を降りてスタジアムでサッカー観戦。
試合は、点を取られては取り返しての繰り返しで、3‐3の引き分け。
今シーズンは勝ちきれない試合が続くが、このような自転車旅をするきっかけを与えてくれていることに感謝し、家路についた。
Profile 星野哲哉
『自転車日和』vol.49より抜粋