温故知新 徒然MTB談話室 第13回

前回、テーマとして取り上げた「MTBのサイズについて」。編集部ヨコキの件は宙に浮いたまま話題はそこからさらに発展、ディープな方向へ加速中です。今回はスペシャルゲストをお招きして、3密を避けた換気良好な場所からお届けします。

Profile

中沢 清
CS ナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB 日和』ではインプレッションライダーも担当。
https://nakazawagym.amebaownd.com/

今泉紀夫
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。
http://www.monkey-magic.com/

今泉仁
ロッキーマウンテンの正規輸入元、A&F 社のセールス を担当。海外レースへの参戦歴を持つ日本のMTBシー ンをけん引するライダーのひとりでもある。モンキーシリー ズのテストライダーとして幼少期より開発に携わる。
https://aandf.co.jp/brands/rocky_mountain_bicycles

中沢:前回、ヨコキ編集長(身長150cm台)のMTB選びについて話をしましたけど、自分はこういう仕事をしているのでいろいろなサイズ、いろいろなサスストロークの車両に乗る機会があるじゃないですか。

で、考えてみたんですよ。自分に合うタイヤサイズのバイクってなんなんだろうなって。29インチにばかり乗っているときもあるし、その日の気分でも違ってきたり。自分の中で流行みたいなものもあるんですけど、振り返るとなんにでも使えるモンキーの出番が多かったりするんです。ちなみにノリさん、このレディメイドの98ST7って、サスのストローク量はどれくらいが適正なんでしたっけ?

今泉(紀):120~160mmですが、実際は140mmくらいが頃合いかと。モンキー自体は本来、オーダーメイドのフレームなので、ジオメトリーの数値がこうというものでもなく、いろいろな方に乗っていただいて、その声を反映させて作ったのがレディメイドの98STなんです。

1998年に作りはじめた頃の98SH、オーダーメイドの26インチはもっとクロカンっぽいスケルトンでした。それ以前の90シリーズまでさかのぼると、ロードやランドナーのエッセンスも入っていたりして。タイヤも26-3/8で走っていましたから。そこからどんどんダートの楽しさを追求していったMTBというカテゴリーができ上がって、モンキーもそれに合わせて深化していきました。

中沢:自分が乗っているこのモデル(98ST7)は27.5インチを前提に作ったものですよね?

今泉(紀):最初は26インチからはじまり、時代に合わせて変えていったものです。いろいろといいフォークが出てくる中、フレームも既存のフォークに合わせて設計するようになっていきました。

中沢: 実は今日の対談に合わせて、自分のモンキーのフォークを150mmから130mmのものに換えてみたんです。150mmのときはコースに持っていったり、下りの長いトレイルを走るときにおもしろかったんですけど、130mmにしたらこぐ楽しさが増して、自分のローカルにある丘陵地帯ではかなり扱いやすくなりました。

そういう作業っていまのバイク、例えばロッキーマウンテンのフルサスだとライド9というシステムがあり、わざわざフォークを換えなくても同じようなことが簡単にできちゃうんですよ。そこで今回は、生まれてからモンキーとともに育ってきて、いまはロッキーマウンテンに乗っているヒロくんをゲストにお迎えしました。

今泉(仁):よろしくお願いします。

中沢:モンキーもロッキーマウンテンも、ローカルのトレイルで遊びながら作られてきたという背景がバイクに反映されています。作り手の遊び方がその時代その時代にトレンドになっている、みたいなところ。興味深かったのはロッキーマウンテンのバイクとしては今年、ハードテイルのグローラーがすごく注目されましたよね。自分も「MTB日和」のインプレで乗ってみて衝撃を受けました。こんなのアリ?って。

今年(2020年)、大ブレイクを果たしたハードテイル仕様のトレイルバイク。最新トレンドを取り入れることでよりハードな下りを意識させるアグレッシブなジオメトリーに。

ROCKY MOUNTAIN GROWLER 40
◉17万8000円(税別) ◉サイズ:SM、MD、LG ◉カラー:ブルー、レッド ◉フレーム素材:アルミ ◉フロントフォーク:SR SUNTOUR RAIDON 34 LOR AIR BOOST(140mmトラベル) ◉変速:1×12S ◉コンポーネント:SHIMANO DEORE ほか ◉ブレーキ:SHIMANO MT410 ◉タイヤ:(F)WTB VIGILANTE(29×2.6)(R)WTB TRAILBOSS( 29×2.6)
問:エイアンドエフ
https://aandf.co.jp/

今泉(仁):2019モデルまではタイヤも27.5プラスで、ジオメトリーはもう少しクロスカントリー寄りのトレイルバイクでした。対する2020モデルは中沢さんが衝撃を受けるくらい、ジオメトリーに大きな変更が加えられました。ヘッドアングルは64度まで寝かし、タイヤも29プラスまで拡大しました。

中沢:シートアングルをすごく立ててきましたね。

今泉(仁):それがいまのフルサスのトレンドに近い形です。シートステイ長もかなり短く設計していたり、他社のモデルも今後はこの流れをくんでくるみたいです。

中沢:以前の下りっぽいバイクはシートアングルが寝ていたためにこぎにくい印象がありました。高さを上げるとサドルが後ろにいってしまって、すぐ足がパンパンになっちゃう感じ。

そんな中、2009年にロッキーマウンテンが出してきたアルチチュードには、ストレートアップジオメトリーというシートアングルを76度まで起こしたシステムが採用されていました。ストローク量が大きなモデルなのにフロントを軽く押さえておけば、登りでも足が下ろしやすい。あの考え方も印象的でした。

今泉(仁):乗ったときのコクピット位置で腿の上げ下ろしが楽になる、ペダリングがしやすくなるということですね。

中沢:その頃のハンドルバーはまだそこまでワイドではなかったよね?

今泉(仁):まだ700mm幅が流行し始めたくらいでしょうか? ダウンヒルだとサム・ヒルがワールドカップで優勝していた頃で、ライダーたちの走り方が変わりはじめたり、ちょうどいまのトレンドのベースが作られた時期だと思います。

中沢:そのあとでしょうか、リーチの話が出るようになったのは。

今泉(紀):古い話になるけど、BMXの設計はBBからヘッドチューブの上までを測るのが普通で、うちはその考え方をMTBに取り入れていったんです。「フロントセンターってどういう考え方?」など、モンキーなりの捉え方で置き換えてみたりして。コクピットスペースというのはフィッシャーが言いはじめた言葉だけど、そういうものを意識してデザインしたのが98シリーズなんですよ。

中沢:MTBならではの考え方ですか? コクピットスペースって。

今泉(紀):ロードなどはスタティックな状態が基本で、MTBみたいにダイナミックな乗り方をしないから。極端に言うと固定ポジションでのペダリングを考えるわけです。そういうことを世の中が徐々に理解して、総合的に変わっていったんだと思います。

特に2000年を越えた辺りからは、いまふたりが話していたようなより煮詰めた機能面、各部品の性能が向上したこともあって、一気に進んだような気がします。サスフォークひとつとっても、最初は沈むだけだったけど。いまは初期のサグをとって伸びる方向を考えたスケルトンの発想があってもいいんだろうな、と個人的には考えています。

中沢:それはどういうこと?

今泉(紀):伸びてくれるサスペンションという考え方です。縮むサスペンションじゃなくて。つぶして乗れる人は長いフォークを入れてもつぶして乗れる。サスペンション自体のスタビリティが上がっているし、エア圧でコントロールもできるから。

中沢:そういうことをモンキーがもっと世界に向けて発信すればよかったんじゃないの?(笑)

今泉(仁):ビックメーカーになっていたかも(笑)

今泉(紀):つまり、スタティックな状態でのスケルトンとダイナミックな状態でのスケルトンはハードテイルの場合、より違うということです。で、そういう考え方ができるようになったのは、(フルサスの)リアサスペンションの進化があったから。

モンキーも決してハードテイルばかりを考えていたわけではなく(※フルサスモンキーの図面を見ながら会話中)、フルサスバイクもメーカーを手本にしながら追いかけてきたので。だからこそ、ハードテイルに関しても中沢さんがほめてくれるような、ブレずにひとつのスタイルでやってこれたわけです。

オーダーフレームを手がけてきたモンキーの30周年記念モデルとして誕生。Tig溶接の27.5仕様でリリースされるレディメイドフレーム。カラーオーダーが可能。

MONKEY 98ST7
◉フレーム価格:15万円(税別) ◉サイズ:410、440mm ◉カラー:カスタム(仕様によりアップチャージあり) ◉フレーム素材:クロモリ ◉推奨フォークトラベル:120 ~ 160mm
問:ワークショップモンキー
TEL 03-3985-5663
http://www.monkey-magic.com/

中沢:モンキーに乗っていると「これを売ろう」ではなくて「これを乗ろう」というコンセプトで作ってきたことがよくわかります。それはグローラーも同じかもしれませんね。作り手が自分たちのフィールドで遊んでいて、結果としてこの形になったんだろうと想像がつきます。じゃあなかったらこの形にはならない。

同じハードテイルでも、モンキーは身体をたくさん動かして乗るのが楽しい。対して、グローラーは動かさない方向で走れちゃう。これってフルサスの発想をハードテイルに落とし込んだイメージ?

今泉(仁):まったくその通りです。フルサスのバイクを持っている方で「2台目としてなにかハードテイルを」という人にはマッチしやすいと思います。車輪の大きさを含めたバイクのボリュームを考えても、フルサスと同じ感覚で違和感なく扱えるはずです。

中沢:日本でもそれぞれ走るフィールドが違うので、グローラーのようなハードテイルの登場で、遊び方の幅がさらに広がるかもしれませんね。自分が普段走っているフィールドだと、ちょっとフォークを短めにしたいまの状態のモンキーがこぎやすくて、ヒラヒラ走れて一番。

今泉(紀):自分のホームと呼べるフィールドがあって自分のスタイルが決まっているのであれば、究極の話になりますけど、 MTBは必要充分な1台があればそれでいい。でも、いまは固定化したフィールドを持てない人が多いから。

中沢:トレンド云々ではないけれど、情報発信は都会の人が中心になりがちじゃないですか?特に都心に住んでいる人にはホームがなくて、いろんなところに遊びにいく。

だからこそ、海外のトレンドを受け入れやすいのかもしれませんね。うちのローカルなんかだと、朝思い立ったらそのまま走りにいけちゃうので、どうしてもそこで使いやすいバイクを選んでしまうんです。こっち寄りの目線でメーカーが考えてくれたら、もっとおもしろいバイクが生まれそうな気がするんですけど。ちなみにヒロくん的には、いまのトレンドってどんな感じ?

今泉(仁):ちょっと前まではショートチェーンステイがいいと言われていましたけど、いまは海外でも「別に短くなくてもよくない?」と。トレンドの変化する速度もすごいので、それを捉える必要はないのかもしれません。海外のトレンドはある意味、わかりやすいですよね。「レースシーンで○○だから□□」みたいに。日本人は数字を出せる競技を好む傾向があるので、それはそれでいいんです。

でも、ロッキーマウンテンはそこからは少し離れていて、グローラーが注目されたのもあくまでバイクがファンライドベースだったからだと思っています。レース車両に採用されているジオメトリーでもないし、ヘッドアングルひとつとってみると確かにジオメトリー自体は下りベースですが、乗ってみると登りでハンドリングに不安定さはないし、ペダリングも悪くありません。

「正直、どうなの?」と思う人もいるでしょうけど、フルサスの発想を上手くハードテイルに落とし込んだトレイルバイクなので、機会があれば是非、試乗していただきたいですね。

今泉(紀):そういう意味ではフルサスバイクとハードテイルを乗り分けるのではなく、ハードテイルでも乗り分けてもらえる可能性があるのでは?いまはカテゴリーも分化されていて、バイクを選ぶ幅もある。いい時代です。

中沢:乗る人が走るフィールドにマッチするバイクを薦めなくてはいけないショップの責任は重大。ジオメトリー云々はプロに任せてしまってもいいのかもしれません。きちんとアドバイスができるお店を選んでほしいですね。

ちなみにジオメトリー云々の話を知りたければ、高田馬場のお店(ワークショップモンキー)にいって下さい。濃い話が3時間ぐらい聞けるはずです(笑)

 
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.43(2020年8月発売)より抜粋

-MTB, 連載

© 2020 TATSUMI PUBLISHING CO.,LTD