知っているようで実は知らない いまさら聞けないMTB基礎講座 第7回 〜フルサス&ハードテイル 編〜

初めてのMTBを購入するときに、フルサスを選ぶべきか?ハードテイルを選ぶべきか?人によってさまざまな見解があるため、一概にどちらとは言い切れません。それぞれのメリット・デメリットを理解して、自分の使い方にぴったりの愛車を選びましょう!

長所と短所を知ることで長くつき合える愛車を選ぶ

かつてフルサスには「下りが楽だけど、登りが全然ダメ」という時代もありましたが、現在はコストと重量面を除き、フルサスがハードテイルに劣る要素は、ほぼなくなりました。スポーツとしてMTBを操るテクニックを磨きたい人は、間違いなくフルサスで走った方が安全&快適です。

しかし、フルサスは安価なモデルであっても20万円代後半から。それだとMTBは余程のマニアか、懐に余裕のある人のためだけの遊びに……大丈夫です。近年は手頃なハードテイルの中にも、中低速域ならフルサスに勝るとも劣らない、気持ちよく走れるモデルが登場しています。

高額なフルサスは盗難に遭うリスクが高くなるため、サイクリングや日常の足には不向き。いろいろなシチュエーションで乗りたい人には、気軽に乗れるハードテイルがベストとも言えるのです。お店のスタッフとよく相談して、無理なく購入できるMTBを選んで下さい。まずは走り出すことが一番なのですから。

 

「フルサス」と「ハードテイル」って何?

ハードテイル


 

フルサス

衝撃を吸収するためのサスペンションフォークとリアサスペンションが装着されているMTBは「フルサス(フルサスペンション)」、サスペンションフォークのみ装着されているものは「ハードテイル」と呼ばれています。サスペンションを装備しない「フルリジッド」と呼ばれるMTBもあります。

 

「ハードテイル」のメリット

POINT 1

コストがかからない
同グレードのフルサスと比べると価格が抑えられ、入門用MTBでは10万円以下で購入できるものもあります。購入時だけでなく、維持費(メンテナンス等にかかるコスト)もフルサスほどかかりません。

 

POINT 2

メンテナンスがらく
リアサスペンションを装備するフルサスと比べ、メンテナンスの手間は少なくなります。同様にサスペンションセッティングもフルサスほど複雑ではなく、扱いやすさが魅力です。
 

 

「ハードテイル」のデメリット


衝撃吸収性が劣る
速度域が高くなると後輪が弾かれやすくなり、タイヤのグリップ力が失われがちに。そのため、下りではブレーキが効きにくくなります。登りでも踏む力でグリップ力を調整する必要があります。

スムーズに走るための技術が必要
フルサスのように速くスムーズに走るためには自分がリアサスの役割を担うように体をうまく使うテクニックが必要です。そのため、あえてハードテイルを操ることを楽しむファンもいます。
 

 

「フルサス」のメリット

POINT 1

安全にスピードが出せる
前後のサスペンションが路面の段差や障害物からの衝撃を吸収してくれるため、ハードテイルに比べ楽に走ることができ、無理なくスピードを出すことができます。

 

POINT 2

難しい登りもクリアしやすい
前後サスペンションの働きによってタイヤが路面の凹凸を効率よく追従するため、テクニカルな登りルートもハードテイルに比べると無理なく登ることができます。
 

 

「フルサス」のデメリット

コストがかかる
リアサスを装備することで設計が複雑になることもあり、車体が高価になります。前後にサスペンションが装着されるため、オーバーホールなどのメンテナンスコストもかかります。

 

メンテナンスが大変
ハードテイルと比べるとサスペンションのメンテナンスに手間がかかります。また、前後のサスペンションセッティングが必要になるため機材としての取り扱い難度が高くなります。

 

こんな使い方におすすめ

「ハードテイル」「フルサス」どちらでもさまざまな楽しみ方をすることはできますが、より向いている使い方はあります。

ハードテイル


気軽に扱うことができるため、街乗りから林道や里山まで、のんびりマイペースで楽しみたい人におすすめです。

 

フルサス


トレイルライドからパーク、ゲレンデダウンヒルまで幅広く安全に遊びたい人に最適。レース参戦を視野に入れるならフルサス!

 

こんなパターンもあります
MTBに興味を持って入門ハードテイルを購入。いろいろな場所を走って上達していくと、もっと速く・スムーズな走りを求めてフルサスに乗り換えたくなる、というのはよくある話です。さらに、スキルアップやMTBをダイレクトに操る楽しさを追求するため、あえてクロモリハードテイルを買い足すというマニア(?)も存在します。

 

XC系ハードテイルを選んではいけない!?

ひとくちに「ハードテイル」「フルサス」といっても、それぞれの中で下り向きのモデル、登りに強いモデルなどさらにジャンルが分かれています。比較的お手頃価格の入門用MTBにはXC系ジオメトリーのハードテイルが多く、アクションライドには向いていません。そうとは知らずに「ジャンプしてみたい」と購入した人が、すぐに買い換えた……という例もあります。

里山サイクリングなどが目的で、激しい使い方を考えていないなら、XC系ハードテイルもありですが、競技としてXCにチャレンジしてみたいならフルサスがおすすめです。

自分がどんな楽しみ方をしたいのか、イメージがある場合は、購入時にお店で伝えて、間違いのないMTB選びをしましょう。

 

はじめの1台にハードテイルを選ぶなら

予算の都合などで「ハードテイル」を選ぶ場合、事前にチェックしておきたいポイントがあります。MTBはフォークやコンポーネント、ホイールなど、パーツ交換をすることでアップグレードが可能です。さまざまなパーツを換えることで、より快適に遊びの幅を広げることができます。

ただし、最新規格に対応していないフレームの場合、最新パーツを装着することができません。「フォークの推奨ストローク量」や「ブースト規格」に対応しているかなど、お店で相談しながら、アップグレードが可能な伸び代のある1台を選びましょう。

 
写真:村瀬達矢
文:トライジェット
イラスト:田中 斉
 

取材協力

タスサイクル
店長:福田さん

遊び方やテクニックのレクチャーからバイク選び&メンテナンス、カスタムについてのノウハウまで、MTBのことならなんでもおまかせ。マウンテンバイカーにとっての頼もしいサポーター。

TAS CYCLE

茨城県つくば市東新井38-6
tel 029-896-8253
営業時間:
13:00~20:00(月〜土)
13:00〜19:00(日・祝)
定休日:不定休(ホームページカレンダーにて確認)
https://cycle.taspark.com/

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