日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)が選出する『JIDAデザインミュージアムセレクション vol.22』。トヨタ、本田技研、ヤマハ発動機、シャープほか、日本を代表する企業名がずらり並ぶリストにその名を連ねる〈株式会社イルカ〉。初プロダクトであるirukaの発売から 2年弱、モバイル変身自転車はすでに日本の海を越え、海外のサイクリストから評価される存在へ成長しました。
マイナスからのスタートをプラススタートに変えて
2019年6月1日、東京と横浜という限られたエリアの9店舗のみで発売が開始されたジャパンブランドのフォールディングバイク、iruka。そこには、株式会社イルカの創業者であり、モバイル変身自転車の開発者でもある小林さんの戦略がありました。
「実際には5月の28日くらいだったかな、ショップの店頭にirukaが並びはじめたのは。そもそも新興ブランドですからね、無策であれば商品の信頼性を含め、マイナスからのスタートになってしまいます。同じ9店舗から始めるにしても、あえて全国ではなく、エリアを絞ってメジャー店すべてに取り扱ってもらう、それだけで信頼性に関する評価は大きく変わってきますから。実際にプラスからのスタートダッシュが切れたので、それはよかったと思います」と小林さん。
開発のプロセス、irukaが形になるまでの紆余曲折をWEBやSNSにてストーリー仕立てで告知し続けたこともあってか、発売を心待ちにしていたファンも多かったようです。
「3番手以下の存在でいい」小林さんが描くiruka像
iruka発売の翌月、7月から翌々月の8月にかけて、京都、大阪、名古屋、福岡へと西方面へ販売網を拡大。ほぼ同じタイミングでインドネシアへ商談、月末には香港のディストリビューターからのオファーを受け、小林さんは海外展開に踏み出します。
そして現在、日本以外ではインドネシア、香港、シンガポール、フィリピン、台湾で取り扱われるようになったiruka。実にその総出荷台数のほぼ半数を海外が占めるといいます。中には色違いでirukaを購入する熱烈なマニアもいるのだとか。
「やはり日本のブランドという点は大きいですね。irukaがここまで海外で高い評価を頂けたのも、先に認められていたタイレルという日本のブランドがあってこそ。やっぱり日本人が考えたプロダクトはすごいんですよ。デザインや仕上げの美しさひとつとっても、世界のどのブランドにも負けません。海外のサイクリストに評価されたことが、その証明にもなりますし、うれしいですね」とも。
海外では近年、最高の評価を受けているという日本ブランドの折りたたみ自転車。他国の製品として、ブロンプトンやバーディともフラットに比較できる海外ユーザーの目線、その評価に間違いはないはずです。
「乗っていると一目置かれる、そんなブランドにirukaを育てていきたい。だから、ブロンプトンやダホンのように売れない方がいいんです。国ごとで見るなら、むしろ3番手以下がいい。マイノリティだからこそ価値があった昔のMacみたいに。その分、販売国数を増やすことでビジネスの拡大を図る、いまはそう考えています」とのこと。
インスタのフォロワーは8割が海外勢、今後は欧州での展開も予想されるiruka。その人気の波が逆輸入的に日本へ……そう遠くない未来の出来事かもしれません。
iruka C
スタンダードモデルのタイヤ、サドル、ハンドルバー等に 変更を加えた内装5段変速のコンフォートモデル。鮮やかなブルーやレッドのカラーラインアップが新鮮だ。
価格:17万9800円(税別)
カラー:シルバー、ストームグレー、ブラック、ブルー、レッド
変速:1×5speed
タイヤサイズ:18×1.50
株式会社イルカ 創業者/代表取締役 小林正樹さん
問:イルカ
info@iruka.tokyo
http://www.iruka.tokyo/
文:トライジェット 写真:村瀬達矢
『折りたたみ自転車&スモールバイクカタログ 2021』(2021年3月発売)より抜粋