各部のブラッシュアップで理想のライディングを実現
エピックライドやシングルトラックを愛するライダーに最適なロッキーマウンテンのフルサスバイク、インスティンクトが2度目のフルモデルチェンジを敢行した。サスペンションをフロント150mm、リア140mmトラベルまで拡張することであらゆる地形に対応。
より長くなったリーチと寝かせたヘッドアングル、シートアングルを起こしたジオメトリー、剛性を高めるためのフレーム造形、新採用のアジャスタブルチェーンステイ&リアまわりの剛性と耐久性を向上させるチェーンステイピボットのデュアルベアリング化など、アップデートは多岐に渡る。
2021モデルの完成車として日本国内でラインアップされるのはカーボンフレームのインスティンクト・カーボン50とアルミフレームのインスティンクト・アロイ30。今回は上位グレードのインスティンクト・カーボン50をインプレッション、その進化の本質をいち早くチェック!
ROCKY MOUNTAIN
INSTINCT Carbon 50
ロッキーマウンテン インスティンクト カーボン 50
GEOMETRY(サイズはMD)
リーチ:456-468mm
ヘッドアングル:65.1-66.2°
シートアングル:76.1-77.2°
リアセンター:438/449-436/447mm
ホイールベース:1210-1208mm
SPEC
カラー:グリーン、パープル
重量:14.15kg
サイズ :SM(155-167.5cm)、MD(167.5-177.5cm)、 LG(177.5-187.5cm)
フレーム素材:カーボン
フォーク:Fox 36 Float EVOL GRIP Performance(150mmトラベル)
リアサス:Fox Float DPS Performance
コンポーネント:SHIMANO XTほか
タイヤ:MAXXIS MINION DHF(29×2.5)/MAXXIS MINION DHR II(29×2.4)
価格:58万7400円(税込)
問:エイアンドエフ
https://aandf.co.jp
IMPRESSION
「3代目へと進化した2021モデルのインスティンクトですが、今回はじっくりとRIDE-9のセッティングが変えながら乗り込んでみました。その進化が顕著に現れたのはスラック(ヘッドアングルが寝た状態)に設定したときで、コーナーが小さく感じられるほど、バイクのいいところに乗ったままクルッと回れました。
以前のモデルはヘッドアングルを寝かせるとフロントがやや重く感じられたり、ふらつくイメージがありましたが、新型にはそれがありません。また多少、体の動きが遅れてもバイクが助けてくれるので、斜度のある下りでも前転するような怖さは感じさせません。
RIDE-9をニュートラル(中間位置)に合わせると、どんなところへも気にせず移動できるロッキーマウンテンらしい踏み出しの軽さが感じられました。シートアングルを起こしたことでペダルに体重を乗せやすくなった点も進化のポイントで、それなりのパワーは必要ですが、2.5インチの太いタイヤを履いたモデルながら、登りで前乗りしなくても、足を踏み下ろせば登っていけます。
もともとロッキーマウンテンのバイクは『すごく速い!』というよりも『乗りやすい!』という印象が強く、このインスティンクトもそのアイデンティティは継承されているようです。新型となって、体の移動量が少なくて済む絶対的な安定感を手に入れましたが、逆に体を動かすことで一気に向きを変えたり、飛んだりというダイナミックな走りも楽にできるようになりました。マレット化も試してみたいですね」
インプレッションライダー
CSナカザワジム 店主 中沢 清さん
20キロに及ぶ過酷な減量の結果、現役アスリートさながらのシャープな動きを取り戻したCSナカザワジムの店主。定評のある鋭いインプレッションにも、さらに磨きがかかっております。楽しくトレイルを走り、安全&気持ちよく帰路につくノウハウ(※ジャンプ、コーナリングテク云々ではありません)を凝縮したオリジナルのスクール『ナカザワジム・ライドパートナー』も随時開催。興味にある方はCSナカザワジムまで問い合わせを。
https://nakazawagym.amebaownd.com/
3世代のインスティンクトを比較
その進化の過程をチェックする
2014
INSTINCT 950 MSL
SPEC
フレーム素材:カーボン
フォーク:Fox 32 Float 29 CTD(130mmトラベル)
リアサス:Fox Float CTD
コンポーネント:SRAM X9ほか
タイヤ:Continental MOUNTAIN KING(29×2.2)
GEOMETRY(サイズはM)
リーチ:400-417mm
ヘッドアングル:67.7-69.3°
シートアングル:73.7-75.3°
リアセンター:452mm
ホイールベース:1134mm
2020
INSTINCT Carbon 50
SPEC
フレーム素材:カーボン
フォーク:Fox 36 Float EVOL(140mmトラベル)
リアサス:Fox Float DPS Performance
コンポーネント:SHIMANO XTほか
タイヤ:MAXXIS MINION DHR II(29×2.4)
GEOMETRY(サイズはMD)
リーチ:432-443mm
ヘッドアングル:66-67°
シートアングル:74.5-75.5°
リアセンター:436-434mm
ホイールベース:1179-1178mm
※上記の2台はカスタムされたモデルです。記載されているスペックとは合致しません。
「インスティンクトは元々、カナダのBCバイクレース(シングルトラックを中心として走る7日間のステージレース)で走ることを前提として開発されたモデルです。それなりの距離を走りますし当然、登りもあります。下りはスムーズなところもあれば荒れたところもある。まさにトレイルに見られるすべてのシチュエーションを走るレースです。2013年に登場した初代インスティンクトは、オリンピック競技のようなXCレースで走ることを目的としたバイクではなく、本当の意味でのXCトレイルバイクでした。
そして少しずつスペックを変えつつ2018年、フルモデルチェンジを果たした2代目はオールマウンテンバイクやエンデューロバイクになりうるほど下りの許容範囲を大きく広げたモデルで、ダウンヒルバイクのエッセンスが加わり、コクピットの考え方にも変化が見られました。リーチを長くとって、ヘッドを寝かし、しっかりとリアに乗れるスタイルに。下りで体を動かさずとも高い安定性が得られるジオメトリーが採用され、遊び方自体も変わってきました。MTBパークに持ち込める、大きなドロップオフも余裕で通過できるスペックを得たのです。自分としては、日本のフィールドで走ることを考えたとき、初代と2代目は延長線上にない、という感覚を受けました。
新型となる3代目は2代目をうまくブラッシュアップしたという印象で、バイクがさらに鋭く進むようになりました。エンデューロレースで使いたくなるほど切れ味が増しています。RIDE-9に加えてリアセンター長も変更できるようになり、よりパーク向きというか、人の手が入ったMTBトレイル向けの味付けになっています。
この進化の流れはロッキーマウンテンだけではなく、どのブランドにも当てはまることかもしれません。初代には1日中でも走っていたくなる、疲れてきても乗っていられる、良質なハードテイルのような軽やかさがありましたが、体を自転車の上で積極的に動かさなくてはならない、最近少なくなってきた玄人好みのバイク。2代目と3代目はだれもが転倒リスクを回避しながら安定感を持って下り、登れるバイク。いずれにも魅力はありますが、初代のようなモデルは流行路線ではないので今後、選ぶのは難しくなるかもしれません」
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.46(2021年5月発売)より抜粋