【MTB57】温故知新 猿屋の山チャリズム《オールドMTB》編 Part.8

過去を振り返ることで見えてくる現代の、そして未来のMTB像が見えてくる。
今回は巻頭特集の振り返りも兼ねて、ハードテイルに関する考え方について、ノリさんからお話をうかがいました。

今泉紀夫
ワークショップモンキー店主。MTB 誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。
http://www.monkey-magic.com/

最近はオールドMTBが集まるイベントが増えているようですね。

80年代からオリジナルフレームを作り続けているうちにとっても興味深いところです。支持しているのは比較的若い層で、それらが現役だった頃のことを知っていて懐古的に集めたり乗ったりしている50代以上の年配層とは違い、新しいものとして古いものを愛でている印象です。

海外オークションなどを通じて古い部品を高額で収集したり、かなりこだわっている人も少なくないとか。でも、それだと原理主義的というか宗教的というか、部品の年代にこだわりすぎると、もっと自由であるべきMTB本来の姿から逸脱してしまうように思えます。

うちにも古いモンキーバイクに興味を持っていただいた方が相談にいらっしゃいますが、話をしているうちに「味わいさえあれば、現代のパーツでも構わない」となるケースが多いんです。

先日もホームページを通じて、新しいオーナーを探していた90年代のモンキーバイク(90)に複数の問い合わせがありました。すでに引き取り手が決まったあとで「新しく作ることは可能ですか?」という方がいらしたんです。

元々、モンキーバイクはオーダーフレームですから、昔と同じ規格のままでも作れますし、現代の規格に合わせた形でも作れます。結果、フレームのコンセプトは当時のままだけど、フォークは既存のカーボンフォークを前提として設計、エンドはスルーアクスルの148ミリ、フロントはシングルギアで変速は12段という内容で〈新しい90〉を作成することになりました。

モンキーのストーリーを知っている方だったので、90のスタイルに憧れがあっただけで、必ずしもビンテージにこだわっていたわけではありませんでした。そういう方に〈新しい90〉を選んでいただいたことは本当にうれしい。

古着みたいに「古い時代は知らないけど古いものに触れたい」という気持ちはわかります。

僕らの若い頃にもランドナーの趣味で、古いシクロランドナーに憧れて使ったり、楽しんだりしていましたから。うまく言えませんが、MTBはもっと自由で、もっと幅がある自転車だと思うんです。

当時のMTBはスケルトンからして、現代のクロスバイクやグラベルバイクのようなものですからね。古くなったというだけで処分しちゃうのはもったいないので、うちでは街チャリ風にカスタムするなど、用途を変えて使う方もたくさんいます、

いわゆるSDGs的に。それができるのもクロモリハードテイルのいいところ。だから僕にとって88や90のような古いモンキーバイクは「オールドMTB」ではありません。あくまで「アーリーモンキー(初期もん)」なだけで。

MONKEY 88D モンキー 88D


純粋なモンキーバイクとしては最初期のモデルだった88D。舗装路向けのタイヤを装着してクロスバイク的に復活させたノリさんが所有する1 台。

-MTB