欧州のそれとはひと味違う、独自のオフロードサイクリングカルチャーを背景に持つ日本のMTBシーン。当然、E-MTBが浸透する速度、そしてマウンテンバイカーたちの受け止め方も変わってきます。今回
は、日本でも徐々に普及しつつあるE-MTBの本質に迫るべく、ドライブユニットが異なる4台のフルサスモデルをピックアップ。E-MTBならではの魅力について再検証してみたいと思います。
コスパの高さで差をつけた 扱いやすいフルサスモデル
BESV TRS2 AM
まだ産声を上げたばかりの日本のEバイク市場に対して、シマノSTEPSを搭載するカーボンフレームのE―MTBをいち早く投入してきたベスビー。
Eバイク専門ブランドとして常に話題の中心にいる同社が完成させたインチューブバッテリー型のフルサスモデル、それがこのTRS2AMだ。
トップレベルの技術者を集め、プロライダーの声をフィードバックするプロセスから生み出されたTRS2AMは、E―MTBという欧州で確固たる地位を得たジャンルに対するベスビーの回答でもあるが、そのパッケージはむしろこの日本にこそマッチする内容だといえる。
搭載するコンポーネントを見直すことで実現した45万円を切るプライスは、これまで高嶺の華であったフルサスペンション仕様のE―MTBを現実的なものとしてくれる。乗り手の好みやレベルに合わせて必要な部分をアップグレードしていく、ベース車としての秀逸さも見逃すことはできない。
SPECIFICATIONS
フレーム | アルミ |
サイズ | S、M |
重量 | 23.2kg(S)、23.3kg(M) |
フォーク | SR SUNTOUR ZERON 35(150mmトラベル) |
リアユニット | ROCKSHOX DELUXE RT |
変速 | 1×10speed |
コンポーネント | SHIMANO DEOREほか |
タイヤ | F/MAXXIS MINION DHF、 R/MAXXIS MINION DHR Ⅱ(27.5×2.6) |
カラー | マットブラック |
ドライブユニット | SHIMANO STEPS E8080 |
一充電走行距離 | 95~140km(3モード) |
価格:44万5000円(税別)
問:BESV JAPAN
https://besv.jp/
日本のトレイル遊びにジャストフィットする等身大のE-MTB
この価格にしてこの走り、コスパの高さは圧倒的。一番の特徴は、前後サスのトラベル量が150mmありながら、ライダーがこぎやすい位置に身体を置けるところ。
このクラスのMTBはどのブランドでも下りっぽいイメージになりがちですが、TRS2 AMは違います。
昔ながらのスタイルでクロスカントリー的に山を走っていた人間にはしっくりくる味つけで、ハンドリング、きちんと自分の足でペダルを踏んでいく感じを含め、日本の山道に一番マッチするE-MTBだと思います。
速く下るための150mmトラベルではなく、余裕を持ちながら安全に下っていくための150mmトラベルといえます。
フロントサスはコイル仕様なのでやや重めでも、小さな根っこ越えなどの細かなショックまで拾ってくれるので、その点ではむしろ好印象。
車体全体で見ても癖がなく、競合車と比べておとなしめな印象はありますが、山に入ったときにピタッとおさまる感じは、きれいにコース化されていない山の中では安心感につながります。
また、止まったり、向きを変えたりと低速域でやることが多い自然の山と、モーターの反応にラグを持たせたシマノのユニットは相性がいいですね。
急斜面のリスタートは瞬間的にアシストされないでの慣れが必要ですけど、そこは考え方次第。
モーターに遊ばれないという意味でも、登って下ってを繰り返す丘陵地帯の里山にフィットするE-MTBといえるでしょう。
Profile
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.43(2020年8月発売)より抜粋