2020 フルサス E-MTB インプレッション part.3

欧州のそれとはひと味違う、独自のオフロードサイクリングカルチャーを背景に持つ日本のMTBシーン。当然、E-MTBが浸透する速度、そしてマウンテンバイカーたちの受け止め方も変わってきます。今回は、日本でも徐々に普及しつつあるE-MTBの本質に迫るべく、ドライブユニットが異なる4台のフルサスモデルをピックアップ。E-MTBならではの魅力について再検証してみたいと思います。

MTBらしさを追求した唯一無二かつ孤高の存在

SPECIALIZED
Turbo Levo SL Expert Carbon

リーヴォSLは重量の増加を避けることが難しいE―MTBの開発に対して、真っ向から勝負を挑んだ唯一無二のモデルだ。

軽さを重視した設計思想により、MTBらしいコントローラブルかつアグレッシブな動きはスポイルされず、まるで乗り手がパワーアップしたかのような、夢のような現実を手にすることができるバイクへと昇華。

例えるなら、スタンプジャンパーの俊敏な走りに、必要かつ十分なアシストパワーをプラスすることで、これまで体感したことのないMTBの新たな可能性を見出すことができる。

軽量かつ反応性に優れたオリジナルのSL1・1モーターをはじめ、スタンプジャンパーゆずりのフルカーボンフレーム、イメージ通りに可動する前後のサスペンションユニット、最新の12速ドライブトレインほか、車体を構成するすべてのパーツに「E―MTBだから」という妥協は一切ない。MTBであることにこだわった究極のE―MTBといえる。

軽さを追求した自社開発のSL 1.1モーターは、通常走行時のケイデンスと完璧に同調し、非アシスト時には抵抗を生じさせないユニットだ。

アシストモードとバッテリー残量を表示するインジケーターはトップ チューブにセット。アシストモード切替は手元のスイッチでも可能だ。

スタンプジャンパーのサイドアームデザインを継承したフレーム。専用チューンのFOXサスペンションによりスムーズなトラベルを提供する。

 

フレーム カーボン
サイズ S、M 、L
重量 -
フォーク FOX 34 FLOAT PERFORMANCE(150mmトラベル)
変速 1×12speed
コンポーネント SRAM GX Eagle ほか
タイヤ
F/SPECIALIZED BUTCHER GRID TRAIL、 R/SPECIALIZED ELIMINATOR GRID TRAIL(29×2.3)
カラー ブラック×ホワイト、オークグリーン×アクア
ドライブユニット SPECIALIZED SL 1.1
変速 1×12speed
一充電走行距離 約 3.5 時間(エコモード)

価格:79万円(税別)
https://www.specialized.com/

 

リアルマウンテンバイカーの感性に訴えかける絶妙なスペック

現在のワールドカップで見るような、ガンガン立ちこぎしていって、飛んだり、曲がったりするアグレッシブクロスカントリーのスタイルが自分は好きなんです。

でも世界のトップライダー と一般のマウンテンバイカーではフィジカルの強さが違いすぎる。でもこのリーヴォSLに乗れば、ワールドチャンピオンになった気分を味わえるかもしれません。

なぜなら、このバイク はモーターありきではなく、良質なMTBを設計してそこにモーターを乗せる、という発想で開発がスタートしているからです。

重量を抑えるためにバッテリーの容量&トルクの出方は控えめ。

そのためほかのE-MTBにありがちなドカッとしたパワーは感じられません。急斜面の登りでは後塵を拝すこともあるでしょう。

しかし、このバイクの本質はそこにありません。圧倒的な軽さを武器にしているため、ギアを正しく選択して、MTBらしく扱ってあげるだけで最高の自分の3倍増し、それ以上にエキサイティングな走りを提供してくれる、他とは一線を画す存在なのです。

アシストが切れた際の失速感も他のバイクと比べて明らかに少なく自然なので、普通のMTBに接してきたときと同じようにきちんと乗れば同じ感覚で扱うことができるはずです。

変ないい方かもしれないけど、自転車を買ったら最高の身体がついてきた感じ?

まさに『あなたのまま、さらに速く』というメーカーのキャッチコピーが具現化されています。

 

Profile

CSナカザワジム 店主 中沢 清さん
トレイルライドのパートナーとして、五輪2大会に出場したXCO女子日本代表の小田島梨絵さんをはじめ、多くのマウンテンバイカーをサポートしてきた中沢さん。この冬には、楽しくトレイルを走り安全&気持ちよく帰路につくノウハウやバイクセッティング(※ジャンプ、コーナリングテク云々ではありません)を凝縮したオリジナルのスクールをスタート予定。興味にある方はCSナカザワジムまで問い合わせを!

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.43(2020年8月発売)より抜粋

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