愛着のあるMTBだから 長く乗り続けたい Part.1

旧規格のフルサスMTBを1×12速仕様にカスタム

だれがいったか『最新こそ最良』。スポーツカーのインプレッション記事でたびたび見かける言葉ですが、新規格の採用によってめざましい進化を遂げた近年のMTBにも当てはまる名言といえます。

しかし、思い入れのある愛車であれば、長く乗りたいという願望もあって然るべき。必ずしも数年単位で乗り換える必要も、旧規格だからといってすべてを諦める必要もありません。

有効なカスタマイズで部分的に最新スペックが手に入るところもスポーツバイクの魅力なのです。

例えば、マウンテンバイカーの間で徐々に普及しつつあるリア12速のドライブトレイン。必ずしもフレームが最新のBOOST規格(OLD148㎜)に対応している必要はありません。

旧規格(OLD142㎜)のMTBであっても、ポイントを押さえたカスタムを試みれば莫大なコストを発生させることなく、スマートにリア12速仕様へアップデートすることが可能なのです。

今回は、長らく誌面をにぎわせてきた編集部号に、リア12速化のカスタムを実施することにしました。

すでにデビューから5年が経過した旧規格の2×11速仕様。フロントダブル派の弊誌スタッフが所有する車両ですが、そこは時代の流れといいましょうか。

下り系のモデルということもあり、ドライブトレインは1×12速を選択することになりました。

BEFORE

完成車販売のモンドレイカー・デューン(2015モデル)ですが、前後サスペンション&ドロッパーポストはFOXのアイテム、ホイールを含むコンポーネントはシマノのデオーレXT(M8000シリーズ)に換装済み。フレームは旧規格(OLD142mm)ながら、最新MTBに引けをとらないハイスペックでまとめ上げていました。

AFTER

カスタムのコンセプトが「コストを抑えて、気軽に1×12速」であったため、今回はドライブトレインがSLX(M7100シリーズ)、ブレーキがデオーレXT(M8100シリーズ)というミックスコンポ仕様とすることに。

ブレーキはそのままという選択もありましたが、コクピットまわりを最適化できる〈I-spec EV〉は是非とも使ってみたいシステムだったので。

最大の壁は、12速化するためにリアハブのフリーボディがマイクロスプラインでなくてはならない点。デオーレXT(M8100シリーズ)の完組ホイールはBOOST規格に対応するアイテムのみ。

ハブ単体としては旧規格用も用意されていましたが、気軽さに欠けるため見送り。

そこで見つけたのが旧規格に対応するマイクロスプライン搭載の完組ホイール、WH-MT601。ハイコストパフォーマンスで、本企画にはうってつけのアイテム。

今後、旧規格MTBの12速化を身近にしてくれる救世主となること必至です。

前後ホイールはWHMT601をセット。フロントOLDは100mm、リアOLDは142mmという旧規格に対応するホイールながら、リア側のフリーボディは10Tのトップギアに対応するマイクロスプラインを採用する。チューブレスタイヤに対応。

レスポンスに優れた素早い変速操作を可能とする〈HYPERGRIDE+〉、チェーンリングの歯の形状によりチェーンの保持力を高めた〈DYNAMIC CHAIN ENGAGEMENT+〉をはじめ、シマノ独自のテクノロジーを凝縮したドライブトレイン。カセットスプロケットはギアレンジを広げた10-51Tをセットする。

ブレーキだけは贅沢を許して

ブレーキは前後ともデオーレXT(M8100シリーズ)の4ピストン仕様へアップグレード(カスタム前のM8000シリーズはケチって前側のみ4ピストン)。

レバー側はクランプ位置が中央にオフセット、ハンドルバーに対して2カ所で支持する形状に変更され、取り付け剛性が格段にアップしました。

シフトレバーとブレーキレバーの形状を見直すことでコクピットまわりの最適化を実現した〈I-spec EV〉はもはや欠かせないシステムで、M8000シリーズの〈I-spec II〉に対して、さらに細かなシフターの位置調整が可能となりました。

キャリパーはデザインを一新しつつ、バンジョーの取り付け方向も変更。理想的なセットアップをサポートしてくれます。

使用アイテムリスト
クランクセット:FC-M7100-1(SLX) 1万367円(税別)
Rディレイラー:RD-M7100-SGS(SLX) 7405円(税別)
シフター:SL-M7100-IR(SLX) 3800円(税別)
カセット:CS-M7100-12(SLX) 9934円(税別)
チェーン:CN-M6100 2608円(税別)
ホイールセット:WH-MT601-TL-F15-275/WH-MT601-TL-R12-275 (DEORE) 2万2423円(税別)
ブレーキレバー:BL-M8100(DEORE XT) 1万3700円(左右セット/ 税別)
ブレーキキャリパー:BR-M8120(DEORE XT) 9664円(税別)×2
ブレーキローター:RT-MT800(DEORE XT) 5167円(税別)×2
合計 9万9899円(税別)

走りも姿も現代スペック 新たな気持ちで走り出せる

フロント変速にこだわりを持っていたこのデューンオーナーの編集スタッフですが、1×12速でまとめられたシンプルなルックスに「これはこれで悪くない」とご満悦。

特に自転車の顔でもあるクランクまわりを一新、フロントディレイラー(+ケーブル類)を取り外したことで、外観の軽快さと精悍さが増した印象を受けます。

ホイールはデオーレグレードになり走りも姿も現代スペック新たな気持ちで走り出せるましたが、マイクロスプラインを搭載した完組ホイールとしては破格のお値段。

幸い乗り手が競技指向ではないため、先代XTのホイールから乗り継いでも大きな不満はありません。

今回はちょっとだけ贅沢をしてSLX(M7100シリーズ)を主軸に置いたメニューとなりましたが、今月発表されたばかりの新型デオーレ(M6100シリーズ)を使えばさらにコストを抑えて、最新の1×12速ドライブトレインを手に入れることができるのです。

これは旧規格のMTBを所有しているオーナーにとって吉報といえるでしょう。思い入れのある愛車を12速化するもよし。M5100シリーズやM4100シリーズを利用して10速、11速仕様のままワイドレシオ化するもよし。

旧規格MTBオーナーを見捨てることのない、最新の変速システムを身近に感じられる隙のないラインアップ。さすがとしかいいようがありません。
 

IMPRESSION

厚い歯と薄い歯が交互にならぶチェーンリングとチェーンのガッチリとした嵌かんごう合具合から、チェーンの保持力の高さは予想できました。

これは特に、路面の凹凸が激しい場所を走ったときに安心感となります。

変速操作についても、ロー側にチェーンを上げていくときの快調さもさることながら、変速ショックが伝わりやすいトップ側に落としていく際のフィーリングが想像以上にコンフォート。

変速操作に対する乗り手のストレスを軽減してくれるはずです。

 
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.42(2020年5月発売)より抜粋

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