温故知新 徒然MTB談話室 第5回

今回は場所を変えて中沢さんの地元、西多摩のトレイルでライド……の予定でしたが、残念ながら撮影日は台風の急接近による雨予報。それでも当談話室は通常営業でまいります!徒然なるままに進んでいく対談、今回のテーマは「振り幅」に。はたして、どんな展開になったのでしょう?

Profile

  

中沢 清(写真左)
CSナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB 日和』ではインプレッションライダーも担当。
今泉 紀夫(写真右)
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。

 
中沢:前回、ノリさんに案内してもらったフィールド、トレイルはもちろんですけど、自分的には山に入るまでの一般道がすごく楽しかったんです。

どんなお店があって、どんな人が住んでいて、どんな景色が見えるとか。メインディッシュではないかもしれないけど。

 
今泉:それがあってのMTB。前菜が合って、うまい酒を飲んで。全部がそろっているから楽しい(笑)。

 
中沢:そういうのを地元でもやりたいんです。

 
今泉:自分の場合、機材の楽しさを知ってもらうために遊園地の一角を借りてレースもやったけど、根本はサイクリングなんですよ。

荷物を積んで出かけるのが当たり前だったし、その中で自転車の楽しみを知って。

だから、どこでも走れる自転車という意味でMTBがいいんです。

 
中沢:MTBは走る道を選ばないですからね。

 
今泉:日本の自転車文化はヨーロッパスタイルからはじまっています。ランドナーから余計なものを外して山に入って、それがパスハンターになった。

結局、日本のMTBはパスハンターだと思うんですよ。地方に出れば砂利道だらけだったし、その過程で生まれたんですから。

 
中沢:そこから進化していろいろな走りの形が生まれたんですよね。

 
今泉:当然ね。レーシングも。

 
中沢:前回、同じフレームでも長さの違うフォークをつけたモンキーを乗り比べて思ったんです。振り幅はあるのにそれぞれがおもしろいところに落とし込めているな、と。

 
今泉:それってマスプロダクトには難しいことなのかも。メーカーも迷っているみたいでいろいろな規格を作るけど、専用品を売らなくてはならない。

仕方ないことだけど、結局ユーザーがあっちへこっちへ振り回されちゃってるように見えて。

 
中沢:「これが正解」というものを出さないと売りにくいですからね。

 
今泉:うちのバイクはもともと振り幅がちょっと大きいというか、逆にニッチなものになっちゃって。車輪径にしたって入っちゃうから入れたとか、マニアは自分なりに工夫して乗ってくれていますし、自転車ってカスタマイズができる自由な乗りものだからそれでいいと思うんですよ。

ただ激走するためではなく、そこにいきたいからアレンジする。山には多様性があるのに、なんでも作り込んていったらすべて同じものになっちゃうでしょ?

 
中沢:この辺りはノリさんが走っているフィールドとは山の形も土の感じも微妙に違っていて、細かくアップダウンを繰り返す丘陵地帯のトレイルだから、XCっぽいバイクが使いやすかったりするんです。

フォークを150mmから140mmに換えるだけでペダリンしやすくなったり、フロントまわりがおさめやすくなったりして。

 
今泉:それって単にヘッド角が立ってBBハイトも下がるからで、うちのフレームはリジッドフォークの時代からそう設計しているんです。

ヘッドチューブ下の肩下寸法を調整すれば、XCレーシング的なハンドリングにもなるし、下りに特化したい人にも同じことができます。

 
中沢:今回は雨でダメだったけど、それを西多摩のトレイルで乗り比べたかったんです、タイヤの幅も含めていろいろ。

やっぱり、将来的には雨でも乗れるトレイルが作りたい。MTB専用のコースではなく、いろいろな人が使える形のトレイルを。

雨でお楽しみライドこそおあずけになりましたが、せっかくの機会。中沢さんがフィールド活動の場所まで今泉さんをご案内。道具小屋や体験コースをまわりながら、今後の展開(コラボ企画?)について話し合うおふたり。

今泉:趣味でMTBに乗っている人が「今日は休みだから乗りたい!」と思ったら雨が降って、雨だから乗っちゃいかんというのは。

 
中沢:さびしいじゃないですか、晴れの日ほど思いっきり走れないにしても。

自分の場合、雨の日は林道を走るんですけど、カナダで見てきたトレイルには上手に石を敷いている道もあるので、いずれはそういうフィールドを作ります。「雨だと景色が変わっていいじゃん」っていえるような場所を。

 
今泉:ぼくが乗りはじめた頃は地方にいくと砂利道だらけだったから。その時代にMTBがあったらすごく楽しかったと思いますよ。いまの人は海外にいかないとそういうのを体験できないので。

~~~~~~中略~~~~~~~~

中沢:ノリさんがモンキーベースを作ったように、自分もみんなが集まれる場所を地元に作りたいと思っていて。

里山の活動を続けている内に人とのつながりができて「ここを使わない?」と紹介してもらい、交流の場として、活動を広める拠点として、みんなでリフォームしたのがこのハウスなんです。

ここにはマウンテンバイカーだけでなく、同じ里山の整備活動をするさまざまな人が集まります。

近くにボランティア用の体験コースを作り、MTBを持っていない地元の子どもたちのためのレンタルバイクも用意しました。

体験会では参加人数の多さから、ジャストフィットしないバイクに乗ってもらわなければならないこともありますが、子どもたちは上手く乗りこなしますね。

 
今泉:子どもならではの多様性というか、寛容な応用力というか。昔はでっかくても乗ったでしょ?

 
中沢:親父の自転車を借りたりして(笑)。山で安全に楽しく乗る方法をずっと模索してきたわけですけど、それを見ていてモンキーに乗ったときの振り幅の大きさみたいなものがピンときたんです。

 
今泉:子どもには想像力があるから、サイズなんか気にしないで自分なりに楽しんじゃう。

いまは情報化社会だし、大人には難しいのかも知れないけど「こうじゃなくちゃ」って決めつけて、工夫できない人が多いような気がします。

 
中沢:そういえばMTBって、昔はATB(オールテラインバイク)とかマルチパーパスとか、いろいろな呼び方されていましたよね。

 
今泉:ぼくが言葉を作るならフィールドバイクかな。そういえば当時、雑誌のコラムでそんなこと書いたこともありました。

 
中沢:流れに乗っかる楽しさもあるんでしょうけど。で、自分はアホなことを考えたわけですよ。ヨツバサイクルもすごく売っていて、子どもたちが楽しそうに乗っているのも見ていて、あえてヨツバサイクルで芝スラに出場しよう、と。

22インチのプロトタイプで走ってみて、バイクのバランスがいいと極端にバイクが小さくてもきちんと曲がったり、縦に動かすことができることがわかりました。体がでかいから動きを邪魔したりはするけど。

フリーライドゲームス21に22インチのヨツバサイクルで出場した中沢さん。単なるネタにも見えますが、意外にもガチでインプレしちゃってます。詳しくはお店で(笑)。

今泉:20年以上前になりますけど、親子で乗りたいというお客さまから子ども車のオーダーがあって、20インチを工夫して作りました。クランクも穴あけしてそろえたりして。

いまはヨツバサイクルのような自転車があるから必要ないけど、子どもの身長に合わせてどのサイズにするか? どんなバランスにしたらいいのか? ハンドルもXCレーサーじゃないからどうする? といろいろ考えました。

こちらは「親子でモンキーに乗りたい」というオーダーに応えるべく、今泉さんが子ども用に製作した20 インチホイールのモンキー。まだヨツバサイクルのような本気で遊べる子ども車が存在しなかった90 年前後の貴重なモデル。

中沢:もの作りもフィールド作りも、子どもたちのこととなると力が入りますよね。

自分は小学校のPTA会長をやっていますが、夏休みのイベントでは地域の人が子どもたちのためにかき氷を作ったり、サッカーをやる子どものために親たちがグラウンドをきれいに整備したり。

すると子どもがそれを真似してやる。MTBの今後のキーワードは子ども。「子どもで商売が広がる」みたいな、ありがちなものではなく。

 
今泉:30~40年前はそれが当たり前だったし。

 
中沢:受け継いでいかなくちゃいけませんね。バイクに長く乗るのもそうだし、フィールドにかかわるのもそうだし。継続するためのヒントが多様性にある気がします。

 
今泉:こうだって決めつけない。最低限の基準はあっても杓子定規にならず、その場所、その状況で臨機応変に判断することが大事。安全に乗るためにも。

 
中沢:さじ加減というか、それこそが野外スポーツの醍醐味。自然を相手にするおもしろさですね。自然はきまぐれだし。

 
今泉:雨も降るしね(笑)

 
中沢:今年みたいにクソ暑かったり。真面目なことを肩の力を抜いてやるって感じですか。肩の力を抜かないとMTBは転んじゃうので。

 
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.35(2018年8月発売)より抜粋

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