温故知新 徒然MTB談話室 第4回

今回はフィールドの話からちょっとだけ離れてもの作りをテーマに会話はすすんでいきます。日本のMTB創世記からオリジナルフレームを作り続けている今泉さんとスチールのハードテイルから最新のフルサスバイクまで幅広くMTBを乗り分けている中沢さんのトーク。MTBの過去と未来が垣間みえる貴重な内容、マニアならずとも要必読ですよ。
 

Profile

  

今泉紀夫(写真左)
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。
中沢 清(写真右)
CSナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の 会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代の マウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。 弊誌『MTB日和』ではインプレッションライダーも担当。

 
中沢:ノリさんは昔からご自身でフレームを作られていますけど、最初は走っているフィールドに合わせて作ろうと思ったんですか?それとも自分たちはバイクも作れるぜーって感じのノリで始まったんですか?

 
今泉:たまたまMTBが注目されはじめた時代にいたからで、そんなかっこいい話じゃないんですよ。乗る場所に合ったものを作ろうというのは正直、あとから。それが主になりましたけど。

 
中沢:最初はいろんなところを走っていたんですよね?

 
今泉:そもそもツーリングベースでしたから。親が機械屋だったのもあってか、ものを作って売る、必要としている方に使って頂くという考え方は当たり前で、いわゆる商売とかマーチャンダイズ的な意味ではなく。

ものっていうのは、だれかが使うためにだれかが考えて、使ってもらいやすいように工夫されているんです。つまり愛情。

でもいまはその感覚がうすくて、だからママチャリはぞんざいに扱われているし、だれかが考えて工夫していることも意識されにくい時代ですね。

 
中沢:そもそもモンキーってはじめはフルオーダーでしたよね?

 
今泉:それしかなかったんで。うちはロードレーサーの店としてはじまって、ツーリングバイクやキャンピングもオーダーで作ったりして。マスプロダクツでは作れないものをやろう、と。

日本のメーカーも元気な頃はそういうジャンルもすべて作っていましたけど、工業製品だからシートサイズはある程度の範囲でやらなくてはならない。

それを細かく作れるのがオーダーメイドでした。別にハンドメイドの方が上とかそういう意味ではなくて。

 
中沢:自分がメッセンジャーをやっていた昭和の頃、トップチューブが曲がっている自転車に乗ってきた人がいたんですけど、それがモンキーっていうオーダーフレームのMTBだと聞いて。オーダーで作るなんて、ロードみたいだな、と。言葉は悪いけどMTBってもっといい加減なものだと思っていたから(笑)。

最近、中沢さんが所有するMTBの中で登板率の高いこちらの2台。トランジションのスマグラーとモンキー98ST7。ともにローカルトレイルを走り込むことで生まれたバイク。

今泉:いい(よい)加減なんですよ(笑)。フレームを作る上での肝はどこなんだろうって興味を持ったとき、MTBはヘッドチューブ長がフレームサイズだと思ったんです。ロードはシートサイズで切るけど、それは平滑な路面を一生懸命走るスタティックなスポーツだから。

対して、MTBはダイナミックに乗る自転車。サイズは動かしやすければいいじゃんって。当時はまだフォークはリジッドでしたから、5mm刻みでヘッドチューブ長変えてみたり。それがうちのオーダーでした。

 
中沢:山に入ると前側が重要になってきますよね。

 
今泉:リジッドフォークからサスペンションフォークに変わり、ただの緩衝装置からさらに進化してライダーの腕の代わりになったり、体の動きをカバーできるものになり。

その流れの中で、ヘッドチューブ長はうちのオーダーフレームでもある数値に固定化していきました。それをひとつの単位にまとめることでレディメイドが誕生しました。

 
中沢:機材がよくなったことで万人が乗れるものができた、ということですね。

 
今泉:売るために標準的なものを作るのではなく、オーダーの切り分けからひとつの単位が見えて、そこに集約することでレディメイド化できただけで。

 
中沢:26インチに乗っても27.5インチに乗っても、サスのストロークが違ってもモンキーはフィーリングが似てるんですよ。

 
今泉:個性を崩さない中でもの作りをするためには最終的には数値が重要になってきます。それをこの20年やってきました。

 
中沢:ノリさんがスチールにこだわる理由も興味深い。

 
今泉:それはすごく誤解! きっかけがあったらアルミのモンキーも作っていただろうし、オートクレープの大きな釜を持っていたらカーボンでもよかった(笑)。

 
中沢:でも、それってモンキーがやることじゃないですよね?

 
今泉:メーカーがやれることをやっても意味はありませんし。自分たちにとって一番自由度が高かったのがスチールで、結果的にそれを超える素材がなかった。

素材として古くならないし、鉄材は比重の問題で重たくはありますけど、4130クロモリは自転車の材として基準になるはずです。

3.0タイヤを履いた2台のモンキー(98STプラス3.0&98Nプラス3・0)でトレイン! この日は今泉さんのホームトレイルで試走しながら、このフレームが誕生した背景を探る中沢さん。

中沢:ここにきてリム幅が広がってタイヤが太くなったりしていますけど、どうですか?

今泉: サスバイクが進化する中、ファットバイクはアンチテーゼとしてファッション的に流行しましたけど4.0以上は手に余る。

整理していったら3.0くらいのボリューミーなタイヤがおもしろい、と。いまの技術の中でバランスよく遊べる道具を量産メーカーの技術者たちは考えるわけですよ。

 
中沢:飽きないですかね? 

 
今泉:ファットに飽きたところで出た結論が3.0?

 
中沢:自分は2.4、太くても2.6でいいかと。

 
今泉:それは乗れる人だから。別にへたくそでもいいんですよ。ちゃんと理解して遊び道具として使えば。着地点って流行が影響する部分もあるから。

 
中沢:モンキーが持っている別の面も出せますよね?

 
今泉:ファットバイクの流れの中で静観していたんだけど3.0くらいはいいかな、と。初心者がフルサスまで買わなくてもタイヤの恩恵が受けられるし、タイヤ自体も進化しているから太く見えてもこぎは軽い。上手くいえないけど可能性のあるサイズだと思うんですよ。

 
中沢:なぜかハッピーになりますよね、単純に空気がたくさん入っていると。ちなみに製作する上で苦労した点とかありますか?

右は量産モデルの98ST7(440mm)をベースに製作されたプラスタイヤ仕様のプロトタイプ、98STplus3.0。左は生産される3.0 対応フレームのひな形となる98Nplus3.0。

今泉:いろいろあるんですけど、このプロト(写真:右)はハンガー部分を切りはずして83mmに、エンドも150mmに作り直して、チェーンラインも昔のフリーライド系と同じで試したり。

その後にブーストでこっちの生産用のひながた(写真:左)を起こして。

まわりはいろいろと言うけど考えている方は意外と大変。最初はなんで148mmエンドにするのか疑問もあったけど、いろいろ検証している内に腑に落ちました。

進歩のピッチは早すぎるけど、ユーザーの要望もすごく強烈だから。それに応じて進歩させなくてはならないのもわかります。

 
中沢:正常進化ですよね、乗りながらこうしたほうがいいと。

 
今泉:うちはレボリューション的な意味の進化ではなく、一歩ずつ進歩していく感じで。メーカーさんはレボリューションじゃなくちゃダメだ
けど(笑)。

 
中沢:ライダーの歩幅が大切なんですよね。前も話に出ましたけど、人間の体は変わっていないんだし。いまワールドカップを走っているようなバイクに乗ると怖さを感じることもあるんです。下りでちょっとサスを動かしたときに圧倒的な加速感があって。

 
今泉:F‐1ですからね、クルマでいえば。

 
中沢:個人的な好みなんですけど、ほどよい加減というかローカルトレイルで開発しているブランドのバイクってどれも乗りやすいんですよね。トランジションとかロッキーマウンテンとか、あとコナも。

 
今泉:最初のときにも話しましたけど、武器と道具は違う。

 
中沢:バイクを買う側もブランドのアイデンティティを知った上で選んだら、もっとおもしろく乗れるかもしれませんね。あ、別にF‐1に乗ってもいいんですよ(笑)。

 
写真:村瀬達矢 文:トライジェット

『MTB日和』vol.34(2018年5月発売)より抜粋

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