ブライアンの自転車備忘録 vol.6

究極にシンプルながら、かくも奥深き乗り物、自転車。楽しみ方から歴史、モノとしての魅力、そして個人的郷愁まで。自転車にまつわるすべてに造詣の深いブライアンが綴る「備忘録エッセイ」です。

目指せグローブトロッター
荷造りの達人になろう

とても暑いのだけれど、夢をバッグにいっぱい詰め込んで自転車の旅をしたくなる夏がやってきました。旅のイメージを掻き立てるサイドバッグをフル装備した自転車。

でも、その前に少し考えてみましょう。
 
荷物を積むということは、自転車の重量をアップさせることです。自転車は軽いほうが絶対にうれしい。乗る人の重さにも同じことがいえるのですが、これをすぐに軽量化することは難しいですね。

しかし荷物は、工夫することで、よりコンパクトにより軽くすることも可能です。

何度か旅することで、旅先で困らないために、本当に要るものと要らないものを見極めるノウハウができてくるでしょう。仲間の旅の達人に訊いてみるのも方法です。言われて久しい断捨離、ミニマリストの考えを旅の荷造りにも反映させましょう。
 
まず、自転車の不調に対処するための工具。パンク修理用のスペアチューブを代表に、輪行にも使えるコンビネーションツールなどは必要不可欠です。

一方、ヘッドやBB等の専用工具は万一の際には便利ですが、活躍する確率が低い割には重たい工具です。それよりも普段のメンテナンスをしっかりしておくことで、持参する必要性を減らせます。

また、旅先で焦って慣れない工具を振り回すのなら、自転車店を探すほうがオススメです。場合によっては、残念ですけど、あきらめて輪行で帰途に就く方がいいかもしれません。

乗る人の不調の際に必要となる救急用品も同じです。消毒液やバンドエイドは、ケガに対処するためにはマストですが、それ以上のことなら病院を訪ねることも必要。旅においては引き返す勇気も大事です。

また、共有できそうなものは、一緒に行く仲間たちと分けあって持つのはいかがですか。あまりオススメはできませんけど、700Cの自転車の場合、タイヤが少し太いくらいなら、細めのチューブで応急処置として兼用することも可能です。

そして衣類。着替えはすぐ乾く素材を選び、出先でお洗濯をする労をいとわなければ数も減らせます。洗濯できるくらい余裕のあるスケジュールを立てましょう。

ロードバイクの普遍化で、サイクルジャージは以前ほど奇異な印象を与えなくなりました。自転車にはとても効率的なウエアなのですが、やっぱり普通には特殊な出で立ちです。

ジャージで出かけるならば、行き帰りの輪行などのシーンにおける〝社会復帰ウエア〟も忍ばせておきたい。カジュアルに見える自転車用ウエアもあるので、それらを選ぶのもいいでしょう。
 
そのほか必要なものは、登山用品のお店で探してみるのも楽しい。自転車用アイテムと同じように軽量コンパクトを追求した用品ですので、キャンプツーリングをするなら便利なものが多いです。所有感を満たす存在感のある商品もありますよ。
 
このように厳選した道具たちは、思っていたよりコンパクトにまとまっているはず。バッグもひとつ減らせるでしょう。
 
自転車はクルマと違って、乗る人が乗り物よりもはるかに重いものです。そして自転車乗員が乗って走ったとき、その自転車が求める走行性になるように設計されています。

そのため、重い乗員と荷物が近くにあればあるほど、走行性能が変化しないと言えます。

乗り物は一般的に、重心が低いほうが安定すると言えるのですが、自転車は乗った時点ですでに重心が高くなっています。

この重心の高さは設計時に織り込み済みのため、自転車の走行安定性に寄与しているわけで、荷物の重心が高くなった場合でも、必ずしも安定性が崩れるわけではありません。それでもやはり荷物を積むと、普段とは走行性が変わります。

たとえば輪行時には、慣れない道を、荷物を積んだ慣れない状況で走ることになるわけです。それよりは、荷物を積んだ走行感を、あらかじめデモンストレーションで体験しておくほうがいいでしょう。

まだ舗装されていなかった、乗鞍スーパー林道での下り道。パンパンに詰め込んだサイドバッグの重さにハンドリング性が大きく変わり、カーブを曲がり切れずに、ガードレールをこすり続けて怖い思いをした経験によるアドバイスです。
 
いずれにしても、まずは小さな旅から始めて自分なりのノウハウを見つけることが肝要です。

続けていけば、将来はステキなグローブトロッターになれるかもしれない。
 
それでは、 bon voyage!

Profile

ブライアンこと内藤常美(ないとう・つねよし)

そうそうたる方々も在籍する大学サイクリング部OB会に所属してます(ブライアンは右から2番目)。

リムやラレー、ツバメ自転車でも知られる 新家工業・営業本部勤務。溢れる自転車愛とエモーショナルな語り口の、知る人ぞ知る業界の重鎮。「ブライアン」の由来は、入社間もない頃に行った英会話教室でのニックネーム。英会話は身に付かなかったものの、当時の仲間とは30年経った今もいい仲間。
【新家工業】

『自転車日和』vol.41(2016年7月発売)より抜粋

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