写真と文:星野哲哉
サッカー観戦のついでに鉄道廃線跡と島へ行ってきた
愛知県豊田市まで輪行し、2004年で廃止された、名鉄三河線の猿投(さなげ)駅~西中金(にしなかがね)駅の跡地を自転車でめぐり、豊田スタジアムでサッカー観戦。翌日は、愛知県西尾市にある一色港から、三河湾に浮かぶアートの島―佐久島へ渡り、ノンビリと島内を自転車で走ってから帰路に就いた。
レールと駅舎が残る廃線跡を自転車で巡る
昨年末に、Jリーグ最終戦「名古屋vs浦和」を観に行ってきた。場所は、愛知県豊田市にある豊田スタジアム。当然、自転車も一緒だ。朝早くの新幹線で豊橋駅まで行き、名鉄に乗り換えて豊田方面まで、輪行で向かった。
豊田に近づくにつれて、サッカー観戦客で車内がいっぱいになっていく。スタジアム最寄りの豊田市駅で、ほとんどの人が降りていくが、私の目的駅は、二つ先の終点、猿投駅だ。
スタジアムの最寄り駅を通り越してここまで来たのは、行ってみたいところがあったからだ。今でこそ名鉄三河線の終点は猿投駅だが、少し前まではこの先も走っていたらしい。しかし廃線になってしまったので、その跡地を見に行こうというわけだ。
全国各地には、廃線跡を利用してサイクリングロードにしているところがある。名鉄三河線の廃線跡は、残念ながらそのようにはなっていないが、駅があったところには、まだレールとホームが残っている。中には、駅舎を利用してカフェを営業しているところもあった。何も思い出がなくても、廃線跡を見るとなぜかノスタルジーを感じる。今後、これらの跡地はどのようになっていくのだろうか。できれば、観光資源として残ってくれたらいいのだが。
かつての終点、西中金駅の跡地まで来たら、なかなかいい時間になってしまった。急いで豊田スタジアムまで走り、試合を観戦した。結果は0対0の引き分け。終了後は、予約したホテルがある三河安城まで、豊田安城サイクリングロードを走って向かう。豊田安城サイクリングロードは、水路沿いと暗渠化された水路の上を利用して整備された道だ。自動車を気にせず走れるので便利だが、12月ともなるとかなり日が短い。あっという間に暗くなった中、自転車の灯りを頼りに、約1時間かけてホテルにたどり着いた。
なぜ自転車で島へ?そこに島があるから
翌日は安城市から南下して海まで走り、西尾市にある一色港から渡し船で佐久島へ渡った。佐久島は三河湾に浮かぶ小さな島で、アートが売りの島。今回の計画を立てているときに、地図の下の方に目を動かしたときに気になったところだ。島といえば自転車。自転車といえば島。と個人的に思っているので、行く方向で計画を立ててみた。
島に行く場合に最も大切な点は、渡る船の時刻表だ。佐久島へ行く時刻表を調べると、ちょうどよい時間帯の発時刻は9時30分と11時30分の二つ。一日を有効に使うためには、9時30分には乗りたいところだ。ホテルから渡し船乗り場まで、1時間以上はかかりそうなので、遅くても8時にはホテルを出発しなければならない。それにもかかわらず、前夜にサッカー仲間と遅くまで呑みすぎてしまったため、朝起きることができなかった。結局チェックアウトギリギリになり、11時30分の渡し船に乗ることになった。
船の中は、足の踏み場もないほどの超満員。自分みたいに自転車と一緒の人もいる。意外と多かったのが、釣り道具を持っている人だった。
島へは20分ほどで到着。小さな島なので、ガンガン自転車をこいだら、あっという間に一周してしまう。いたるところにアート作品が立ち並んでいるので、ちょこちょこ止まりながらノンビリと走った方が楽しめる。乗降場のそばにはレンタサイクルもあったので、手ぶらで行って自転車を借りるぐらいがちょうど良いかもしれない。
島では海の幸をいただいたりぼーっと海を眺めたりして、のんびりとした時をすごした。今まで、大小さまざまな島に行ったことがあるが、島の時間はゆっくり流れている気がする。そんな空間がとても好きだ。またどこか別の島へ行ってみよう。
Profile 星野哲哉
『自転車日和』vol.61(2022年5月発売)より抜粋