実録リアル自転車ライフ vol.24

写真と文:星野哲哉

今回はその辺をブラブラと走ってきただけの話

梅雨の晴れ間を狙って、ちょっと身体を動かしてくるか、ぐらいの感覚で走ってきた。観光スポットも激坂も自然も何もないが、一生懸命走るだけが自転車じゃない、という原点を思い出した。

久しぶりの100㎞ライドで心地よい疲労感を味わう

自転車といえども、コロナ禍の中遠出をするのは気が引けたので、乗るにしても荒川を河口まで行って帰ってくるぐらいだった。

緊急事態宣言が解除され、都道府県間の移動も解禁されるようになって、ようやく後ろめたい気持ちを持たずに走れるようになったので、隣県の埼玉県まで走りに行ってきた。

そもそも、家から会社のある新宿より県境の方が近いのだが。

走ったのは、荒川を上流へ行き、45㎞ぐらいのところで東方面へ進路をとり、北本市内を抜けて緑のヘルシーロードへ。南下して芝川自転車道を経由して帰ってくる、約100㎞ぐらいのコース。

中山道北本宿の碑。鴻巣に移るまで宿駅として賑わっていた。

家から荒川へ向かう道。赤羽と川口市を結ぶ都県境の橋につながる道が、いつもより混んでいた。移動が解禁されて、皆どこかへ出かけようとしていたのだろうか。

それに比べて、サイクリングロードはのどかだった。

途中から、普段の道が工事のため迂回して、住宅街や田んぼのあぜ道に毛が生えたような道を走ると、家族連れでサイクリングする人や、ノンビリと散歩をする高齢の方などが多くいた。

歩行者は右で自転車は左となっているけど、狭くないですかね?

荒川左岸は獣道のような道が多い。

荒川右岸沿いにあるホンダエアポートを、川を挟んで反対側から眺める。

100㎞ぐらいを走ったのは、2ヶ月半ぶり。想像以上に身体にきた。この全身にずっしりとくる独特の疲労感は、自転車じゃないと味わえないものかもしれない。なんだか懐かしい感じがした。

ロードバイクにまたがってしまうと、ついつい走りすぎてしまう。「こまめに補給を取りましょう」とか、あらゆる人が言っている基本中の基本を、当然わかっているのだけれど、走っていると「まだまだ平気」って感じで走り続けてしまう。気をつけないと。

Jリーグ再開前の埼玉スタジアム。

出発したのが昼過ぎだったため帰ってきた時には日が沈みかけていた。

ロードバイクでゆっくり
走ってもいいじゃない!?

翌週。梅雨の晴れ間に、またどこかに走りに行きたくなった。中止になった富士ヒルクライムのコースを登ってみるのも良いかもしれない。

高速バスの空席状況を確認してみると、午前中の便はすべて満席。それじゃあ、電車で行こうか。などと、計画を立てるのも久しぶりな感覚だ。

しかしここにきて、東京都の新型コロナの新規感染者数がまた増え始めてきた。やっぱり、むやみに出かけるもんじゃないのでは? と考えだして、いつまでもうじうじとして決まらずにいたところに、妻の助言が。

「そんなところは、また来年とかに開催されたらどうせ行くでしょ。こんな時だからこそ、近場をブラブラっていうのも良いんじゃないの」

確かに。ロードバイクに乗っていると、どうしても長い距離を走ったり、坂を登ったりしたくなってしまうが、たまにはそういうのも良いかもしれない。

隣の板橋区に「植村冒険館」というものがあるのを見つけた。冒険家・植村直己の業績を紹介しているらしい。ちょっと面白そうなので、行ってみることにする。

そういえば、周辺に東京大仏なんてものもあったはずだ。そこまで行ったら、豊島園の方に行ってみよう。この夏で閉園してしまうし。

そんな感じで、なんとなーく行くところが決まった。ざっくりと地図を見て、それぞれの位置関係を把握して出発する。

中山道の志村一里塚。国道17号沿いの両サイドに現存する。

40分くらい走って、植村冒険館に到着。この日は、植村直己さんが行方不明になったマッキンリーに残された記録の展示を行っていた。

山頂に残された旗や、発見された装備、最後の日記など、当時のことがつぶさにわかる物が展示されていた。気付けば50分くらい堪能していた。

住宅街の真ん中に建っている植村冒険館。

次の東京大仏までは、20分ほどで到着。名前は聞いたことがあったけど、これまで行ったことはなかった。建てられたのは40年ぐらい前とのこと。想像していたよりも立派な大仏で驚いた。

板橋区赤塚にある東京大仏。青銅製の大仏では奈良・鎌倉に次ぐ3番目の大きさらしい。

20分ほど滞在して豊島園方面へ向かう。少し道に迷ったりしながら、40分ぐらいこいで入場門の前へ。

途中通りかかった光が丘公園。公園内には初心者でも利用できる弓道場があった。

一度も来たことがなく、初めて来たのが自転車で外周をぐるっと廻るだけとはいえ、子供のころから名前は聞いている有名な遊園地が閉園というのは、やっぱり寂しいものがある。

8/31で閉園となる豊島園。園内から楽しそうな声が聞こえた。

38㎞を4時間40分で走るノンビリ旅。思った以上に楽しかった。スピードを出して遠くまで走るのもいいが、家の周辺を走って新たな発見をするのもまた、良い。今度はどこへ行こう?

 

Profile 星野哲哉

別の編集部で働くアラフィフ社員。自転車の他には、サッカー観戦が趣味。コロナ自粛から再開し、少人数ながら観客を入れはじめた試合に行ってきた。6万人収容スタジアムに3000人だけで、基本的に声はなく拍手のみという環境だったが、生でスポーツ観戦ができるありがたさを痛感した。

『自転車日和』vol.56より抜粋

- 連載, ロードバイク