【MTB】初心者必見!「備えあれば憂いなし」を約束するアイテムとは?

プロが教えるトレイルライドの必需品

トラブルにすべて対応
バイクパークなど、周辺施設が整っているMTB 専用フィールドと異なり里山のトレイルライドでは、マナーやノウハウ、適応力が求められます。他者に迷惑を掛けず、自力で安全に帰ってくるための装備は欠かせません。

 

AST店長 高山さん
指南役はMTB&BMXのプロショップとして、これまで多くのライダーをサポートしてきたASTパパ。MTB初心者でも挑戦しやすい、整備のコツをレクチャーしてくれます。

AST
埼玉県和光市白子1-24-21 ☎︎ 048-461-2370
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走る場所や距離で装備を選ぶ

自然の山の中で起こり得るさまざまな状況を想定する

MTB専用の環境が整えられたフィールドでは、バイクにメカ的なトラブルが発生したとしても、バイクを押してピットや駐車場まで戻ってくればよし。定期的にパトロールが巡回しているコースであれば、怪我を負って動けない状況になったとしても、応急処置や搬送など、適切な対応をしてくれるので安心です。

対して、自然の山に入っていく場合は、起こり得るさまざまな状況に対応できるだけの装備を携帯して出かける必要があります。

©YAMABUSHI TRAIL TOUR

そもそも山道では、専用コースと同様のスポーツ走行は厳禁。特にハイカーをはじめとする、さまざまな人たちとシェアしている道では、接触により他者に〈怪我を負わせない〉ことはもちろん、マウンテンバイカー自身が〈怪我を負う〉ことも基本的に許されません。

山道には救急車を呼べない場所も多く、仮に呼べたとしても周辺の方々に多大な迷惑を掛ける可能性があります。たったひとりのマウンテンバイカーが事故を起こすことによって、その周辺エリアでMTBを走らせることができなくなる……そんな最悪のケースも考えられるのです。

とはいえ、実際にはなにが起こるかわかりません。どれだけ安全に気を使っていたとしても、回避できないトラブルが発生することもあります。そんなとき、自力で安全に街や駐車場まで戻るためには、最低限の知識と各トラブルに対応するための装備が必要です。

そこで今回は、高山さんがトレイルライドやガイドツアーに出かける際に携帯していくアイテムの数々をご紹介。すベてに装備する理由があるので、自分のライドスタイルと照らし合わせながら「これは持っておきい!」と思うアイテムをセレクトしてみて下さい。

 

半日~ワンデイのライドなら14L サイズのバッグでOK

高山さんがトレイルライドやガイドツアーに出かける際に使用しているバックパック。14Lサイズの比較的コンパクトなアイテムだが、里山を含む低山のトレイルライドであればこの容量が丁度いいとのこと。また、背負うことで背中のダメージを軽減するプロテクターの役割も果たしてくれる。

天候の急変時でも内容物を濡らすことのない、レインカバー内蔵タイプのバックパックがオススメ。

 

MTB のトラブルといえばコレ パンクに対応する装備の数々

近年のMTBはほぼチューブレス化されているため、チューブレスタイヤ専用のパンク修理キットやシーラント、バルブコアを外すツールを携帯。

「シーラントを入れていたらパンクしても大丈夫なのでは?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、それは1ミリ以下の小さな穴の場合。大きな釘やネジなどの異物が刺さった場合やリム打ちによるパンクの場合、シーラントだけでは対応できないこともあるため、専用の補修キットは携帯しておきたい。

 


プライヤー
タイヤに刺さった異物を取り除くときに使用する。折りたためる携帯型が便利。

 


左から
タイヤレバー
バルブコアがシーラントで固着して外れない、シーラントでバルブが詰まってしまっている場合、ビードを一部外してシーラントを注入する。

バルブコア外し
シーラントが漏れて不足した場合に使用。バルブコアからシーラントを注入するときに必要となる。

タイヤ補修ツール
補修用プラグをパンク穴へねじ込むときに使用する。

タイヤ補修プラグ
パンク穴を塞ぐためのプラグ。ひも状のものが主流。

 


シーラント
タイヤを回転させて1 分しても空気の漏れが止まらない場合、すでにシーラントが不足してしまっている可能性が高い。少量のシーラントを携帯しておき、補充することで穴を塞ぐ。それでも解消されない大きな穴が空いた場合は、タイヤ補修キットにて修理をおこなう。

 


携帯ポンプ
タイヤの空気が完全に抜けてしまった場合、小型の携帯ポンプではなかなか空気が入らない。高山さんの場合、全長30 センチほどのやや大きめのポンプを持ち歩いている。フットポンプとして使用できるタイプが便利だ。

 

チューブレスタイヤでも起こるリム打ちパンク

「チューブが入っていないんだからリム打ちパンクはないでしょ?」と決めつけるのは早計。
頻繁ではないにしろ、タイヤインサートを装着していない車両の場合、実際に起こり得る事象だという。

 

その他のバイクトラブルに対応するツール&アイテム

ハンドルを木にヒットさせたり、転倒した際にハンドルやレバー類の取り付け角度が動いてしまうなど、さまざまなトラブルが想定できる。

リアディレイラーも同様で、高山さんは「ディレイラーハンガーの予備はなるべく持っていた方がいいでしょう」と指南。

また、12速化されたドライブトレインが搭載されたモデル、チェーンに強い力が掛かるE-MTBを使用するマウンテンバイカーの場合、チェーン切れが起きる可能性も想定しておくべき。

 


アーレンキーセット1
各部ボルトの締め直しに必要。折りたたみ式の携帯工具でも構わないが高山さんの場合、使いやすさを重視してこのタイプを持ち歩いている。

 

 


アーレンキーセット2
通常のアーレンキーセットにはT25に対応するツールが付属しないため、T25のほかプラス&マイナスドライバーを含む、ビットタイプの携帯ツールも使用している。

 

 


チェーンツール
チェーン切れを起こした箇所のピンとプレートを外す際に必要。

 


ディレイラーハンガー
転倒後の変速の不調は、ディレイラー本体の破損よりもディレイラーハンガーの曲がりが原因であることが多い。

 


チェーンリンクプライヤー&チェーンリンク
予備のチェーンリンクを収納できるチェーンリンクプライヤー。

 


チェーンギャップアジャストメントゲージ
スラムのリアディレイラーを適正化する調整に必要なツール。

 


結束バンド
レバー類のクランプを破損した場合に仮固定したり、さまざまな場面で活用できるMTB ライフの必需品。

 


ワイヤーロック
なんらかの理由でMTB から離れなくてはならなくなったときに必要。もちろん、コンビニ等での寄り道にも大活躍。

 

パッキングも重要!?

ツール類は使用頻度やカテゴリーに合わせて分けて収納しておくのが◎。
緊急時に「あれはどこに入れてたっけ?」などの状況はトラブルの連鎖を引き起こし兼ねません。
使用頻度の低いアイテムはバッグの奥へ、使用頻度の高いアーレンキーなどは、アクセスしやすい表のポケットに収納すべし。

 

乗り手の怪我やリカバリーに対応するアイテムも忘れずに

夏場のトレイルで厄介なのが蚊やブユ、蜂や毛虫など、毒虫たちの存在。

虫除けと虫刺され薬は必須で、可能であれば刺された際の毒を吸い出すポイズンリムーバーも携帯しておきたいところ。なるべくお世話になりたくはないが、転倒による擦過傷や打撲、脱臼に対応するアイテムも用意しておけば安心だ。

標高差のあるツアーに参加する場合などはポケッタブルタイプのジャケット、長時間走る場合は補給食&水分も携帯して出かけるべし。


ポイズンリムーバー 虫刺され薬 虫除け

 


ファーストエイドキット
絆創膏各種、三角巾、ガーゼ、包帯、湿布、固定用テープ、鎮痛剤など。

 


ポケッタブルジャケット

 


使い捨てカイロ エマージェンシーブランケット

 


補給食各種

 


その他日用品
ティッシュ、ウェットティッシュ、ビニール袋、ジップ付き保存袋、手ぬぐいなど。手ぬぐいやビニール袋は三角巾と同様、四肢の固定にも利用できる。

 


動物よけの鈴
自然の山に入る場合は、野生の動物に遭遇する危険性も。特に熊は 要注意。

 


メモ帳&ペン
万が一の遭難時に自分が走った軌跡を他者が分かるように文字で残しておくことが可能。

 


フェイスシールド
人工呼吸時の感染予防対策に有効な携帯人工呼吸用シート。コンパクトにまとまるキーリングタイプが便利。

 

ボトルはなるべく2本体制で

2本のボトルの内、ひとつはスポーツドリンク等ではなく、必ず水を入れておく。
水は飲料用になるだけでなく、傷を洗い流すなど、さまざまな場面で活用することができるためだ。

 

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.50(2022年8月発売)より抜粋

 

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