2020 フルサス E-MTB インプレッション part.4

欧州のそれとはひと味違う、独自のオフロードサイクリングカルチャーを背景に持つ日本のMTBシーン。当然、E-MTBが浸透する速度、そしてマウンテンバイカーたちの受け止め方も変わってきます。今回は、日本でも徐々に普及しつつあるE-MTBの本質に迫るべく、ドライブユニットが異なる4台のフルサスモデルをピックアップ。E-MTBならではの魅力について再検証してみたいと思います。

圧倒的なスケール感を誇るまさにE-MTBの究極の形

TREK Rail 9.7

カナダで初開催されたE―MTB世界選手権でも、その輝かしいリザルトによって実力は証明済み。

世界のE―MTBシーンを牽引する存在として、レイルはもっとも注目される存在となった。

スラッシュ譲りのジオメトリーを持つフルカーボンフレームには、鋭いレスポンスで俊敏な加速を生み出すE―MTBとしてボッシュが設計したドライブユニットを搭載。

組み合わせる160㎜トラベルのサスペンションフォーク、29×2・6サイズのタイヤを履いた足まわりからも走破力の高さは容易に想像がつく。

そこにピボットを後輪軸と同一化させたサスペンションシステムほか、トレック独自のテクノロジーを余すことなく投入しているのだから、ポテンシャルの高さに疑問を抱く余地はない。

フレームにバッテリーを内蔵する洗練されたフォルムも然り。

マニアをも高揚させる装備とスペックは、すべてのマウンテンバイカーに所有するよろこびを与えてくれるはずだ。

モーターはボッシュの新型ドライブユニット、パフォーマンスライン CX を搭載。重量は25%も軽くなり、体積は48%の小型化を実現した。

視認性に長けた大型ディスプレイが特徴となるコントローラー。乗り手が必要とする力を正確にアシストする「EMTB」モードが採用された。

ピボットを後輪軸と同一化させることでブレーキ操作時にサスペンションの動きを妨げないシステム。独自開発したRE:aktivダンパーも装備。

SPECIFICATIONS

フレーム カーボン
サイズ S、M 、L
重量 21.83kg(M)
フォーク ROCKSHOX YARI RC(160mmトラベル)
リアユニット ROCKSHOX DELUXE +
変速 1×12speed
コンポーネント SRAM NX Eagle ほか
タイヤ BONTRAGER XR5(29× 2.60)
カラー スレート×トレックブラック
ドライブユニット BOSCH Performance Line CX
一充電走行距離 最長140km

価格:79万円(税別)

問:トレック・ジャパン
https://www.trekbikes.co.jp/

怒濤の加速フィールでハードなシチュエーションもパワフルに走破

サスペンションが動く度に車体を前へ、前へと進ませようとする味付けは印象的。フラット感を保ちながら簡単にスピードが上がっていきます。

今回、試乗した4台の中で、明確に一番速いバイクでした。とにかくトルク感がすごくて、一番上のターボモードでは正直、パワーを持て余したくらい。

日本の山道にありがちな細かなターンを繰り返すトレイルよりも、一気にスピードを乗せて、一気に乗り越えていく、そんなMTB専用にコース化された場所に持ち込んで、思いっきり走らせてみたいですね。

その方が安全に、このバイクの本領を発揮できますから。その下のEMTBモードでさえあり余るトルク感があり、普段自分が走っているローカルの丘陵地帯なら、もうひとつ下のモードでもアシストの恩恵が受けられそう。

入力に対するモーターのレスポンスも鋭く、斜面で一度止まった状態からリスタートするときも瞬間的に強い力が掛かるため、それを上手く使えれば間違いなく武器になるはず。

逆に片足を地面につけた停車状態から、ペダルに対して不用意に力を加えるのはNG。アシストの反応がよすぎて、乗り手の身体が置いていかれちゃいます。

このパワーを使いこなせるフィールドであれば、ちょっとした木の根や石を使って、ワンアクションで大きく飛ぶような乗り方だってできるはず。

速さとパワーを活かすための装備を使って、スケール感の大きな走りを満喫したいですね。

 

Profile

CSナカザワジム 店主 中沢 清さん
トレイルライドのパートナーとして、五輪2大会に出場したXCO女子日本代表の小田島梨絵さんをはじめ、多くのマウンテンバイカーをサポートしてきた中沢さん。この冬には、楽しくトレイルを走り安全&気持ちよく帰路につくノウハウやバイクセッティング(※ジャンプ、コーナリングテク云々ではありません)を凝縮したオリジナルのスクールをスタート予定。興味にある方はCSナカザワジムまで問い合わせを!

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.43(2020年8月発売)より抜粋

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