欧州のそれとはひと味違う、独自のオフロードサイクリングカルチャーを背景に持つ日本のMTBシーン。当然、E-MTBが浸透する速度、そしてマウンテンバイカーたちの受け止め方も変わってきます。今回は、日本でも徐々に普及しつつあるE-MTBの本質に迫るべく、ドライブユニットが異なる4台のフルサスモデルをピックアップ。E-MTBならではの魅力について再検証してみたいと思います。
圧倒的なスケール感を誇るまさにE-MTBの究極の形
TREK Rail 9.7
カナダで初開催されたE―MTB世界選手権でも、その輝かしいリザルトによって実力は証明済み。
世界のE―MTBシーンを牽引する存在として、レイルはもっとも注目される存在となった。
スラッシュ譲りのジオメトリーを持つフルカーボンフレームには、鋭いレスポンスで俊敏な加速を生み出すE―MTBとしてボッシュが設計したドライブユニットを搭載。
組み合わせる160㎜トラベルのサスペンションフォーク、29×2・6サイズのタイヤを履いた足まわりからも走破力の高さは容易に想像がつく。
そこにピボットを後輪軸と同一化させたサスペンションシステムほか、トレック独自のテクノロジーを余すことなく投入しているのだから、ポテンシャルの高さに疑問を抱く余地はない。
フレームにバッテリーを内蔵する洗練されたフォルムも然り。
マニアをも高揚させる装備とスペックは、すべてのマウンテンバイカーに所有するよろこびを与えてくれるはずだ。
SPECIFICATIONS
フレーム | カーボン |
サイズ | S、M 、L |
重量 | 21.83kg(M) |
フォーク | ROCKSHOX YARI RC(160mmトラベル) |
リアユニット | ROCKSHOX DELUXE + |
変速 | 1×12speed |
コンポーネント | SRAM NX Eagle ほか |
タイヤ | BONTRAGER XR5(29× 2.60) |
カラー | スレート×トレックブラック |
ドライブユニット | BOSCH Performance Line CX |
一充電走行距離 | 最長140km |
価格:79万円(税別)
問:トレック・ジャパン
https://www.trekbikes.co.jp/
怒濤の加速フィールでハードなシチュエーションもパワフルに走破
サスペンションが動く度に車体を前へ、前へと進ませようとする味付けは印象的。フラット感を保ちながら簡単にスピードが上がっていきます。
今回、試乗した4台の中で、明確に一番速いバイクでした。とにかくトルク感がすごくて、一番上のターボモードでは正直、パワーを持て余したくらい。
日本の山道にありがちな細かなターンを繰り返すトレイルよりも、一気にスピードを乗せて、一気に乗り越えていく、そんなMTB専用にコース化された場所に持ち込んで、思いっきり走らせてみたいですね。
その方が安全に、このバイクの本領を発揮できますから。その下のEMTBモードでさえあり余るトルク感があり、普段自分が走っているローカルの丘陵地帯なら、もうひとつ下のモードでもアシストの恩恵が受けられそう。
入力に対するモーターのレスポンスも鋭く、斜面で一度止まった状態からリスタートするときも瞬間的に強い力が掛かるため、それを上手く使えれば間違いなく武器になるはず。
逆に片足を地面につけた停車状態から、ペダルに対して不用意に力を加えるのはNG。アシストの反応がよすぎて、乗り手の身体が置いていかれちゃいます。
このパワーを使いこなせるフィールドであれば、ちょっとした木の根や石を使って、ワンアクションで大きく飛ぶような乗り方だってできるはず。
速さとパワーを活かすための装備を使って、スケール感の大きな走りを満喫したいですね。
Profile
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.43(2020年8月発売)より抜粋