MTBレースの原点とも言えるXCレースは、1990 年にUCIワールドカップ種目となり、レース形式や機材規定のさまざまな変遷を経て、今日のようなスタイルになっています。ここでは現在行なわれているXCレースについて紹介しましょう。
コアなバイクファン向けから誰もが楽しめるレースへ
ひとりずつ走ってタイムを競うダウンヒルに対し、多いときには200名ほどが一斉にスタートして勝敗を競うクロスカントリーレース。
過去には1周10㎞以上あったり、メカトラブルでも人の手を借りての修理や機材交換ができないなど「自分だけが頼り」というサバイバル要素を持っていましたが、ワールドカップを始め世界のトップクラスが出場するレースには、熱心なファンが応援に駆けつけていました。
1996年にオリンピック種目となりTVコンテンツとして確立し始めると、それに適したレースフォーマットが整えられ、コースも昔のように丘を登り下りするだけでなく、ジャンプやロックガーデンなどテクニカルで見応えのあるレイアウトが設けられるようになり、さらに多くのファンを獲得していきます。日本では多くの自転車レースは基本的に無料で観戦できますが、ワールドカップでは観戦料が必要になることも珍しくありません。
今はインターネット配信もあり、自宅にいながらにしてライブ観戦もできますが、それでも毎戦1万人前後が会場に足を運んでいます。
マウンテンバイクのXCレースあれこれ
XCO
クロスカントリー・オリンピック
文字通りオリンピック種目となっている、最もポピュラーなレース形式。エリートクラスは1周4~10kmのコースを90分~2時間走って順位を競います。セールスにも大きく影響するため、バイクメーカーチームを組織して参戦しています。
XCC
クロスカントリー・ショートトラック
1周約2kmのコースを20~60分走って競います。ワールドカップではXCOのスタート位置を決めるレースとして開催されていますが、日本では昨年、全日本選手権として開催されました。
XCE
クロスカントリー・エリミネーター
1周500~1000mのコースを4~6人で競い、上位2~3人が勝ち抜いていく競技です。海外では公園や市街地で行なわれることが多く、ダートセクションゼロということも珍しくありません。2019年から全日本選手権が開催されています。
XCM
クロスカントリー・マラソン
XCOが30km前後の走行距離で行なわれるのに対し60km~160kmという長距離で競われます。世界選手権に加えUCI公認のシリーズ戦も行なわれており、ヨーロッパでは観る/出るどちらも非常に人気が高いレースです。日本国内では、セルフディスカバリーアドベンチャー・イン王滝や松野四万十バイクレースが有名ですが、UCI公認レースは行なわれていません。
XCレースを観に行こう!
昨年から続く新型コロナウイルスの影響で、MTBレースも開催が困難な状況ですが、無事に開催されることになったら、ぜひ会場に足を運んでみることをオススメします。
XCOレースの最初の見どころはなんといってもスタート。一団となって第1コーナーを目指して飛び込んでくる様は迫力満点です。
またコースにはロックセクションやドロップオフといったセクションがあり、フィジカルの強さだけでなくスキルレベルが勝負の分かれ目になります。雨のレースになれば、さらにテクニックの差が出やすくなるので、時には意外な選手が上位に来ることもあります。
一方、昨年末に行なわれた全日本選手権ショートトラックとエリミネーターは、街中に近い公園内に造られたコースで観戦しやすかったことと、それぞれの競技時間が短かかったこともあり、序盤から激しいポジション争いとコーナーごとの仕掛けあいが繰り広げられて盛り上がりました。
日本のレーススケジュールについては、日本自転車競技連盟(JCF)やMTBリーグのホームページで、随時更新されることになっているので参考にしてください。
その他のXCレース
紹介したXCレースの他にも、世界選手権種目のひとつであるチームリレー(XCR)、ダウンヒルのようにひとりずつ走るタイムトライアル(XCT)、数日間にわたり異なるルートを走るステージレース(XCS)などがあります。また電動アシストMTBによるXCレースも、世界選手権とワールドカップが行なわれています。
WES
2019年から世界選手権に加えられ、昨年からはワールドEバイクシリーズも誕生。DH出身のレーサーも出場しています。
XCS
ステージレースは、南アフリカで行なわれるケープ・エピックのように2名1チームのチームレースとして開催されることもあります。
XCR
世界選手権の初日に行なわれるチームリレーは、男女、年代別カテゴリーが混走するため、出走順も戦略のカギとなります。
写真と文:鈴木英之
『MTB日和』vol.45(2021年2月発売)より抜粋