写真と文:星野哲哉
今回行ってきたのはココ!!
チバニアン(千葉時代)が誕生するきっかけとなった地層が、千葉県市原市にあるということで、正月休み明けの休日に行ってきました。約77万年前に地磁気が逆転した痕跡があるというその地層は房総半島中央部にあり、養老渓谷をはじめとする観光地としても見どころがある地域。サイクリングコースとしても楽しめそうなので、寒さで外に出るのが億劫になる中、輪行で行ってきました。
77万年前にタイムトリップ
冬の房総自転車旅へGO!
ネタがない――。
毎年この時期の連載は、書くネタがない。レースがオフシーズンな上、寒くて外に走りに行くのが億劫になるので、ネタがない。
評論家ぶって、自転車についての持論を展開しようかとも思ったけど、素人の戯言など誰が読みたいのかと思い、却下。
年末年始に、奥さんの実家に帰省するため新幹線に乗った時のこと。座席ポケットに備え付けられた、冊子の記事に目がいった。
「チバニアン」
約77万年前、地球の地磁気は反対だったらしい。北がS極で南がN極と。
それで、その証拠が見られる地層が千葉県にあり、国際的にそれが認められると、その時代の名称が「チバニアン」になると記されている。
その地層がある場所は、千葉県市原市。最寄り駅は、小湊鐵道の月崎駅。少し先には、養老渓谷という風光明媚な観光地がある。
しかもこの辺りは、関東地方の中でも比較的冬でも温暖な土地だ。ここまで条件がそろったら、行くしかない……ですよね……。
朝……とは言えない昼前に出発し、最寄り駅から輪行で内房線の五井駅まで行く。五井駅からは、ローカル線の小湊鐵道に乗車。
数十年前にタイムトリップをしたような古い車両が、のどかな田園を走る路線だ。
上総牛久駅で下車して自転車を組み立てると、時計の針はすでに午後2時(遅い)。あまりノンビリもしていられないので、チバニアンを目指して出発した。
せっかく来たので、一応観光もしてみようと、笠森観音へ。
日本でただひとつの、「四方縣造り」という様式で建てられているという観音堂の中は、時間がないので断念。外から眺めるだけにします。出発が遅れたツケが、こういうところにやってきます。
次に向かったのは、高滝ダム。ダム湖の周りでは、釣りやボートも楽しめる。湖畔の美術館に併設されたレストランで、ピザを食べたかったのだが、この時点で午後3時過ぎ。
日没時刻を考慮すると、食事をしている時間はないのでカット!もっと余裕をもって来るべきだった。
あとは最終目的地、地磁気逆転地層へ行くだけだ。月崎という地名が見えてすぐに、チバニアンと書かれた(ちょっと胡散臭い)看板が見える。
そこを右に曲がって田淵会館というところの奥に、目当ての地層がある。途中で自転車を停め、そこから歩く。かなりの急坂を下りて河原に出ると、地層が見られる崖面がある。
ここまでの道のりは滑りやすいので、至る所に「滑りやすいので自己責任」と書いてある看板があった。軽い気持ちで来て、けがをしたから責任を取れなんて言われたら、たまったもんじゃないしね。
地層には、下から“赤”“黄”“緑” の杭が打ってある。最下部の赤の部分が、磁場が逆転していた時代の地層で、上部の緑が現在と同じ磁場の時代、間の黄は磁場が遷移している時代の地層とのこと。
詳しいことは分からないが、今立っている場所が77万年前は海底だったと考えると、なかなかのロマンだと思う。
最寄りの月崎駅には、午後4時頃に着いた。自転車を輪行袋に入れ、4時42分発の列車で帰る。30分もしないうちに、列車の外は真っ暗になってしまった。
月崎駅で列車を待つ間に行った商店の壁には、各季節の沿線の写真が飾ってあった。菜の花や紅葉、イルミネーションなど、四季折々の風景で彩られている。また今度、春や秋に来てみよう。
ちなみに、正月明けに体重を量ったら、2キロ以上増えていた。
ちょっとやそっと自転車に乗ったぐらいでは、減る気配がまったくない。こっちの方のS(脂肪)は、なかなかN(燃焼)にはなってくれないようだ。
Profile 星野哲哉
『自転車日和』vol.50より抜粋