実録リアル自転車ライフ「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」vol.2

写真と文:星野哲哉
 
今回行ってきたのはココ! !

全日本マウンテンサイクリングin乗鞍

[開催日]
2014年9月7日(日曜日)

長野県の乗鞍高原にて行われるヒルクライムレース。1986年に開始され、今年で29回を数える日本で最も歴史の長いレースである。またゴール地点の標高は2716mで、最高所の自転車レースでもある。募集人員に対し申し込み数が多く、毎年抽選になるため、まずはこの関門をくぐり抜けないと参加することができない、規模においても日本で有数の大会である。

 

最高峰のヒルクライムレース
「乗鞍」 に挑んできた!!

自転車乗りは坂を登りたがる。なんだか知らないけど登りたがる。

かく言う私も10年以上前に、上野の自転車ショップでMTBを買ってすぐさま輪行袋に詰めこみ、長野新幹線に飛び乗って長野の山を登りに行ったことがある。

それまで自転車でのヒルクライム経験などまったくなかったのに、なぜか分からないが登ってみたくなったのだ。

そんなわけだから、私なんかよりも経験も密度も濃い自転車乗りなら、なおのこと坂を登りたがるに違いない。そして、そんな坂バカサイクリストにとっての「聖地」があるらしい。

̶全日本マウンテンサイクリングin乗鞍̶ 通称「乗鞍」。
 
今年で29回目になる日本最古のヒルクライムレースだ。私もロードバイクに乗るようになってから、ちょこちょことヒルクライムレースに参加し、その名を知るようになった。

いつかは走ってみたいと思っていた。そして今年、ついに「乗鞍」に出ることにした。

ヒルクライムレースでは欠かせない、下山用の荷物預け。ゴール地点は標高が高いため、時には冬のように寒いこともある。また下山時はペダルをこがないので身体が冷えやすく、防寒着が必要になるのだ。

ところで、「乗鞍」といえば漫画「かもめ☆チャンス」である(本当か?)。

信用金庫に勤める主人公・更科が、ひょんなことから「乗鞍」に出ることになり、ロード初心者にもかかわらず優勝争いを繰り広げるシーンが印象的なマンガだ。

そこで、レースの一週間位前から、予習?がてら、「かもめ☆チャンス」を読むことにした。試走する代わりに、マンガを読んでコースを叩き込んでしまおうという算段だ。

第一巻から読み始めて一気に、乗鞍が終わるところまで読んだ。

「ロード始めて1カ月で乗鞍の優勝争いか。更科すげーな。」
 
いかん、普通にマンガを楽しんでしまった。コースのことなんて、何も頭に入っていないぞ。とりあえず「つづら折りのカーブが続いている」それだけはわかった。そんなんで大丈夫か?

そんなこんなでレース前日の土曜日。大会会場へ向かい、受付を済ませる。この手の大会に来るたびに思うが、みんな速そうに見える(実際、ほとんどの人が私よりも速いのだが)。

ヒルクライムレースに行く、密かな楽しみが、道の駅などの直売所でキノコを買うこと。地元のスーパーと比べて、鮮度が良く味も良い。パスタにして食べると、キノコの旨味が出て美味しい。

数々のイベントで遭遇する、悪魔おじさん。前回レポートしたロングライド魚沼でもお会いした。過酷なヒルクライムをママチャリで走ってしまうのだから、驚きだ。

出店ブースなどをひと通り見たら、宿泊地の松本に戻り、早めの就寝。
 
翌日は、朝4時にホテルを出発し、会場付近の駐車場へ向かうが、雨が降っている。集合時間になっても止む気配がない。

「レースは開催できるのか?」心配しながら会場で待っていると、1km短縮で行われることになった。とりあえず、中止にならないで良かった。
 
スタートは、チャンピオンクラスからで、その後、年齢別のクラスごとにスタートする。

チャンピオンクラスのスタート。アマチュアレーサー最高クラスの人が集まっているだけあって、迫力がある。

30分くらいして、自分のクラスの番になる。スタート。みんなとても速い。

こんなのについていったら最後まで走れなくなる。無理せずマイペースで行こう。
 
しばらくすると、抜いていった人の中に、自分でもついていけそうな人がいた。

「後ろをついていこう」 申し訳ないが、しばらくペースメーカーとして引っ張ってもらった。

ヒルクライムでも平地ほどではないが、後ろにつくと走りが楽になる。おかげで何人もの人を抜くことができた。

それなのに(後になって思えば、調子に乗っていたのかもしれない)、その人のペースが落ちたところで、これまで引いてもらった恩も忘れ「抜けそうだ」と一気に抜き去ってしまった。
 
しかしそんな元気も長くは続かず、斜度がキツくなるたびにペースが落ち、次々と抜かれていく。

その中に、さっきまで引いてもらった人もいたが、もうついていく体力がない。愚かな俺。後は、ひとりで頑張るしかなくなった。
 
「どれくらい進んだのだろう?」似たようなつづら折りのカーブが続く。

そこに立っているボランティアの方の「頑張ってください」の声で、なんとか足が動くような状態だ。そんなつづら折りのカーブが終わると、突然目の前が明るくなった。雲の上に出たのだ。綺麗な景色が広がり、なんだか元気が出てきた。ここからは、残りの力を振り絞ってダッシュ! 

気がついたら、ゴール! ゴール地点には、大雪渓が広がっている。

スタート時は雨だったが、ゴール地点は晴れ渡っていた。ちなみに本来のゴールは、下山用荷物を載せたクルマが並んでいる道の先。最後まで行ってみたかったが、それは来年までおあずけか?


 

後ろに見えるのが大雪渓。かつてそこで夏スキーをしたことがある。そんなところまで登ってきたのだ。

そういえば20年ほど前、まだ学生だった頃に、夏のスキー合宿で来たことがある。当時は、ここまで自転車で登るなんて、夢にも思わなかった。

スタート時が嘘のような青空が広がっている。「走りきって良かった」この達成感があるから、また登ってしまうのかもしれない。

 

Profile 星野哲哉

【自転車日和】編集部とは別フロアの娯楽系雑誌編集部で働く、アラフォーサラリーマン。 4年前にロードバイクを購入したのを機に自転車熱がヒートアップ! 最近はロングライドやヒルクライムレースに夢中だ。愛車は最初に購入した、スペシャライズドのアレースポーツ。エントリーモデルではあるが、昨年末にコンポーネントをソラからアルテグラにグレードアップした。だが、それだけで急に速くなるなんてうまい話はなく、エンジン(身体)を鍛えることが大切だという事を、痛いほど実感している。

『自転車日和』vol.34より抜粋

- 連載, ロードバイク

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