ジオメトリーの変化が著しい昨今のトレイルバイク事情。フルサスのみならず、ハードテイルにもその波は確実に押し寄せてきています。そこで今回は、2021モデルの中でも注目度の高い3台をピックアップ。それぞれの特徴についてさまざまな角度からチェック、本質を見極めていきたいと思います。
下りを限界まで攻めたいマウンテンバイカーに
KONA HONZO ESD
2021モデルの中でも特に注目度の高いMTB、それがこのホンゾESDだ。
コナが誇る最強のエンデューロマシン、プロセスXの設計思想をクロモリフレームに落とし込んだ車体のジオメトリー表には、63度まで寝かされたヘッドアングル、Mサイズで800㎜を超えるフロントセンター長など、これまでハードテイルの完成車には見られなかった異質な数字が並ぶ。
また、グリップダンパーを搭載するマルゾッキのエアスプリング式フロントフォーク、確実な制動力が得られるシマノの4ピストンブレーキ、レースフェイスの内幅30㎜リムにマキシスのアセガイ&DHR2を組み合わせた足まわりほか、アッセンブルされるパーツ群もすべて一級品。
その圧倒的な下り性能、ハードテイルにこだわるマウンテンバイカーにとって見逃せない存在となること確実だ。マニア垂涎のカスタムスペックをそのまま手にすることができる、究極の1台といえよう。
GEOMETRY
サイズ | S | M | L |
シートチューブ長 | 380mm | 380mm | 420mm |
トップチューブ長(ホリゾンタル換算 | 578mm | 605mm | 633mm |
ヘッドチューブ角 | 63° | 63° | 63° |
シートチューブ角 | 77.5° | 77.5° | 77.5° |
ヘッドチューブ長 | 90mm | 100mm | 110mm |
BBドロップ | 62.5mm | 62.5mm | 62.5mm |
BB ハイト | 312.5mm | 312.5mm | 312.5mm |
チェーンステイ長 | 417mm | 417mm | 417mm |
フロントセンター長 | 776mm | 806mm | 835mm |
ホイールベース | 1186mm | 1216mm | 1245mm |
スタンドオーバー高 | 712mm | 710mm | 709mm |
フォークオフセット | 42mm | 42mm | 42mm |
リーチ | 440mm | 465mm | 490mm |
スタック | 625mm | 634mm | 643mm |
IMPRESSION
圧倒的なスピード感で疾走するハードテイルのDHマシン
このホンゾESD、海外ではトレイルバイクという扱いですが、日本のフィールドではダウンヒルバイク的に使えそうです。
コナは遊び心のあるバイクを常にほかのブランドに先駆けて生み出してくるブランドですが、今回もその期待を裏切りません。スチールフレームを扱い続けていることもあり、下りでは伸びやかに加速、速度が上がっても安定している鉄の特性が絶妙に活かされています。
そこにこの極端に思えるジオメトリーが相まって、下りでは一気に加速、体が置いていかれるような凄みのある走りを演出してきたのです。これはきちんと乗りこなすために練習が必要、とさえ思いました。
軽い気持ちで乗って速度に高揚したままブレーキを開放すると、フルサス並の速さで下っていくので危険です。フロント側の動きをきちんと意識的に制御していく必要があります、リアにサスがないので。
でも、乗るポイントさえ押さえてフロントをコントロールできれば、意外なほどコンパクトに曲がれるし、本当にハードテイルなの?という領域で下れます。
登りについても、速さを求めるような走りではないけど、とにかく足が下ろしやすくて、後輪が障害物を乗り越えるときも荷重が掛かっているので滑りにくく、前輪の行き先さえ決めてあげれば、山道の難しいセクションも登っていけます。
フルサスの乗り慣れた上級者があえてハードテイルでコースを下る、そんな遊び方に応えてくれるバイクですね。
フレーム:クロモリ
サイズ:S、M、L 重量(編集部による実測):14.7kg(M)
フォーク:MARZOCCHI BOMBER Z1(150mmトラベル)
変速:1×12speed
コンポーネント:SHIMANO XTほか
タイヤ:MAXXIS ASSEGAI(29×2.5)/ MAXXIS DHR II (29×2.4)
カラー:グロスメタリックレッド
価格:26万9000円(税別)
問:エイアンドエフ
https://aandf.co.jp/
Profile
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.44(2020年11月発売)より抜粋