温故知新 徒然MTB談話室 第14回

モンキー98ST7はベンチで待機。前回の内容を改めて検証すべく、サイズ違いのロッキーマウンテン・グローラー(今泉さんはSサイズ、中沢さんはMサイズ)で山道のサイクリングへ出かけたご両名。メーカーさまへの忖度は一切なし、今回もド直球の内容でお届けします。

Profile

中沢 清(写真左)
CS ナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB 日和』ではインプレッションライダーも担当。
https://nakazawagym.amebaownd.com/

今泉紀夫(写真右)
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。
http://www.monkey-magic.com/

車両協力(写真奥):ROCKY MOUNTAIN GROWLER 50
問:エイアンドアフ https://aandf.co.jp/

中沢(敬省略):前回は、ヘッドアングルが寝ていてシートアングルが起きているというMTBのトレンドについて話をしましたが、それってこれまで自分たちが乗ってきたバイクとは違う形なわけですよね。

初めて見たときには「これでちゃんと走るの?」って疑問を抱きましたが、実際に乗ってみたら下りやすいし、しっかり登るしで。どこを目指して作ったらこうなるのか? どんな人に乗って欲しいのか? ノリさんと同時に乗って探ってみたかったんです。

今泉:自分は数字で考える、というか勝手にそういうポジションにいると思っているんですけど、数字だけ追っかけてみてもわからないことは絶対にありますよ。ひとりで乗って考えるのではなく、お互いに意見を出し合ってわかることは多いし、意見を交換することは大きいとあらためて思いました。

中沢:相手のペースに合わせることでわかることとか、ありますよね。

林道を移動しているときは、大きなタイヤをゴロゴロ転がして、会話をしながらやさしく気持ちよく走る。実はそんなスタイルにもマッチするグローラー。「この先、どこを下りましょうか?」という会話が聞こえてきそう。

今泉:98(モンキー)は台湾でレディメイド化するとき、ひとつの結論的なスケルトンは出したんです。自分やライダーである息子たちと一緒に、モンキーという枠では。

中沢:ノリさんたちが走っているローカルにあったバイク、という意味ですよね。

今泉:広くいえば日本という意味で、丘陵から里山まで。10年前に台湾でレディメイドの98ST6を作ったときに、シートサイズに対してのスケルトンというのはある程度、乗り味に差が出ないように吟味したつもりです。

26インチだったのが、29インチが出てきて、今度は27.5インチに変わったり、それからいろいろありましたけど、そのアレンジをしていく中でも98の乗り味はキープできていたし、まわりの方たちからもそう言ってもらえていました。

中沢:ちゃんとキャラクター付けができてるということですね。バイクには「速い」という正義もあれば「楽しい」や「気持ちいい」もあると思うんです。

でも、私が一番大事にしているのは「フィールドにハマる」、合うというか収まりがいいというか。そこなんですよ。その点、モンキーには作り手が乗り込んでできた形のようなものがあって、自分のローカルにもフィットするんです。

今泉:そういって頂けると。

中沢:対して、最新の新しい流れはどうなんでしょう。やはり開発しているライダーが、自らが走っている場所に対して収まりがいいと思って作っているんでしょうけどそれはどこ?

このグローラーもはじめてインプレで乗ったときはすごい違和感があったんです。これならフルサスでやればいいじゃん。なんでハードテイルなの? 価格が抑えられるから? 細かいセッティングいらずで誰でも乗れちゃうから? って。

そこで感じたのが、キーとなるのはタイヤのサイズなのかな、と。MTBはジオメトリーもそうだけど、地面に接している部分でどうにでもなるところがあると思うんです。

今泉:自分にとって前回から今回までの期間がいい意味で濃くて。いろいろなメーカーの試乗会にうかがう機会もあったり。改めて「98でひとつのスタイルができているからいいか」ではなく、新しい29インチを考えてみようという気になりました。

中沢:29インチ自体の考え方がかなり変わってきていますよね。出はじめの頃の29インチはクロスカントリーベースだったけど、ここにきてダウンヒルやエンデューロも29インチが標準化してきて。

それらが追求しているのは「速さ」の部分なんでしょうけどそれだけじゃなくて、ハードテイルなんかには快適さを追求する29インチが出てきたのかな、って。

今泉:いろいろなバイクに乗ってみて、新しいスタイル作りの落としどころができました、自分の中での。

中沢:よかった、それはまたビジネスに繋げて頂いて(笑)。で、29インチのタイヤの活かし方がわかってきた気がします。

以前は「動かしにくい」とか「重心の位置がちょっと」とか、ネガティブな要素を訴える人も多かったけど、なんていうか「こういう風に乗ってください」という形ができてきたような。

今泉:ステーキの焼き方に好みがあるみたいに。1回食べて「もういいや」って思ったかもしれないけど、美味しく焼けるようになったから。

中沢:グローラーはヘッド角が寝ていて、同じロッキーマウンテンのバイクだとフルサスのインスティンクトを下りで安定するようにセットアップしたときと似ているんです、同じではないけど。

本来、フルサスって安定して乗れるバイクですよね。それをハードテイルの形に置き換えるとこうなるのかな。

だったら当然、タイヤサイズも29インチになります。身体をあまり動かさず、バイクに助けてもらえるフルサスの万能感。あの感じを出そうとすると太さも含めてタイヤのサイズはこうなってくるんでしょうね。

今泉:せっかく26インチでまとめたのに、クロスカントリーで29インチが出てきて。当時はレーシングマシン的なものだったから「これってうちらのような山乗りにいるの?」「これ以上かきまわさないでほしい」という印象はありました。

で、最近まで「いまさらまた29インチ?」とマイナス要素を膨らましていたんだけど、ロッキーマウンテンのバイクなんかに乗ると「こういう風に持っていくのか」と感心しちゃって。

中沢:いつも通っている大好きなローカルの山があるほど、いま乗っているバイクの形が正解に思えてくるけど実はそうじゃなくて。

いろんなところでいろんなアプローチで作られたバイクがあり、もちろん好みは分かれると思うけど、グローラーのようにはじめてMTBに触れる人が怖い思いをせずに乗れるバイクもアリなのかな、と。

今泉:大切なことですよね。ママチャリはおばあちゃんでも時速8キロで真っすぐ走ることができる。それはMTBに持ち込んでもいい要素です、巧く29インチを活かして。チューブレスレディのおかげでタイヤが軽くなったし、パターンもよくなったので転がりも軽くなった。1×でMTBの構成がシンプルになって、パッケージがうまくまとまってきた気がします。それの象徴ですね。

中沢:バイク自体に「こう乗る」という形が決められている感じがします。モンキーならきちっと乗らないと一定以上の速度でちょっとピーキーになったりするけど、でもそれが操るおもしろさにつながっています。

最近のトレンドをまとめたMTBは、いかに余計な動きをしないか、いいところに乗ってバイクに助けてもらうか、そんなコンセプトで開発されている気がします。海外の開発者がママチャリを意識しているはずはないけど、そういう感じがしませんか? おこられちゃうかな、ママチャリとかいうと。

今泉:最近、ママチャリという言葉が大好き(笑)。

中沢:かわいいですよね、気軽に乗れる感じがして(笑)。

今泉:自社のフルサスの持ち味を活かしてハードテイルを作ったロッキーマウンテン、すごく腑に落ちました。

中沢:最新のトレンドの、そのよさを知った上であえていっちゃいますけど、自分個人としてはもうちょっと小気味よく、レスポンスよく登るバイクが欲しいですね。でも、メーカーはわざわざハードテイルでそういうバイクを作らないので。

今泉:時代ですから。

中沢:ローカルのある自分はどうしても、その土地にあった遊びがしたくなるんです。

今泉:贅沢ですよ。

中沢:つい、余計なことをしたくなるんですよ。「クルマならATではなくMT乗りたい」的に(笑)。

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.44(2020年11月発売)より抜粋

-MTB, 連載

© 2020 TATSUMI PUBLISHING CO.,LTD