TOKYO 2020 MTB XCOレース アラカルト SHIZUOKAが世界に発信された日

さまざまな余韻を残して終わった東京オリンピック。緊急事態宣言により、首都圏4都県をはじめ大多数の競技が無観客となったのに対し、マウンテンバイクXCOは観客を入れての開催となり、日本のレースファンは、世界最高峰のレースを観ることができた。今回は、伊豆MTBコースでみかけた「最新XCOバイク事情」にスポットを当ててみたい。

TREND1
フルサスバイク=勝利の方程式?

大会の3週間前に行われたワールドカップの熱気を、さらに凝縮したハイレベルのレース展開が見られた2日間。

各国、各選手それぞれ、プレ大会で得た感触を元に、コース攻略法を練ってきたはずだが、ベースとなるバイク選びについては、短いタームでアップダウンを繰り返すレイアウトということもあり、参加76選手中73名がフルサスバイクで出走。

特にウイメンズカテゴリーは、プレ大会にハードテイルバイクで臨んだヤナ・ベロモイナ(UKR)が、フルサスバイクをチョイスしてきたように、テクニカルな下りとルーズな登り路面にアドバンテージを求めてきた。

ハードテイルで走ったマヤ・ヴウォシュチョヴスカ(POL)、ターニャ・ザケリ(SLO)、ワールドカップで優勝経験のあるベテラン2名が20位、21位という結果に終わったことから、軽さよりもサスペンションを使いこなすことが、より重要になってくるのは間違いない。

東京オリンピックに照準を合わせて冬からバイクを作ってきたトム・ピドコック(GBR)。シクロクロス、ロードレースのスポンサーとの兼ね合いからか、ブランド名を消したBMCフォーストロークにSRサンツアーの前後サスペンションを装着。

どちらかといえばパワー系のターニャがハードテイルを選んだのは、斜度のきつい登りでアドバンテージを得ようとしたためと推測されるが、ロックセクションなどテクニカルなエリアでのスピード不足は明らかだった。

2019年末に脾臓破裂を始めとする重傷を負い、さらに6月のワールドカップで左手を骨折しながらオリンピックを制したヨランダ・ネフ(SUI)。プレ大会同様リア60mmトラベルのトレック・スーパーカリバーを使用。

ワールドカップ・レオガンク大会でベールを脱いだ2022年モデルのスコット・スパークRC。ステム一体型ハンドルバーやフレームに内蔵されたリアサスペンションなど、軽さと高剛性を両立させた意欲作。ニノ・シュルター(SUI)が、4位でフィニッシュしている。
スコットジャパン https://www.scott-japan.com/

ダウンヒルと同様の成功をXCでもおさめるために、VPPシステムからシンプルなスーパーライトへとリアサスシステムを変更して登場した2021年モデルのサンタクルズ・ブラー。旧モデルに比べ290gもの軽量化と、ワイドタイヤへの対応を実現。
ウインクレル https://sports-w.com/brands/santa-cruz/

エンデューロやトレイルライドでは、必須アイテムとなりつつあるドロッパーシートポスト。今までは重量面やシートチューブ径などからXCレースでの装着率は低かったが、下りでの操縦性を向上させるため、BMCが専用設計のモデルを開発。FOXも軽量化を図ったモデルを発表するなど、一気にドロッパーシートポストが普及し始めた。

今回、マチュー・ファン・デル・プールは装着していなかったものの、シュルターやピドコックだけでなく、比較的長身のライダーも装着率は高め。ウイメンも装着したネフが優勝するなど、テクニカルなコースにマッチした機材選びがポイントとなった。

 

TREND2
ドロッパーポストはマストアイテム?

リオ五輪の金メダリスト、ジェニー・リズヴェズ(SWE・身長164cm)も、ドロッパーを積極的に駆使。

178cmのオンドレイ・シンク(CZE)も、トランスファーSLを使い、下りに対応。

 
FOX
TRANSFER SL

2021年モデルで全長の短縮と軽量化を果たしたトランスファー。さらに内部構造をメカニカルスプリングに変更。高さ調整を2段階として25%もの軽量化を実現。27.2mm径シートチューブにも対応。31.6x100mmのみ、全長430mmのXLが用意される。

■サイズ:27.2×50、27.2×70、30.9/31.6×75、30.9/31.6×100、31.6×100(XL)mm
■重量:327~399g
■ケーブル:内装式のみ

価格:4万7960円(ファクトリー)、
4万370円(パフォーマンス・エリート)
※リモートレバー別売(8690円)

マムアンドポップス https://mamapapa.at.webry.info/

 
DT SWISS
D232 ONE

クロスカントリーレーサーのために開発された60mmストロークのドロッパー。 倒立式構造により軽く、またダンパーのないシンプルな内部構造のため、信頼性とメンテナンス性に優れる。ヤグラやパイプにカーボンを採用するD232ワンに加え、アルミ製のD232もラインアップ。

■サイズ:27.2、30.9mm
■トラベル:60mm
■重量:369g(232ワン)、416g(232)
■ケーブル:内装式

価格:8万2500円(232ワン)、5万6100円(232)
マルイ https://www.dtswiss.com/ja

 
BMC
RAD-RACE
APPLICATION
DROPPER

BMCフォーストロークのためにデザインされた80mmトラベルドロッパーポスト。シートチューブに合わせた楕円形状のスライドパイプは、前後2.3mm厚、左右1.0mm厚とすることで、軽さと強度を両立させている。

■重量:345g
■ケーブル:内装式

※BMCフォーストローク専用設計
フタバ商店 https://e-ftb.co.jp/item/brand/bmc/

ゴーストチームが採用するコンプレッション・ホイール

スポークとリムを一体成形したカーボンコンポジットホイールと言えば、2018年に発表されたシンクロスのシルバートンSLカーボンが有名だが、アン・テルプストラ(NED)とカロリーネ・ボーエ(DEN)が使用したのは、所属するゴースト・ファクトリーチームが採用するバイク・アヘッド・コンポジットの6本スポーク・コンプレッションホイール。コンプレッション構造のホイールは軽量で高剛性、エネルギー伝達性に優れる反面、振動吸収性では従来のスポークホイールに利があったわけだが、前後サスペンションによって解決できたということだろう。

 
BIKE AHEAD COMPOSITES
BITURBO RS SL

ドイツのカーボンコンストラクターが手がけるカーボン・モノコックホイール。ハブには、軽さとメンテナンス性に優れるDTスイスのEXPラチェットシステムを採用。クロスカントリーレースから、ダウンカントリー、トレイルまで対応。

■重量:1249g
■リム内幅:27mm
■リム高:25mm

ポディウム
https://www.podium.co.jp/

 

スイスチームの伊豆MTBコース攻略

大雨に見舞われたワールドカップ・レジェ大会に続き登場したのが、ガムテープを用いた“マッドフラップ”。ダウンチューブ下にフラップ状に貼ることで泥がついても落ちやすいという。

同じトレック・ファクトリーのエヴィー・リチャーズ(GBR)が、前後にボントレガーXRマッドを選択したのに対し、下りのテクニックに自信を持つネフは、前後ともドライ路面用のXR2をチョイス。

メン銀メダル&4位、ウイメン表彰台独占という快挙を成し遂げたスイスチーム。特にウイメンは、同一国が1~3位を占めるというオリンピック史上初の快挙について、通信社のインタビューに対しネフは「台風によってコース状況が一変したので、とても厳しいレースになると思いました。ロックセクションにも泥が被り、どこも滑りやすいコンディションになっていたのですが、午前中に設けられたトレーニングセッションをチーム全員で走って戦略を立てることができたのが、素晴らしい結果につながったと思います」と語っている。

また3位に入ったリンダ・インデルガントも「私たちはテクニカルコースに対するアドバンテージがあり、直前に走ることでベストなラインを見つけることができました」と、チーム全体で刻々と変化する状況を見極めることが、好結果につながったとコメントしている。

 
注:価格、仕様については変更されることがあります。
 
文:鈴木英之
『MTB日和』vol.47(2021年8月発売)より抜粋

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