欧州のそれとはひと味違う、独自のオフロードサイクリングカルチャーを背景に持つ日本のMTBシーン。当然、E-MTBが浸透する速度、そしてマウンテンバイカーたちの受け止め方も変わってきます。今回は、日本でも徐々に普及しつつあるE-MTBの本質に迫るべく、ドライブユニットが異なる4台のフルサスモデルをピックアップ。E-MTBならではの魅力について再検証してみたいと思います。
E-MTB選びのポイントとは?
E-MTBを選択するときの考え方はふたつ。
ひとつは「アシスト力に助けられることで、体力に余裕を持たせて山道のいろいろなところを走っていける」というシンプルなもの。
もうひとつは「MTBを操るテクニックを持っている人がアシスト力を活かして走りの幅を広げることができる」というもの。
すでにMTBを趣味としている人からは「E-MTBはまだ必要ない」「自分の力だけでがんばりたい」という意見を耳にしますが〈がんばる〉〈がんばらない〉ではなくて、〈新しい乗りもの〉〈楽しい乗りもの〉として、柔軟に捉えてみてはいかがでしょう?
否定派は「E-MTB=アシストに助けてもらえる」という印象を強く持ち過ぎている部分が見受けられますが、E-MTBはフル電動バイクではないので当然、自分で足をまわさないと走ってくれません。
こぐ楽しさがある上、E-MTBならではの使いこなすテクニックも存在しますから、乗らず嫌いは本当にもったいない。
今回、ドライブユニットの異な る4台のE-MTBに試乗してみて、あらためて新しい、楽しい乗りものであると実感しました。
4台すべて、それぞれ個性があって本当におもしろい。
TRS2 AMは昔からある本来のクロスカントリーバイク。
リーヴォSLはレースコースをエリートライダー気分で走れそうなクロスカントリーレーシングな乗り味。
トランスE+はいわゆるオールマウンテン的な味付け。
レイルなら作り込まれたMTB専用フィールドでスケールの大きな走りを。
街乗りでその本質をつかむことは難しいと思いますが、決して安い買い物ではないので、できれば試乗してから選んで欲しいと思います。
もちろん、購入先であるショップ選びも大切。単に「アシストは楽だよ~」ではなく、その先の話を教えてもらえるスタッフは必要不可欠です。
E-MTBの登場によって今後、これまでMTBに乗らなかった人を含め、いろいろな人たちが山に入ってくる可能性があります。
そういった意味でも各ローカルのマウンテンバイカーはこれまで以上に深く地域とかかわる必要が出てくるかもしれません。
また、ゲレンデなどのMTB専用フィールドにはE-MTB向けのコースが求められるようになるでしょう。
乗り手が〈E-MTBになにを求めるのか〉次第で、バイクの選び方も走り方も、使いこなすテクニックも変わってきます。
シンプルにアシスト力の恩恵を受けるもよし。専用コースでアシストパワー全開で走るもよし。
個人的には、低速&軽いギアで山の地形を楽しむような走り方が気に入っています。道も傷めないし、登り終えて一旦停まり、ゼーハーする必要もありません。
そのまま走り続けられるので、短い時間でいろいろな景色を満喫できますからね。
Profile
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.43(2020年8月発売)より抜粋