進化し続けるトレイルバイクの走りをチェック 最新ハードテイル インプレッション「GT ZASKER LT ELITE」

ジオメトリーの変化が著しい昨今のトレイルバイク事情。フルサスのみならず、ハードテイルにもその波は確実に押し寄せてきています。そこで今回は、2021モデルの中でも注目度の高い3台をピックアップ。それぞれの特徴についてさまざまな角度からチェック、本質を見極めていきたいと思います。
 

新たなフィールドを目指し最適化されたジオメトリー

GT ZASKER LT ELITE

ダウンヒル、クロスカントリー、スラローム、トライアルなど数々のレースシーンで表彰台を制した輝かしいネーミング、ザスカー。

そのキング・オブ・ハードテイルのジオメトリーを世界のトレイルシーンに最適化すべくジオメトリーを刷新、GTのラインアップに加えられたモデルがこのザスカーLTだ。

クロスカントリーカテゴリーに属する既存のザスカーに対して、ヘッドアングルを寝かせつつフロントセンター&リアセンターを長めに設計した車体、130㎜まで拡大されたサスペンションフォークにより、タフなトレイルでの走行安定性が格段にアップ。よりアグレッシブなライディングが可能となった。

また、すでにアルミフレームのザスカー、アバランチェ、アグレッサーに投入済み、好評を得ているフローティングトリプルトライアングルは、このザスカーLTにも採用。ハードテイルとは思えない快適な乗り心地と路面追従性を実現した。

シートステイとシートチューブを溶接しないフローティングトリプルトライアングルはハイレベルの路面追従性と快適性を提供する。

エリートにはコイルスプリング式のマッドガード付きサスペンションフォークが装備される。タイヤは前後ともに2.3インチ幅をセット。

ドライブトレインはスラムのSXで統一することで1×12速化を実現。チェーンリングは30T、カセットは11-50Tという組み合わせ。

GEOMETRY

サイズ S M L
シートチューブ長 400mm 440mm 480mm
トップチューブ長(ホリゾンタル換算) 592mm 615mm 637mm
ヘッドチューブ角 66° 66° 66°
シートチューブ角 75° 75° 75°
ヘッドチューブ長 105mm 115mm 125mm
BBドロップ 55mm 55mm 55mm
BB ハイト 323mm 323mm 323mm
チェーンステイ長 450mm 450mm 450mm
フロントセンター長 736mm 760mm 784mm
ホイールベース 1181mm 1205mm 1229mm
スタンドオーバー高 732mm 763mm 794mm
フォークオフセット 51mm 51mm 51mm
リーチ 425mm 445mm 465mm
スタック 625mm 635mm 643mm

 

IMPRESSION
トリプルトライアングルを活かしつつよりアグレッシブに

一昨年前、フレーム構造が一新されて、アバランチェはすごくよくなりましたよね。フローティングトリプルトライアングルの恩恵を活かしたダートでのこぎやすさ、山に入っていくよろこびを感じられる、日本の里山にしっくりくるバイクへと進化しました。

同じシステムを採用するザスカーLTには、そのよろこびの先を感じさせてくれる、ライダーがきちんとステップアップしていくためのポテンシャル、アグレッシブさを求めるライダーにも適した余裕が与えられています。ここ最近のザスカーは、クロスカントリー系の速さを求めているような感じでした。

対してこのLTは、乗ってみた第一印象としてカッチリとした硬さを感じましたが、走り込んでみるとフローティングトリプルトライアングルのしなやかさが効いていて、リアエンドに剛性があるおかげで根っこが連なっているところやロックセクションも不安感を抱かずに通過できました。

また、今回乗った試乗車はMサイズでまたがったときは大きく感じたのですが、走りだしてしまうと動かしやすいし、極端にヘッドが寝ていないこともあってか、登り下りを繰り返すような場所でも対応しやすい。

MTBに乗り始めた人がこの1台でどんどんアグレッシブな楽しさを、例えばダウンヒルデビューしてみようとか、より難度の高いトレイルに入っていこうとか、そんな気にさせてくれます。

15万円という価格で収めたパッケージもいいですね。
 

SPECIFICATIONS

フレーム:アルミ
サイズ:S、M、L
重量(編集部による実測):14.4kg(M)
フォーク:SR SUNTOUR ZERON 35(130mmトラベル)
変速:1×12speed
コンポーネント:SRAM SX EAGLEほか
タイヤ:WTB BREAKOUT COMP(29×2.3)
カラー:ダークブルー

価格:15万8000円(税別

問:ライトウェイプロダクツジャパン
https://www.riteway-jp.com/
 

Profile

CSナカザワジム 店主 中沢 清さん

 

20キロに及ぶ過酷な減量の結果、現役アスリートさながらのシャープな動きを取り戻したCSナカザワジムの店主。定評のある鋭いインプレッションにも、さらに磨きがかかっております。この冬には、楽しくトレイルを走り、安全&気持ちよく帰路につくノウハウ(※ジャンプ、コーナリングテク云々ではありません)を凝縮したオリジナルのスクールをスタート予定。興味のある方はCSナカザワジムまで問い合わせを!

 
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.44(2020年11月発売)より抜粋

- レビュー, MTB
-