自転車を趣味にしたら、いずれは辿り着くカスタムへの道。ルックスから走りまで、自分のスタイルに合わせて仕上げていくのも楽しみのひとつです。今回はギアまわりについて少々。
カスタムの基礎知識 PART3 ギアのはなし
自転車はクランクと直結する前側のギアと、後輪に直結する後側のギアをチェーンでつなぐことで駆動します(古典的なだるま自転車、子ども向けの三輪車、シャフトドライブ車を除く)。
このペダルに乗せた足を回すことで後輪を回転させる仕組みは、自転車に乗ったことのある人であればなんとなく理解できているかと思います。
この前側のギアと後側のギアの歯の比率が“ギア比”と呼ばれるもので、このギア比の設定によって、スピード重視の自転車にするか、登り坂を楽に走れる自転車にするかなど、そのモデルの特性が決まります。
ですが、ギア比は目に見えないため、その数値でくらべてもいまひとつピンとこないかもしれません。そこで今回は各々のギア板の歯数を前提に話を進めていきたいと思います。
自分の自転車のギア設定を把握する
ギア板を交換するカスタムによってその設定を変更するためには、自分の自転車のギアの歯数をきちんと把握しておかなければなりません。
カタログ等が手元にある場合、「クランク」の項目に記載されているかと思います。分からない場合は、ひとつずつ歯数を数えるという方法もありますが、ロードバイク、MTBなどモデルのカテゴリーによって大まかな方向性はあります。
ここでは現在、一般的とされているギア板の歯数についてまとめてみました。
ロードバイクの前側のギア板は2枚構成が一般的。MTBは1枚構成または2枚構成で、クロスバイクは3枚構成が多くみられます。
シングルスピード仕様のリアコグは16T前後(チェーンリングは46T前後)で、多段ギアのカセットスプロケットの場合、ロードバイクは11-30Tの11段、MTBの場合は11-50Tの12段、クロスバイクの場合は11-32Tの8段などが主流です。
チェーンリングの厚さには種類がある?
チェーンリングひとつとってみても、多段変速用とシングルスピード用では厚さが異なります。
いわゆる「厚歯」と呼ばれるシングルスピード用のチェーンリングは、多段変速用のそれ(一般に「薄歯」と呼ばれるタイプ) より厚みがあります。
当然、使用するチェーンも異なり、リア側のギア厚も揃える必要があります。
「見た目が気に入ったから」という理由だけでギア板を選ぶと、いざ装着する段階でチグハグなセットになってしまうことがあるので要確認です。
ちなみに厚歯が使われるシングルスピード車といえば、トラックレーサーなどのピスト、BMXなどが挙げられます。
チェーンリングと取り付けるクランクとの関係は
チェーンリングはフィキシングボルトによってクランクに取り付けられています。このボルトの数、ボルトをつないだ円の直径から、そのチェーンリングがクランクに取り付けられるか分かります。
上位グレードに用いる専用設計のクランクセットを除き、自転車のカテゴリーによってボルトの数(クランク側のスパイダーアームの本数)とその描かれた円の直径(=PCD)はある程度決まっています。
ロードバイクであれば、クランクは5本アームが一般的で、シマノのノーマルクランクであればPCDは110mmの設定。チェーンリング、クランク共に互換するアイテムが使用できます。
また、シマノのMTB用クランクであれば現在は4本アームが一般的で、PCDはダブルタイプが96/64mm、シングルタイプではチェーンリングとクランクを直接嵌合(かんごう)させるダイレクトマウント方式も多く採用されています。
シングル/多段変速で異なるリアホイールのハブ形状
シングルスピードと多段変速ではコグ(またはカセットスプロケット)の大きさや形状が異なるため、取り付けるハブも各々に対応していなくてはなりません。
シングルスピード用のコグには、ねじ切りタイプのハブに装着するコグ自体にフリー機構が備わるもの、ねじ切りタイプのハブに装着するフリー機構を持たない固定ギア用があります(多段変速用と同じくハブ側のフリーボディに装着するタイプも別にアリ)。
多段変速の場合、カセットスプロケット(ギア板の集合体)をフリー機構を持つハブのスプライン(溝)に合わせて装着するのが一般的です。
ハブ側のフリーボディについては、コンポーネントメーカーが独自の規格を採用していることがあるため、それぞれ対応するパーツを使用する必要があります。
また同一メーカー間であっても、変速段数の違いによって取り付けができない場合もあるため、事前の確認は必須です。
ギアまわりのグレードアップでカスタム欲を満たす
ギアまわりのコンポーネントにはグレードというものが存在します。各コンポーネントメーカーは、スタンダード仕様からトップグレードまで、ユーザーの要望に応じたラインアップで対応してくれているのです。
このコンポーネントのアップグレードはカスタムの醍醐味のひとつ。変速段数を増やすことはもちろん、仮に同じ段数であったとしても、グレードをひとつ上げるだけで変速操作のフィーリングが格段に向上するなど、その恩恵は確実に体感できるはずです。
ルックスの面から見ても、クランクまわりのパーツやディレイラーをひとつ上のグレードに交換するだけで、自転車の格がグッと向上することも。
特にトップグレードのコンポーネントは世界のトッププロたちも使用するレーシングスペック。それらとまったく同じものを自分の愛車に組み込むことだってできるのです。もちろん、お財布が許せば、の話ですけど。
ロードバイク用コンポーネントのグレード
SHIMANO
シマノ
DURA-ACE | |
GRX | ULTEGRA |
105 | |
TIAGRA | |
SORA | |
CLARIS |
SRAM
スラム
RED |
FORCE |
RIVAL |
APEX |
Campagnolo
カンパニョーロ
SUPER RECORD | |
RECORD | EKAR |
CHORUS | |
POTENZA | |
CENTAUR |
※GRXおよびEKARはグラベル用コンポーネント
MTB用コンポーネントのグレード
SHIMANO
シマノ
XTR | |||
SAINT | |||
DEORE XT | |||
ZEE | |||
SLX | |||
DEORE XT |
※SAINTおよびZEEはDH用コンポーネント
SRAM
スラム
XX1 |
XO1 |
GX |
NX |
SX |
イラスト:田中 斉 文:トライジェット
『自転車日和』vol.33(2014年7月発売)より抜粋、一部修正