温故知新 徒然MTB談話室 第1回

衝動的にはじまったこの場当たり的企画、テーマは〈温故知新〉。

インターネットで検索してみると「昔の事をたずね求め(=温)て、そこから新しい知識・見解を導くこと」と表示されるこの言葉。

その意味を検証すべく、今泉さんと中沢さんによるMTBオフトークを公開。

仕込みも台本も一切ありません。その展開に若干の不安を抱きつつ、たまには辞書でもめくってみましょうか。
 

Profile 今泉紀夫

  

ワークショップモンキー店主。MTB 誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。

Profile 中沢 清

  

CS ナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB 日和』ではインプレッションライダーも担当。

 
中沢:ものがない時代の人はいろいろな工夫していた、それをノリさん(今泉さん)のフェイスブックに見つけたんですよ。

それでちゃんと話が聞きたい、と。いまの時代、機材の進化がめざましいけど、昔を振り返ることで機材だけじゃなくて走り方とか、フィールドとの関わり方とか、そういったものが見えてくるんじゃないかな、時代性も含めて。

過去があるから未来があるんだし、この話を埋もれさせちゃダメだなと。昔を知らない人も絶対におもしろいはずですよ。 

 
今泉:中沢さんがフィールド活動をしている西多摩方面、昔はよく走りにいきました。新青梅街道ができた頃でね、あのときはまだ道が途中までしかなくて、ドンと突き当たりで。

兄貴のお下がりの自転車で多摩湖、狭山湖まで走るのがひとつの目標でしたから。多摩湖の堤防の下からずっと砂利道で、まだランドナーしかなかったけど、あのころにMTBがあったらよかったのに、と思います。

上手くできたものでいい環境?いい場所があるときにはいい道具がなくて。いい道具がそろったときには……ね。

MTB誕生以前、シクロクロス車にチューブラータイヤを履いて軽井沢や日光の林道を走っていた若かりし今泉さん。その姿が収められたアルバムは、まさに絶好の酒の肴。

中沢:そういうものなのかもしれません。だから道具をよくしようと考えるのかな。

海外でもビーチクルーザーを改造した云々の話はあるけど、日本にその情報がない時代にノリさんたちは同じようなことをやってたってことですよね。

違う土地にいても衝動的に同じことやってる、人間のどこかでつながっている感じって本当におもしろい。

 
今泉:パスハンター、つまりランドナーをネイキッドにして乗りはじめたのが日本のMTBのはじまりなんだと思うんです。

そもそもランドナー自体がフランスやイタリアの文化からきた自転車ですし、日本人は本当によく勉強しました。

当時はメーカーの人間もみんな自転車オタクだったから、いろいろな情報にすぐ反応できて。

自転車はパッケージにするためのパーツが大切ですけど、それをタイヤからリムまですべて日本製で凌駕していきましたから。

 
中沢:自分たちが遊びたいから場所を見つけて、それに合わせて機材を作っていたんですね。

いま自分がこういう立場で最新機材を売っていて、雑誌でインプレなんかもやっていて、少し違和感があるんですよ。

インプレではいいにくいことだけど、これは使い道がない? コースでしか走れない? とか。身近な山で走るならこれじゃないとか。

 
今泉:まぁ、それは仕方ないことですよ。ただ、ものは間違いなくいいと思います。けなすことはだれにでもできますから(笑)

 
中沢:そう、悪くはないんです、正常進化しているから。ただ、日本のフィールドに合ったベストなものを最新技術で作れたらおもしろいのに、と。

モンキーのバイクがそうあり続けているように、自分たちはここで乗りたいからこういうバイクがほしい、そういう感覚で作ったらもっと楽しくなるはず。それを海外に持ってっいって売れるかとなると???ですけど。

独立したモンキーブランドとしてはファーストモデルとなる88D。への字型のトップチューブを持つ特異なシルエットが特徴。ステムはまだ1インチスレッドの時代だった。

今泉:パーツメーカーもいわゆるマスプロダクト向きの目線になっているし、いま日本で人気のアメリカやカナダを中心とした乗り方であればそれはそれでいいと思いますよ。

ただ、ぼくが走る山はMTB専用の作られたフィールドではないし、もちろんトラックでもない。道も踏みあとのままで、枝が落ちていても年中それを掃くようなこともないし、そんな道を走れるのもMTBの魅力だと思うんです。

営業コースはきれいにしておくべきでしょうけど、お金では買えないものはあります。山道は過剰に整備すると壊れやすくなるんですよ。

落ち葉が積もっているからいいのであって、掃いてしまうと土も流れやすくなる。タイヤの踏みあとレベルで楽しめばいいし、ある程度できあがった場所はわざわざ掘らなくてもいい。走る人の数で道の形態は変わってくるので、それなりに楽しめばいいかな。

 
中沢:それを楽しめるのが上質な山の遊び方なんですよね。

 
今泉:もし枝が落ちていたとしたら、それをよけて走るのか、踏んでもいいように走るのか。フレームに当たったら危ないと思えば、それがからまらないように走るのもテクニック。

精神論みたいになっちゃうけど、人生自体が旅みたいなものじゃないですか。自転車も昔は旅の道具で、輪行はダメとかカーサイクリングはダメとか、そんな論議もありました。

いまならナンセンスですけど。走り出した場所から目的地までどう走れるかが醍醐味で、林道だったら雑誌の資料と5万分の一や2万5千分の一の地図を見ながら走っていました。

 
中沢:ひと手間かけるおもしろさがありますね。いまだとそれがサスペンションにセッティングとかになっちゃうのかな。

 
今泉:作り込んだ場所を走るのはスケートするのと似ていますね、ふじてんは好きだけど(笑)。

怪我しても助けてくれるし、それはそれでいいことです、遊技場ですから。自転車や着るものだけじゃなくて、遊び方自体もソフトウェアというよりひとつのパッケージとして見ればハードウエアになってきていますよね。

だからこそ形式的になりやすいし、それが正しいと思う人からすれば、ぼくなんかはおかしく見えるんでしょうね。モラル的に人に迷惑をかけないのは当然だけど、見る方向次第でいろいろな考え方ができますから。

 
中沢:それもこれも工夫が必要だった時代を見てきたからわかるんでしょう。その工夫をいま乗っている人たちが面倒くさいことだと思わず、おもしろがってくれたら日本のMTBシーンも違う面が見えてきますよね。

さっきノリさんがいっていた〈人生は旅〉じゃないけど、それぞれ時間は長く続くわけで。ずっとMTBに関わってほしいし、乗っていてほしい。

昔のようにひと手間加える工夫とか、なければ作ってしまう勢いとか。そういったマインドを持っていまのシーンに関わっていったら未来はもっとおもしろい!

 
今泉:でも、モラルとか常識とか道徳的なものから外れてしまうのは絶対にダメですよ(笑)

 

※写真はライド後の光景です。

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.31(2017年8月発売)より抜粋

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