わたしが自転車で旅する理由 第7回 長野〜青森編

風を感じ、音を聴く。ほどよいスピードで道端の小さな花に気づく。それぞれの土地で人々とふれあい、自分と向き合う。そんな自転車旅の魅力にとりつかれたサイクリストのストーリーをつづります。


 
志賀高原からスタート

長野へ向けて峠越え!

6月の頭に長野の志賀高原から出発。スタート地点が1500mくらいで、そこから峠を越えて長野市へ出た。急な登りは一生懸命前を見ることが多いが、ふと振り返るとホッとする風景や登ってきた道が見え、また頑張ろうと前を向ける。

 
恐怖のトンネル

白馬の山並み

長野からは白馬、新潟というルートで走ることに。白馬から新潟に向けてはほとんどが下り坂。と同時に恐怖のトンネル天国。国道なのでトラックもバンバン通るし、路肩のない狭いトンネルなどは寿命が縮まりそうだ。

私は臆病なので、狭い段差のある路肩は使わない。バランスを崩して車道に落ちたことがあり、それ以来トラウマになってしまったのだ。

途中、おじさんに話しかけられ、頑張ってねと声援をもらった。旅をしていてどんなに恐ろしい思いをしていても自由がある。お金がなくても日本や世界中の美しい風景を自分で発見できる。出会った人がそんな自分を応援してくれるのが嬉しいし、こんな旅や生き方もあるのだと知ってもらい、何かのきっかけにでもなったら……そう思うのだ。


 
新潟市へ

6月下旬の夕方ともなると、蚊との戦いがはじまり蚊取り線香が必須になってくる。蚊だけならまだしも、毛虫やムカデ、クモなども活発になる。ムカデはどこから侵入するのか服の中やサイドバッグの中から発見されることもあり、虫がある程度平気な私も流石に悲鳴を上げることがしばしば。

 
佐渡島

佐渡島の姫崎キャンプ場の灯台。古くて美しい。

新潟から佐渡島へフェリーで渡る。フェリーに自転車を持ち込むには二通りの方法がある。ひとつはクルマやバイクと一緒にそのまま車両甲板に載せる方法。多少料金はかかるが楽な方法だ。ふたつ目は自転車を手荷物として輪行バッグにまとめ、サイドバッグなどの荷物も自分で持ち込む方法。荷物が多いと少々手間ではあるが、無料だ。私たちは後者を選んだ。佐渡行のフェリーの方たちが荷物を運んでくれるなど、親切に対応してくれた。両津港に入港した後は、そのままキャンプ場へ。高い丘の上なので海が見渡せ、白い灯台が美しい。桜の木があったが、緑色の葉はほとんどマイマイガという蛾の幼虫に食べつくされている。島中の桜の木は同じように葉がなくなっていた。

佐渡にはクマやイノシシなどの大型動物はいないらしく、見かけたのはタヌキくらいだった。もちろん、天然記念物のトキは繁殖している地域に行くとみることができた。島を一周はしなかったものの、南の地域を中心にキャンプをして過ごした。

一番気にいって滞在していたのは新穂という地域。トキの巣も近くにあり、夕暮れ時に巣へ戻る様子を何度か見ることができた。こうしてトキの姿が見られるのも、日本だけではなく中国との協力でトキの繁殖に力を入れてきたからだと知る。美しいから、危険だから、数が多すぎるから、様々な理由で動物たちの命は消えていく。人間の居心地のいいように……。その結果、新たな問題が出てくる。自然界に生きるものにはすべて理にかなった連鎖ができていることを忘れてはいけないと思った。

季節は梅雨から夏へ。紫陽花が咲き、田んぼは青々しく、夜にはら、危険だから、数が多すぎるから、様々な理由で動物たちの命は消えていく。人間の居心地のいいように……。その結果、新たな問題が出てくる。自然界に生きるものにはすべて理にかなった連鎖ができていることを忘れてはいけないと思った。

季節は梅雨から夏へ。紫陽花が咲き、田んぼは青々しく、夜には蛍が飛び回り、カエルの合唱で賑やかだ。

 
北上を続ける

青森を目指し、山形、秋田と沿岸を走る。7月も半ばになると恐ろしいくらいの暑さで日中走るのは危険なため、早朝4時に起きて6時前には出発。12時くらいまで走り、夕方4時くらいまでは日陰のある公園などで休憩し、その後、陽が沈む時間まで再び走るというサイクルだった。午前中でも手ごろな浜辺を見つけるとシャワーでも浴びるかのようにひと泳ぎして、再出発することも。昼間の暑い時間帯は蚊もいないのでハンモックでの昼寝が気持ちよい。日本海側なので夕日は海の向こうに沈んでいくのが見える。海と空がピンクや朱色に染まり、ゆらめく太陽が吸い付くように海に落ちていくのは印象的だった。

内陸へ入り、青森、十和田湖畔のキャンプ場を目指す。十和田湖は周りが山で囲まれており、どこから行っても山を登って下らなくてはならない。ちょうど体調が悪いタイミングだったので自転車を降りて休み休み進むしかなかった。そんな時は無理をせずに、マッサージや睡眠、水分を取るなどして体の声に耳を傾けるように心がけている。少しくらいの痛みなんて、と無理していたこともあったが、今の私の旅に一番必要なのは体なのだから大事にしてあげなくてはと気がついた。

 
旅の醍醐味

今回は北海道で知り合った友人との旅。やはり走行スピードや体力の違いはあるが、楽しいことや辛いこと、美味しいものを作り食べることを共有できる醍醐味はひとり旅では味わえない。特に友人はベジタリアンなので、肉、魚を食べずに体力作りをしている。経済的で旅には適していると思い、私も見習ってみることに。新たな食の幅が広がった。佐渡島の姫崎キャンプ場の灯台。古くて美しい。

 

Profile

かみとゆき
1988年、宮城県仙台市生まれ。小さい頃から家族でバックパッカー、アジアを中心に歩いてきた。19歳で自転車旅に目覚め、その後カナダ横断、ヨーロッパ旅行など自転車旅の面白さを体感していく。愛用自転車はKHSのTR-101。

文・イラスト:かみとゆき
『自転車日和』vol.61(2022年5月発売)より抜粋

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