温故知新 徒然MTB談話室 第18回

最近、オールドMTBの話題をあちらこちらで耳にしますが、それらが脚光を浴びていた時代の話となれば、モンキーバイクの存在をスルーするわけにはいきません。そのモンキーバイクの生みの親である今泉さんのお店、この6月に40周年を迎えました!

Profile

今泉紀夫(写真左)
ワークショップモンキー店主。MTB誕生以前からそのシーンのすべてを見てきたまさに歴史の生き証人。日本人による日本のフィールドにマッチする日本人のためのフレーム、モンキーシリーズの開発にも意欲的。
http://www.monkey-magic.com/

中沢 清(写真右)
CS ナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代のマウンテンバイカーの明るい未来のために日々奮闘中。弊誌『MTB日和』ではインプレッションライダーも担当。
https://nakazawagym.amebaownd.com/

中沢(敬省略、以下同):最近、若い人たちの間でオールドMTBが盛り上がっていますね。うちの店にも「オークションで買ったんですけど」と相談にくる人がチラホラ。

今泉:先日、ほかの雑誌からその手の取材を受けました。

中沢:スタイル的なものに惹かれて乗り始める人が多いようですけど、現在進行形で乗っている人たちが古いバイクを引っ張り出してくるケースもあったり。

今泉:オヤジ共ね。

中沢:で、今年はノリさんのお店が40周年を迎えるじゃないですか。せっかくだからオールドMTBが現役だった、当時の話を詳しく聞いてみようかと。

今泉:「なんで50周年じゃないのよ」みたいなことになりませんか?

中沢:そこはキリがいいので。というか、50周年があるかどうかわからないし(笑)

今泉:そういえば、98の台湾坊主(TIG溶接)を作ったのが30周年。

中沢:ということは、20周年のときもなにかあったんですか?

今泉:えーっと、なにかあったかな。2000年にダウンヒルバイクの00、1990年に90を作って。

中沢:自分がメッセンジャーをやっていたとき、トップチューブがへの字に曲がったバイクを持ち込んだ同僚がいて。MTBブームの前だから1988年くらい? 聞いたら高田馬場のモンキーがオリジナルで作ったMTB、と。

今泉:それが88。

中沢:彼はトライアルをやっていたんですけど。

今泉:アメリカでNORBAが世界選手権を開催していた頃ですね。

中沢:その時代って、普通のMTBでもトライアルをやっていたんですよね?

今泉:当時、ヨーロッパだとオートバイのトライアルを始める前の子どもが乗る自転車がBTR、アメリカだとモトクロスを始める前の子どもが乗る自転車がBMX。その点、カリフォルニアのクランカー乗りたちが育て上げたMTBは、大人が遊べるダートバイクとして仕上がっていました。その流れが日本にもやってきましたね。

中沢:彼らの遊び方はファンライド的なもので、その頃の日本の山遊びとは違っていたと前にノリさんから聞きましたけど。

今泉:日本だといわゆる峠越えですね。いまは道が舗装されましたが、その頃はダートばかりだったので。つまり、累積標高を楽しむ遊び方だったんです、トレーニングでたくさん登るとかではなくて。自転車もランドナーだったし、温泉へ行くために峠は越えないとね。

中沢:パスハンターではなくて?

今泉:そこから山の中で遊ぶこと自体が目的になっていきましたが、日本は山が小さいから。トライアルっぽいちょこまかとしたテクニックが必要で、それをみんなで競うわけですよ。ランドナーだと邪魔になる部品が出てきて、それを外したり、フラットバーに換えたりしていくうちに、パスハンターと呼ばれる自転車の形になった感じでしょうか。輪行するにも楽だったので。

中沢:そういう人たちがやがてMTBを手に入れた、と。

今泉:それは違います。山岳サイクリング系の人はいまもいますけど、コアな世界なので。その人たちに言わせるとMTBは邪道。

中沢:ノリさんはそこにいたけど、MTBにも乗るようになった、と。

今泉:僕は道具に対する差別はないので、行為はパスハンティングでしたけど。その中の「MTBでやってみたい」という若手がうちの店に来るようになったんです。

中沢:ノリさんはニュートラルな感じでいいですね(笑)

今泉:「26×1・3/8のタイヤ&カンチブレーキじゃないとダメ」「MTBのようなゴツゴツのノビータイヤは山道を荒らす」という意見がありましたが、アメリカのラフな遊び方のイメージが先行してしまったんでしょうね。逆にトレッド幅のないランドナー向けのタイヤはブレーキをロックさせて滑っていくだけで「転がせないタイヤは結局、山道を掘ってしまう」と僕は考えていました。

中沢:だからノリさんはオリジナルのMTBを作った、と。でも、その頃ってまだ日本にMTBの情報はありませんよね?

今泉:うちらはロード時代もそうだったけど、洋書屋で海外の雑誌を買って情報を拾っていましたから。エロ雑誌と共に。

〜〜〜〜中略〜〜〜〜

中沢:モンキーのバイクは常に自分たちの遊びのフィールドがバックボーンにありますよね?

今泉:僕の勝手なイメージですけど、アメリカのビジネス面で成功したビッグブランドは、ローカルの遊びができあがった時点で製品化しているように感じています。「遊びとしておもしろくないものは売れない」という考え方がベースにあるのでしょう。日本はそれが不得意。

中沢:モンキーのようにもっと日本のフィールドに合ったバイクがあっていいと思うんです。

今泉:トレイルに合うバイクというよりも人に合うバイク、体格差とか物理的な要素もあるし。うちのような小さなショップができるんだから是非、ほかのショップやメーカーでも作ってもらいたい。

中沢:ここ数年の世界情勢から見て、いまがその転機である気も。

今泉:時流という言葉があるように、チャンネルを変えるというか、シフトしていかないと。できあがっているものを論評するだけではなく、自分たちで考えて新しいものを作り上げていくチャンスですよ。

中沢:環境作りについても同じことが言えませんか? 若い人たちがローカル活動を始めているのも、いま自分たちが動かないと走る環境がなくなってしまうから。

今泉:実際にものがなくなったらどうします?そこは「古いものは悪い」ではなく「あるものでやろう」という発想があってもいい。

中沢:いろいろな人の知恵や力が加わることで、より大きなものになる可能性がありますからね。パンプトラックなどスキルを磨くためのコースが増えていますが、それはもちろんあっていいし、必要だと思う。でも、でき上がった形を模倣するだけでは未来につながっていかない。バトンを渡す側も受け取る側も考えて、その場所とその時代と合うものにしていかないと。自分がモンキーを通じて学んだことはバイク、フィールド、遊び方がリンクしているということ。海外でそれらがつながっているように。

今泉:F-1というスタイルの自転車が一瞬、話題になったけど上手くいかなかった。お仕着せのコンセプトではダメ。ローカルから認められて、染み込むように浸透していかなければ長くは続きません。

中沢:MTBはひと捻りアイデアが加わるだけで、まだまだおもしろくなっていくはず。

今泉:でも、うちの店はもうそろそろ……。

中沢:ノリさんにはもうひと頑張りしてもらわないと。

今泉:モンキーオールドMTBの再整備、手直しなどなど、ご依頼お待ちしております。
 

 
モンキーバイクの歴史を振り返る

MONKEY FIT MT.SON
ショップであるモンキーとプロダクトデザイナー、フレームビルダーがタッグを組むこ とによって誕生。オフロード用モーターサイクルのエッセンスを取り入れることで、 体格差のある乗り手が共有できるように設計されている。フロントタイヤが26インチ、リアタイヤが24インチという現在流行中のマレット的なスペックを先取りし た仕様も斬新。後に前後26インチのモデルも追加された。

MONKEY FIT 88シリーズ
下り遊びに主軸を置いていたヤマサンに対して、ペダリング性能を高めることで 長距離走行にも対応させたモデル。クロスカントリー要素を高めることで、山道を経由する自転車旅も可能とした。モノステーを採用したフレーム後部の構造は 当時の流行を意識したものだが、TIG溶接による量産が増え始めた当時「ロウづけでどこまでできるか?」という実験的な意味合いも兼ねていたという。

 

MONKEY 90シリーズ
88シリーズで培った検証を元に再編成されたモンキーの完全オリジナルモデル。 フレーム後部にエレベーテッド構造を採用した90K、AMPバックを組み込んだ フルサス仕様の通称「モンプリ」など、実にさまざまな仕様が製作された。90年代中期からはフルサスブームの波が押し寄せてきたこともあり、この90シリーズと並行して別途、フルサスタイプの94シリーズの開発も進められている。

 

MONKEY 98シリーズ
94シリーズに採用されたフロントセクションのデザインを活かし、その優位性をハードテイルへと落とし込んだモデル。基本造形は絶え間ない深化とともに現在まで、20数年に渡って受け継がれている。TIG溶接にて製作された台湾生産のSTフレーム(注:安価にまとめるため量産したモデルではない)は、ロウ付け仕様 のSHフレームとは異なる、モンキーバイクのひとつの集大成といえよう。

 
写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.49(2022年6月発売)より抜粋

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