マウンテンバイクはじめました(第2回)「楽しいだけを持ち帰る」

乗り出すなら気になったいまがチャンス

「興味はあるけど一歩踏み出せない」そんな未経験者は必見! MTB に興味を持ってこの本を手にした貴方、友人や家族の横でこの本をチラ見している貴方。そして、友人や家族の影響で挑戦したものの「いきなり難しいコースに連れ出されて挫折してしまった」という貴方。乗り出すなら気になったいまがチャンスです! 一緒に楽しく成長してみませんか?

 

教えてくれる先生はこの人!
高山一成さん

埼玉県和光市のプロショップAST のメカニカルスタッフでありながら、秩父滝沢サイクルパークのコースディレクター&インストラクターも担当する高山さん。BMX レースでは世界選手権でも活躍、MTBではエリートクラスで4X に参戦してきたプロライダーキッズたちの育成ほか、日本のBMX&MTB の普及に尽力する頼もしい先生。

HARO DOUBLE PEAK 27.5"COMP

「高額なMTB ではなくても楽しく走れる」ことを証明するべく、先生が新たなパートナーとして選んだMTB。完成車価格は税込み15万4000 円。山遊びに必須となったドロッパーポストの装着、自分好みのポジション合わせと軽量化を見込んでハンドル&ステムを交換、グリップ力が増すタイヤなど、最低限の出費でできるカスタムが施されています。

 

教えてもらう生徒はこの人!
猫のミヤハラ

スポーツバイクの乗車経験はほぼ皆無ながら、本企画を遂行するために『猫びより』編集部から連行されてきた若手の人柱。前号にてMTB を初体験、未舗装路を走る楽しさに目覚めてくれたおかげで、無事に連載化が決定しました! 愛車の入手には至っていませんが、今回は自前のヘルメット、グローブ、シューズを用意してヤル気MAX。


KONA BIG HONZO DL(借りもの)

「MTBを気に入ってもらって連載化したい!」という『MTB 日和』編集部がミヤハラのために用意した車両がこちら。扱いやすい27.5インチでエアスプリング式のフォーク、ドロッパーポストまで装着された完成車で税込み21万2300円(2022 モデル)。試乗車を快くお貸し出しくださったエイアンドエフさま、本当にありがとうございます!

 

「怖い」「痛い」は必要なし「楽しい」だけを持ち帰る

前号では「難しいことに挑戦する必要はないんです。最初だからこそ、怖い思いをしないことが一番大切」という高山先生の教習メソッドに合わせて、ブレーキや変速などMTBを操作するための基礎を学んだミヤハラ。今号ではもう一歩踏み込んで、脱MTB初心者を目指します。

テーマは大きく分けてふたつ。サドルに座ったままペダルを回すシッティング、サドルからお尻を浮かせてペダルの上に立ち上がるスタンディング、それぞれの正しい乗車姿勢について学んでいきます。

MTB未経験者にとって最初の壁となるのがスタンディング。そもそもなぜ立って乗る必要があるのでしょう? 「オフロードの路面には凹凸があるので、ずっとサドルに座ったままでは突き上げられて、バランスを崩してしまいがちです。スタンディングの姿勢を取れれば、ひざとひじを使って突き上げを吸収できるようになり、凹凸の深い場所や下り坂でも怖い思いをしなくて済みます。

また、ペダルの上に立って踏ん張ることでタイヤが滑りにくくなり、ブレーキも効きやすくなります。オフロード走行を楽しむために、身につけておきたいテクニックのひとつです」とのこと。まずは前回のおさらいも兼ねて、シッティングの姿勢から練習してまいります。

hajimete①シッティングの姿勢を覚える

MTBに限らず、スポーツバイク初心者にとって「怖い」の原因となるサドルの高さ。最も足を回しやすい高さにまでサドルを上げると、間違いなく足は地面に届きにくくなります。

慣れてしまえば停車する際、サドルから前方に向かってお尻を落とし、当たり前のように足を着けるようになりますが、初心者ほどとっさに座ったまま足を出してしまいがち。そして、これが転倒につながるパターンの大半です。よって現段階では前回と同様、無理なく両足が地面に着く高さでペダリング時の姿勢をキープします。

両足が無理なく地面に着くサドルの高さでペダリング。上体がややアップライトめの姿勢となり、よりリラックスした状態でオフロードのサイクリングを楽しむことができる。

 

前号のおさらい/ドロッパーポストの操作はもうばっちり?

GOOD

両足のつま先が地面に着くくらいにドサドルの高さを調整。
座ったまま足を地面に着ける安心感とペダルのこぎやすさを両立させる姿勢に。

 

NG

サドルが高すぎる状態。ペダリング時にも足が伸び切っているため、これではひざを痛めかねない。
もちろん地面に足はまったく着かない。

 

NG

サドルが低すぎる状態。両足が地面に余裕で着くものの、下半身が窮屈かつ足の動きが制限されるため、上手くペダリングできない

 

POINT 足をペダルに乗せる位置次第でペダルのこぎやすさが変わる!?
脱初心者を目指すマウンテンバイカーに意識してほしいポイント、それはペダルに乗せる足の位置。初心者によく見られがちなのが、足の裏の真ん中でペダルを捉えているパターン。「足の真ん中で踏んでしまうとペダルに踏み込む力が伝わりにくく、安定感も出にくくなります。靴を抜いでみるとわかりやすくなりますが、ちょうど指でペダルの先端をつかめるくらいの位置がベストです」と高山先生。

GOOD

足の指でペダルの先端をつかめるくらいの位置がベスト。踏み込む力をしっかりとペダルに伝えられ、安定感も向上する。

 

NG

足の中央でペダルを捉えてしまうと、ペダルの軸を中心として足が前後に揺れやすくなり、ペダリング時に安定感を得にくい。

 

シューズを履いたときのイメージがこちら。ペダルの後端がちょうどシューズの中央と合うくらいの位置で踏めばOK。

 

サドルの高さ合わせをおさらいしつつ、ペダルに足を乗せる位置をチェックしたらいざ実走行へ。シッティングの姿勢が安定すれば、クルクルと足を回すだけでちょっとした登り坂なら余裕でクリアできてしまう。

 

ドロッパーポストを積極的に活用してみる
本来はペダリング時の平坦から登り、下りや登り返しの場面で使用するドロッパーポストの伸縮機能ですが、初心者や小柄な人が停車時に活用するのもアリ。停車時にすっとサドル高を下げれば、両足を地面に着くことができるので安心感はさらにアップ!

 

hajimete_②スタンディングの姿勢を覚える

冒頭でもお伝えした通り、起伏のある路面や斜度のある下りで必須となるスタンディングの姿勢。「ママチャリでなら立ち乗りをしたことはあるけど」と思った方、よく思い出してみてください。左右のどちらかの足が下がっていませんか?

ここで覚えるのは、左右の足の高さをそろえてペダルの上に立つ姿勢。片側の足が下がった状態の立ち乗りと違い、クランクがシーソーのように揺れるため初心者には難しかったりするのです。ポイントは「両手と両足をピーンと伸ばす」だけ!? さっそくトライしてみましょう。

【高山先生のお手本】

まずは比較的平らな場所でサドルに座ったまま走行。早歩きくらいの速度で挑戦してみましょう。

左右の足の高さがそろったところでペダルを回す足を止め、両手と両足をピーンと伸ばして立ち上がる。

 

ミヤハラの初スタンディング

高山先生のお手本と比較してみると……あれ、なにかがおかしい。理由は簡単でした。「ミヤハラさんの右足(手前側)をよく見てください。軽くひざが曲がっていて、右足のペダルに乗るはずの荷重を手の平で受けています。つまり〈両足をピーン〉の状態ではありません。左右のペダルの上でしっかりと立つ〈両足をピーン〉の状態を意識してください」とのこと。

 

POINT 静止状態でスタンディングの姿勢をチェック
NG

まずは初トライと同様に両手と両足をピーンと伸ばしてスタンディングの姿勢へ。左右の足を入れ替えてみたものの状況は変わらず。ちなみに左右の足の前後は「立ちやすい」と感じた方でOK。

 

GOOD

高山先生のアドバイスを得て、左右の足に対して均等に荷重がかかるように〈両足をピーン〉。すると手首にかかっていた重さが抜けて自然と〈両手もピーン〉。正しいスタンディングの姿勢が完成。

 

さらにその向こうへ!

もしこのように練習をサポートしてくれる人が近くにいたなら是非、チャレンジしてみてください。
まず、サポーターに自転車を支えてもらった状態で〈両手と両足をピーン〉→スタンディングの姿勢が取れたらハンドルから手を離してみましょう。手を離した状態をキープできたら両足で均等にペダルを踏めていることになります。

 

ミヤハラの再チャレンジは?

高山先生も驚く飲み込みの早さで〈両手と両足をピーン〉の極意をつかんだミヤハラ。前ページの初トライの写真と見比べてみてください。違いは歴然としています。

ただし、これがスタンディングの姿勢の完成形ということではありません。このメソッドはあくまで姿勢作りのきっかけをつかむためのもので、〈両手と両足をピーン〉のまま凹凸のある場所に進入すると、路面からの衝撃をそのまま受けてしまいます。このスタンディングの姿勢に十分慣れたら、少しずつひじとひざを緩めて衝撃を吸収する余裕を作っていきますが、それはまた次回。

 

凸凹の少ない下り坂でスタンディングの姿勢を試す

本格的な下りセクションの攻略はもう少し先の話。ここでは今回のレッスンで覚えたスタンディングの姿勢を応用して、比較的凹凸のない斜面を下ってみます。

まず、高山先生のお手本を見てみましょう。基本は平地でのスタンディングの姿勢と変わりませんが、体が〈頭、手、腰、足〉で綺麗な「ひし形」を作っていることがわかります。

逆に綺麗なひし形になっていないと「体重が後ろ側にかかりすぎたり、ハンドルに体重がかりすぎたりしてしまう」ということ。点と点を繋ぐ線を真っ直ぐにすることでスタンディングの姿勢が安定します。

 

ミヤハラの下り初チャレンジ

きれいなひし形には至らないものの、スタンディングでの下り姿勢もまずまずさまになっています。ちなみに高山先生のアドバイスによる下りの〈スタンディングで意識するポイント〉はふたつ。

(1)「平地で挑戦したひし形のスタンディング姿勢を忘れずに。ひし形を少し横長にするイメージにすると、リアタイヤに体重が乗せやすくなり、目線が低くなるので安心できます」
(2)「一定のスピードで下る:前後ブレーキを均等にかけ、タイヤをゆっくりと転がすイメージ。強く握りすぎるとタイヤが滑ります!」

 

本日のレッスンはここまで。次号からはついに実践編へ突入します。ミヤハラの成長にご期待ください!

 

写真:村瀬達矢 文:トライジェット
『MTB日和』vol.52 (2023年3月発売)より抜粋

 

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