温故知新 徒然MTB談話室 番外編

MTBを持続的に楽しむために、地域や他のユーザーとの共存、共生のあり方を模索しながら活動する団体のリーダー2人が、MTBのための遊び場「ふじてんリゾート」に集合しました。プライベートライドを楽しみつつ、次のステージに向けて意見交換。リラックスした雰囲気の中にも、シビアな現実を見据える言葉が飛び交って……。

Profile

弭間 亮(写真左)
アウトドアメーカー勤務を経て、MTBがオープンに走れる環境を求め、南アルプス市に移住。南アルプスマウンテンバイク愛好会会長。昨年、一般社団法人南アルプス山守人を設立。代表理事として地方創生にも関わっている。
https://www.minamialpsmtb.com/

中沢 清(写真右)
CS ナカザワジム店主。西多摩マウンテンバイク友の会会長として、MTBを取り巻く環境の改善と次世代の明るい未来のために日々奮闘中。弊誌「MTB日和」では、インプレッションライダーも担当。
https://nakazawagym.amebaownd.com/

中沢(敬省略、以下同):南アルプスの活動も、山梨県や国まで巻き込んで大きな事業になってきたね。

弭間:おかげさまで、あちらこちらから関心を持ってもらえるようになってきたんですけど、政治、組織運営、問い合わせや広報対応、書類の作成や下調べに追われてます。

中沢:行政とのやりとりには、スピード感も求められるからね。

弭間:そうですね。タイミングを逃したらいけないっていう焦りはあります。東京に比べれば、まだ緩いと思いますけど。

中沢:いやいや、逆だね。都は抱えてる案件が多いのか、こちらが持っている問題意識が伝わりにくいことも多いよ。最近ようやく「MTBもいいんじゃない?」みたいな空気が出てきたけど(笑)。

弭間:費用対効果の話も出ます。観光で潤っている地域と比べて「MTBの人、どれくらい来るの?」みたいな(苦笑)。そう簡単に予算は取れませんよね。

中沢:小さく活動してる分には問題ないけど、大きくしようとするとそれまでとは違った問題が色々と出てくる。それに対抗するにはマニアだけじゃなく、ファンを増やすしかない。そうしないとパンプトラックや小さなコースを作って「これで良いですよね?」みたいな形になりがち。もちろんとても有難いことではあるけど。

弭間:行政としては、そういう「場」「箱物」を作るほうが、都合もいいんですよね。

中沢:トレイルを整備しても、視察する側としては成果がわかりにくいし(笑)。コースやパークを作ってもらえると「ひとつ頂を乗り越えた、やり遂げた」という気になれるけど、一歩間違うと「ここで遊んどけば?」って、あてがわれた場所で満足したり、維持管理に追われたりして本来の目的である「トレイル」というものから外れてしまうことになる。

弭間:自分としては、盛り上がっている雰囲気ばかりがやや先行している不安もあります。

中沢:会としては達成感も大事だけどね。

弭間:最近は、トレイルどうこうの前に「MTB買ったんですけど、どこで乗ったら良いかわからないから」と入会される方が多いので、よけい気になります。

中沢:そういう人たちが、いきなりコアな空気の中に放り込まれて振り回されないよう考えていかないと。

弭間:バランスを取るのがだんだん難しくなっていきますね。公共トレイルで楽しんでからハマった人がコアな世界へ、という流れが大事です。

中沢:前回、マーシー(※株式会社TRAIL CUTTER代表、詳しくは第16回を参照)の関わっているトレイルを走って、そこからいろいろな人とやりとりをしていく中で、次にどうするかって話になったんだけど、これが難しい。

弭間:個性が強烈な人が多いですから(笑)。

中沢:うん。場当たり的な動きをしても、行政にしてみたら「勘弁してください」になっちゃう。もっと地域の立場も汲んだ形で取り組んで、いろんなマイナスをゼロにしていく活動が求められているんだと思う。

弭間:発言力のある人、協力してもらえそうな人に、理解してもらえる対話のスキルも必要ですね。

中沢:その中で山守人が生まれたわけだから、MTBサイドの声をまとめていってくれると良いよね。

弭間:自分としては、大竹さん(※秦野ホイールクラブ 代表/MTBSHOP OTAKE店主)の活動があり、西多摩の活動が広がっているのを見聞きして、体験もして、モデルケースにできたのが大きいです。

中沢:大竹さんの活動は、ライダーとして立ち上がるためのきっかけだよね。その後は、自分の生活に根ざした活動。社会福祉協議会やPTAも含めて経験してきたことが、そのまま活かされている(笑)。

弭間:地域性が反映されますね。

中沢:これまでの活動実績が評価されて、自治体の連携事業として都立公園内を走るツアーの企画が実現するんだけど、「里山でしょ?」みたいにピンと来てないマウンテンバイカーや業界の人もいて、「南アルプスみたいな活動をしましょう」とも言われることもある。そんな山、西多摩の活動をしているエリアにはないし(苦笑)。

弭間:都市近郊と地方の違いなんですよね。どちらが上とかはない。それに都市型が成功しないと地方もコケてしまうので両輪です。

中沢:地域で上手くいっているところ、人が集まっているところって、熱量があるから〈コースを作る〉でも村おこしや雇用創出にはつながる。西多摩という先行事例を活用した南アルプス。活
動だけではなくて、そこにいたるまでの仕組みを見てもらえてるのがいいよね。

弭間:でも、本来なら業界内に、そういう活動をマネジメントする役割がないといけないですよね。

中沢:MTB愛好家の時間に頼るだけじゃなくてね。

弭間:プライベートの時間だけじゃ足りないし、お金も続かない。結局消耗してしまうんですね。

中沢:そうして得たノウハウ=費やしたお金と時間だよね(笑)。さて、そろそろ走りに行こうか?

ーーーーーーー中略ーーーーーーー

中沢:久々にスカッと走れたんじゃない?

弭間:すみません。何も考えずに走ることに没頭しました(笑)。

中沢:リフトに乗りながら、いろいろ話もできるのがパークのいいところだよね。

弭間:一昨年から懸案となってることについても、具体的な話ができました。日本全国のマウンテンバイク愛好家によるボランティア活動を繋げる仕組みづくり。

中沢:トレイルビルダーズ・サミットだっけ?

弭間:それぞれの地域で抱えている問題を共有して解決できるような全国的な組織が求められています。

中沢:こういう時代だから、事務局の機能って、クオリティが求められてくるよね。進捗の異なる事案を、仕事として捌けないと。

弭間:これもスピードと実績やノウハウが求められますね。

中沢:地方行政や地域と関わっていくと、MTBをコアにしてこぢんまり始めても、期待されてより大きなものを任されたり、自分達の本意と違うことが求められたり。そうした案件も共有できれば、ヒントが見つかる可能性が高いはず。

弭間:それが持続性のある活動につながっていくんですよね。

中沢:直面している課題を、俯瞰で見られるのも利点だね。

弭間:思うんですが、最初から大きな枠組みというより、お互いの顔が見えている中で核を作っていくほうがいいですね。

中沢:まず〈生活の延長線上にあるMTB〉を出発点にして、少しずつ広がっていけばいいのかな。

弭間:それを見て、共鳴できたら加わってもらえばいいんですよね。

中沢:もう一本走りながら考えてみようか(笑)

 

MTBガイド、トレイルビルダーの未来

1本が2本になり、3本こなして休憩に入ったところで、高橋大喜さんが登場。

Profile


高橋大喜(写真左)
DHレースに始まり、国内フリーライダーの草分けとして活動。日本とカナダを往復しながら、ライディングスキル、トレイルビルドのノウハウを蓄える。一般社団法人DKFREERIDE MTB LOGIC代表理事。
http://www.joyridemtbpark.com/

高橋:お疲れさまです。今日はふたりだけですか?

中沢:たまには、自分たちのケアもしないとね(笑)。ところで大喜くんに聞きたいんだけど、ツアーガイドやトレイルビルダーって組織的なものができている?

高橋:特には聞いたことがないです。

中沢:大喜くんが代表の法人格を持つ、一般社団法人DKFREERIDE MTB LOGICインストラクター養成講座も先日行われたけれど、JMAがやっているインストラクター検定(注)は、どんな感じなのかな?

弭間:ディガーやトレイルビルダーも、組織的なものは聞いたことがないですね。

中沢:各自が経験やノウハウを活かして活動してると考えていいのかな?さっきの話だけど、各地ローカルの連携組織?そこにツアーガイドやトレイルビルダーが加わることについてはどう思う?

弭間:それぞれ見ている現在と未来が少し違いそうですね。やはり日本社会の現実があるので一緒にスタートできる人は限られてきそうです。

中沢:どちらも職業としての確立を目指している部分が大きいから、ローカルボランティア活動との連携はまだ少し難しそうだね。

高橋:自分もいろいろ勉強している途中なので、いただいている仕事の契約内容に触れない範囲ではありますが、お手伝いできればと思います。

弭間:ライドイベントにコーチとしてきてもらったり、トレイルビルドを学んでいった先に、地域内での合意形成の現実も共有できて一緒に活動できる未来があるといいですね。

中沢:彼らが職業として確立できるかどうかも、ファンの数の確保にかかっているからね。その辺りのことも含めて、次回はさらに深い部分まで話をしないと。とりあえずラスト1本、みんなで走って締めにしましょうか?

弭間高橋:行きましょう!

 
写真・文:鈴木英之
『MTB日和』vol.47(2021年8月発売)より抜粋

-MTB, 連載

© 2020 TATSUMI PUBLISHING CO.,LTD